社長がビジョンを掲げること。これはとても大切なことである。社会を良くしていきたいというビジョン。自らの人生を賭けているビジョン。共感した人が集まってくるビジョン。本物のビジョンには人や社会を巻き込む力がある。では企業が自社サイトで掲げているビジョンはすべて本物と言えるだろうか。
残念ながら多くの経営者にとってビジョンは「業績を拡大していくためのお題目」にすぎない。言うなれば社会から賛同を得るためのキャッチフレーズ。だから効果が薄ければ平気でビジョンを書き換える。当然である。ブランディングや求人に効果のないビジョンなど彼らにとって無意味なのだ。
では本当の目的は何か。売り上げを伸ばすこと。たくさんの利益を生み出すこと。会社を大きくして社会的影響力を手にすること。自他共に認めるすごい経営者になること。別にこれは悪いことではない。純粋な起業家の夢である。私もそうであったし多くの経営者にとってそれは普通の願望だと思う。
問題はその願望では社員を動かせないという事実である。昨年より業績をアップすること。業界トップになること。株式を公開して上場企業になること。経営者なら人生を賭けるに値するこれらの目標に、残念ながら社員は全くやりがいを感じない。なぜなら社員には何のメリットもないからである。
業績がアップすれば社員の報酬も増える。上場すれば社員も誇らしい。これらは社長が頭の中で組み立てた勝手な解釈である。業績が良くなれば給料が増える。ならば業績のいい会社に転職すればいい。上場企業に属していれば誇りを持てる。ならば上場企業に転職すればいい。ただそれだけのことである。
そんなバカなと思うかもしれないが社員の側から見れば当然の理屈。業績アップしたいのも、株式公開したいのも、社長の夢であって社員の夢ではない。まずこの事実を認めることが重要だ。そして向き合うべきはお題目ビジョンではなく目の前にいる社員一人ひとりの夢。そこに共通のビジョンがある。
この会社にいれば私の夢が叶う。私の夢に近づける。そう感じてもらうために必死で考え努力する。それが経営者のやるべき最大の仕事。その姿勢が社員を惹きつけ本気にさせる。結果的に業績が良くなりすごい経営者と言われるようになる。社長の夢に社員は乗らない。社員の夢の先に社長の夢は存在する。
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