10年20年と働いてきた職場を辞めるのは勇気がいることだ。とくに変化を嫌う日本人には大きな決断と言える。しかも理由はお金。月給アップ、年収アップのための転職。育ててもらった職場に義理は感じないのか。一緒にやってきた仲間に情は感じないのか。去られる側はついそう言いたくなってしまう。
人の決断はもちろん損得だけではない。だが損得を無視することもできない。今このバランスが大きく傾きつつあると感じる。結婚しない、子供を作らないという決断。昔からさまざまな理由でそう決断する人たちはいた。だが近年目立つようになってきたのは「結婚や子育ては損だ」という理由である。
かつて子供だった自分は誰が育ててくれたのだ。いや、そもそも自分はどうやって生まれてきたのだ。そこに思いを馳せることができないのだろうかと、結婚や子育てをしてきた人たちはつい言いたくなってしまう。では国への貢献に関してはどうだろう。先人たちの恩恵と遺産で現代の私たちは生きている。
やってもらったのだから、自分たちもまだ見ぬ子孫のためにどんどん税金を払うべきではないか。社会保険料も喜んで払うべきではないか。ご先祖様は草葉の陰でそう嘆いているかもしれない。だが現代を生きる私たちにはそんな余裕はない。いや戦後の焼け野原に比べれば余裕はあるのだが心に余裕がない。
最終的には損得で退職を決める。転職する。損得で結婚をやめる。子供を持たないと決める。払った税金より多くのリターンを国に求める。自分勝手も甚だしい。だがこれは特定の個人に限った行動ではない。集団として今この方向に舵を切っているのだ。きれいごとではなく損得が最優先なのである。
なぜこうなったのか。現象には必ず原因がある。社員が、国民が、損得を軸に自分のことしか考えなくなった理由。それは運営する側が損得を優先してきたからである。会社の利益を最大化すること。票に繋がる政策を最優先すること。企業オーナーや為政者の利益を優先してきた結果がこれなのだ。
一言で言えば損得が伝染したのである。そちらが利益を優先するならこちらも利益を優先させてもらう。そうやって誕生したのが現代の社員であり国民である。利益よりも社員の幸せを考える経営者。選挙よりも国民の幸せを考える政治家。それが増えていかない限りこの流れが変わることはないだろう。
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