赤い出口、青い出口 第13回「求められる、社員に依存しない経営者。」

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自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

第13回 求められる、社員に依存しない経営者。

企業は儲けるためにある。いくらで仕入れて、販売値はいくらで、差額が粗利で、社員に給料払ったら利益になって。これは、皆さんが当然と思っていることなのかもしれません。
今月は売り上げが減ったから、赤字になります。今年は利益が増えたから、ボーナスが多く出ました。会社員をやっていると、毎月や毎年の成績に対して一喜一憂します。それは手取りの金額が増えたり、減ったりするからでしょう。

【強い企業は売り上げだけではない】

企業で業歴が長いところは、顧客基盤がしっかりしています。また、派生する副収入や、不動産収入などで利益を出しているところがとてもたくさんあります。働く社員が見えないところで、収入が上がる仕組みができているのです。優良な企業はこのバランスがとても良い。

これは「ストック」と「フロー」という言葉で表現することも可能です。
フロント営業がモチベーションを上げながら、売上(フロー)をつくり、企業全体のエンジンの役割をします。その一部分が継続的に資産形成にまわされます。さらに資産(ストック)を運用すれば、そこからの利益(フロー)も生まれます。

わかり易い例でいうと、アマゾンはネットでの販売というフローのエンジンをもっています。そこで得たフローをネットではサーバーの事業、リアルでは物流の事業というストック資産に投下しました。そこからまたフローが生まれています。

創業後間もない経営者は、日々の売上や利益に目を奪われがちなのはしょうがないことですが、この「フローを生むストック」をつくることができるかが、強い企業となるためには重要です。コラムの冒頭のような社員の機嫌をとるより先に、やらねばならぬことがあるのです。


【フローを生むストックをつくる】

経営者側から見ると、社員が成長して売り上げを上げてくるのを見るのも楽しいものですが、社内が効率化しより収益性の高い会社になるのを目指すのが本筋です。そうすれば、社員も安心して働くことができるようになります。
今世の中は、売上を上げることが比較的簡単になりました。営業部隊を組織する必要が低くなり、売り上げをつくるのは、必ずしも人手が必要ということはなくなりつつあります。

経営者としては、フロー(売上)をストック(資産)に転化すること。さらに資産を活用してキャッシュを生む仕組みを作ることが仕事になったということになります。売上を上げるのが簡単になった今、やるべきことは営業部隊のてこ入れではなく、再投資先の選定と再投資先の商品開発だということになります。
難しく言いましたが、これが世でいう利益を出す仕組みであり。効率化、ということです。

【キャッシュを生む資産のヒント】

これは、どこの企業をまねればよいというものではありません。自社の強みや、これからの方向性によって経営者自らが掘り当てていくべきものです。

資産になりそうなものを。例えば、

「在庫」を
「サービス」を
「販売データ」を
「販売ノウハウ」を
「お客様がもつ不満」を
「仕入れ先が持つ要望」を

キャッシュに変える仕組みに。例えば、

売るのではなく、貸す。
買ったものを、共有する。
使う権利を、売る。
売るときに、買いとる。
所有権を、買う。
買う権利を、買う。

移り変わりの早い時代に、社員が動かない、能力が足りないと嘆くより、新しい収益構造をトップ自らが率先して開拓していく。経営者にもその覚悟やスピード感が必要となってきたような気がします。

 


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

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