大きな変化は誰の目にも明らかであるが、小さな変化は見過ごされがちだ。たとえば震度7の大地震やそれに伴う大きな津波。これを体験しながら意識しないことは不可能である。では日本列島が移動していることについてはどうだろう。事実この島は年6〜8センチの速度でハワイ島に向かって移動している。なんと1億年後にはハワイ島とくっ付いてしまうのだ。
だがこのように小さな日々の変化はなかったものとして見過ごされる。会社経営もこれとよく似ている。目の前の売上に大きな影響を及ぼす現象には、皆必死で取り組んでいる。たとえば人不足や円安による仕入れ価格の高騰。これに対処しないと生き残っていけない。だが人不足や円安は今に始まった現象ではない。必ずこうなることは分かっていたはずなのだ。
日々の移動を見過ごして、ハワイ島にくっ付きそうになって焦っているだけ。経営者が意識すべきは変化のベクトル(方向)だ。長期的に見て人は増えていくのか減っていくのか。円は高くなっていくのか安くなっていくのか。ここさえ把握していればいくらでも先手を打てる。対処するための時間も十分にある。ハワイ島が見えてからでは遅いのである。
では経営者が今把握すべきことは何か。それは根本的な経営ベクトルの変化である。もしも日本列島が反対方向に動き出したら、くっ付く先はハワイではなく中国とロシアに変わる。そして到達時刻も大幅に早くなる。このベクトルの変化だけは絶対に見逃してはならない。それは致命的な見落としとなってしまうだろう。
実は経営の根本的なベクトルも180度変化しようとしている。厄介なのは変化した瞬間が分からないことである。大きな変化であるにもかかわらず、変化した瞬間は何事もなかったように過ぎ去っていく。だが時間とともにそれは無視できない現象として現れるのだ。会社経営において変化する根本的なベクトルは3つある。
ひとつ目は雇用。社員を増やすことが正から負に変わる。二つ目は集客。顧客を増やすことが正から負に変わる。そして三つ目は売上。売上を増やすことが正から負に変わる。社員数を増やし、顧客数を増やし、売上を増やす。明らかにプラスだったこの指標がマイナスに変わる。中小企業は一瞬でも早く反対方向に舵を切ったほうがいい。雇用ではなく業務委託を増やすこと。顧客数ではなく優良顧客を増やすこと。売上ではなく利益を最大化すること。ベクトルはもうすでに変化している。
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