日曜日には、ネーミングを掘る #010 切腹最中

会社のある新橋駅から
歩いて5分ほどのところに
『新正堂(しんしょうどう)』という
和菓子屋がある

お詫びの手土産として有名な
「切腹最中」のお店である
店の前には開店前から朝一で謝罪に向かう
ビジネスマンたちが並び
1日に平均数千個
多い日には7,000個も売れるそうだ

商品の名付け親は
現社長の渡辺仁人さんである
30年程前に義父からお店を
受け継いだ渡辺さんは
なんとか日持ちのするヒットの商品を
つくらねばとアイデアを考えていたが
店の所在地が忠臣蔵の浅野内匠頭が
最期を遂げた土地だと知り
発明したのがこの最中である

最中は薄く焼いた皮のなかに
あんこが入っているのが普通であるが
切腹最中は皮からアンコ(はらわた)が
どびゃっとはみ出ている

商品名もすぐに閃いたが
家族からは縁起でもないと猛反対
それでも諦めきれずに
アンケートを取ったところ
これも199名中198人が否定
肯定はわずか一人だったが
社長はその一人を信じて発売したそうだ

自分たちにしかない物語
ネガティブを反転させたインパクトある商品
そして直感がひとつになった
1対198の見事な勝利である

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