未来なき現状維持

3年前と同じ金額で仕事を受けているとしたら。同じ金額で商品を売っているとしたら。それは経営の怠慢である。近い将来そのビジネスは必ず行き詰まることになるだろう。安定したビジネスを長く続けたいのなら値上げは必須なのである。間違っても価格を下げるような決断をしてはいけない。

日本一、世界一レベルまでスケールするなら話は別である。どんどん安く、クオリティーは高く、資本の力で市場を独占していく。それなら安くすることに道理がある。逆に考えれば、これ以外のビジネスでは絶対に値下げしてはならない。いや必ず値上げしなくてはならない。物価高と円安が恒久的に続くこの状態で価格を維持することは自殺行為なのである。

同じ価格で売ると利益が出ない。給料を上げられない。人を確保できない。商売ができない。考えるまでもなく結果が見えている。経営者の仕事はとにかく値上げを決断すること。少しの値上げではなく思い切った値上げをすること。これができない人は今すぐ経営を交代した方がいい。

もちろん、ただ値上げするだけでは顧客が離れていってしまう。値上げは商品開発とセットでなくてはならない。ただし順番はあくまでも値上げが先。ここを間違えてはならない。まず価格を上げる。思いっきり上げる。するとそれに見合う価値が必要になる。価格が倍になっても喜んで買ってもらえる商品があるとしたら、それはどんな商品なのか。ここを徹底的に考え抜く。

考え続けることで商品は変化していく。変化した商品に合わせて告知のやり方も変える。するとこれまでとは違う顧客が集まってくる。「こんな商品を待っていた」「ずっと探していた」という人たち。価格も含めて納得して買ってくれるので満足度も高い。新商品が柱となり利益率も人材獲得力もアップする。

もちろんこれで終わりではない。どんなに素晴らしい商品も永遠ではない。新たな商品を作り続ける必要がある。そのスタート地点は値上げ。毎年必ず値上げをする。値上げに合わせて新商品をリリースする。新たなプロモーションを行い、新たな顧客とのつながりを強化する。このプロセスを歯磨きのように日常化させること。ここが現状維持の最低ライン。3年前と同じ価格で売るのは3年間歯磨きをしていないのと同じ。その歯はもうボロボロである。
 

 

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