日曜日には、ネーミングを掘る ♯073 タラタラしてんじゃね~よ

今週は!

やりました。ゴルフの渋野日向子選手。樋口久子さん以来42年ぶりに、メジャー大会全英女子オープンを制しました。最終18ホールでの強気のパット、痺れました。

この大会で思わぬ脚光を浴びたのが、同選手がプレーの合間に食べていた『タラタラしてんじゃね~よ』でした。製造元である「よっちゃん食品工業」(山梨県中央市)には、優勝直後から取材が殺到。同社は、渋野選手が自社の商品のファンだったとは知らなかったらしく、思わぬ事態に大わらわのようです。

よっちゃん食品工業は、1959年、創業者の金井芳雄(現代表取締役会長)さんが始めたスルメ足加工の個人事業からスタート。 以来60年、イカ一筋に事業を行っている加工食品メーカーです。なかでも通称「よっちゃんイカ」と呼ばれる『カットよっちゃん』は、駄菓子の定番商品として全国的に知られています。

『タラタラしてんじゃねーよ』は、スケソウダラのすり身に辛い味付けをした商品。商品名は、鱈と味付のときに液体が少しずつ落ちる様子を表した擬態語「たらたら」をかけて誕生したようですね。同社にはこの商品以外にも、ユニークなネーミングが多く、なかには『らあめんババア』なんていうのもあります。このネーミングの感覚は、『ガリガリ君』で知られる赤城乳業さんとも共通するものがありますが、同社の企業理念を拝見して、なるほどねと思いました。

金井流と呼んでいる企業信条の1つにこんな一文が書かれていたからです。

「当社はマネはされてもマネはしない技術開発の王者たる事を期す。」

いやー、いいですね。このスパッとした言い切り感。(ちなみに、信条のなかにはほかに「現状を救わないものはすべて空論である。」「怠け者の吸う空気はよっちゃんグループにはない。」という素晴らしい条項もあります)

『タラタラしてんじゃね~よ』という印象度抜群のネーミングとパッケージは、この信条にしっかりと根差していたんですね。

ともあれ『タラタラしてんじゃね~よ』が、かりに『タラスティック』や『味付スケソウダラ』だったりしたら、このような話題にはならなかったわけでありまして、ネーミングというもの意味と大切さを改めて思い出させてくれた、シブコちゃんこと渋野選手の大快挙でした。

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