入れ替えるべき常識

物価が安く、通貨が安く、人件費も安い日本は、海外から大人気である。同じ料金で自国より良いものがたくさん買える。質の良いサービスも受けることができる。旅行者が押し寄せるのも当然なのである。

その旅行者に向けて外資系企業が日本に高級ホテルを建てている。治安はいいし、人件費は安いし、真面目に一所懸命働くし。狙うのは日本に来る外国人富裕層。そして雇うのは安月給で真面目に働く日本人。この組み合わせは鉄板だ。

もちろん日本人が富裕層ビジネスを手掛けることも可能である。しかしその数は圧倒的に少ない。そこは日本人の得意分野ではないから。日本人が得意とするのは「安くて質の良い商品づくり」「安くてもしっかり接客するサービス」なのだ。

言い換えるなら日本人は「高いものを売るビジネス」「高いお金を払ってもらう接客」が苦手だ。安いのに美味しい。安いのに量が多い。安いのに笑顔で気の利いた接客。それが良いことだと信じきっている。

安い喫茶店に入ってもおしぼりが出てくる。それが当たり前。おしぼりが出て来ないと文句を言う。コンビニでも店員に丁寧な接客を求める。接客が悪いと店員を説教して怒鳴り散らす。その根底にあるのは「サービスはタダ」「あって当たり前」という常識である。

笑顔も、丁寧な接客も、原価は0円ではないか。そんなもので金を取ってどうする。この常識が日本を安くしている最大の要因なのである。いい加減目を覚ましたほうがいい。落ちぶれたとはいえ日本は先進国である。そして労働人口がどんどん減っていく国である。この環境で人を動かせば高いのは当たり前ではないか。

まずは経営者が意識を変えなくてはダメだ。人を雇えば高い。その常識でビジネスを組み立てなくてはならない。安く雇って利益を出すのではなく、高く雇って高い付加価値を生み出し、そして高く売る。経営者が安売りを止めない限り円安は止まらない。

そして消費者も変わらなくてはならない。サービスはタダではないのだと心すること。丁寧な接客を受けたいのなら高いコストを支払うこと。それが当たり前なのだという常識にならない限り、安い日本を脱することはできない。

安く使われるのが嫌なら、自分たちが人を安く使わないこと。人を動かせば高いのだという常識で生きていくこと。日本を変えるには、常識を入れ替える以外に方法はないのである。

 

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1件のコメントがあります

  1. その通りです。現在、経営者として、コラムの内容が分かる人や顧客を選んで実践中です。最も変わりにくい経営者が、先ずは変わらないと駄目だと実感しています。コラム、ありがとうございます。

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