変と不変の取説 第28回「リッチの定義が変わるとき」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第28回「リッチの定義が変わるとき」

前回、第27回は「我慢の限界」

安田

GDPの時代が終わるって言ってましたよね?

はい。これからはGSCの時代です。

安田

Pもなくなってる(笑)

(笑)

安田

何の略なんですか?

Gross Social Capitalです。

安田

それはどういうものなんですか?

社会関係資本というものの総和ですね。

安田

社会関係資本っていうのは、泉さんが編み出した言葉ですか。

言葉は昔からあって、目に見えない信頼関係とか、人脈のネットワークとか、社会で生きていくための資本ですね。

安田

それって数値化できるんですか?

今のところまだ数値化できてないですね。見えない資産なので。

安田

じゃあ、少なくとも決算書には載らないし、それを担保に金は借りれないですね。

銀行はそういうものの価値がわかってないので。

安田

企業ブランドみたいなもんですか?

そうですね。ブランドはソーシャルキャピタルのひとつです。

安田

ブランド以外には、たとえばどういうものですか?

社員一人ひとりの信用とか、ネットワーク力を高める仕組みとか。

安田

それは、フォロワーの多いWebサイトとか?

そういうSNS的なつながりもあるでしょうね。

安田

今までだったら土地持ってるとか、金とか株を持ってるとか、そこに資産価値があったじゃないですか。

はい。今までは。

安田

それが、えー……と、なんでしたっけ?GN……

GSC。

安田

GSC。なかなか覚えにくいですね(笑)

(笑)

安田

GSCになると、たとえばツイッターのフォロワーが何人とか、そういうのも資産価値になるってことですか?

そうですね。フォロワーの量と質、両方あると思います。

安田

フォロワーの質ですか。

関係性というのは量だけじゃだめですよね。逆にすごくパフォーマンスが高い関係性であれば、数が少なくてもソーシャルキャピタルは高い。

安田

それは最終的には数値化されるんですか?

何らかの形で見える化されると思います。

安田

関係性が生み出す価値みたいなもんですよね。

はい。価値の総和ですね。

安田

たとえば何かで困ってるときに、一声かけたらみんな来てくれるとか。

そうです。そんな感じ。

安田

そういう人って、大企業でも出世できるんですかね。

たとえば人事部長になるには、一声かけたら「わかりました!」って言ってくれる人が100人いるのが条件とか。

安田

なるほど。じゃあ会社の経営者にも、そういう資質が必要になってきますか?

そういう経営者がパフォーマンスを出しやすい社会になっていくでしょうね。

安田

「給料出すから」ということで人が集まる時代は、だんだん終わっていくと。

「この人が一声かけてくれるんだったら、じゃあ手伝うか」みたいな時代になりますね。

安田

そういう人がたくさんいる国が、リッチな国になっていくんですか?

何を「リッチ」と定義するかによりますね。

安田

それ自体も変わるってことですか。

変わると思います。

安田

GDPのときは「リッチ」の定義がお金だったじゃないですか。

GDPの場合は「お金をためる」とか「増やす」とか。そっちだった。

安田

でもGSCは違うと。

はい。貯めるとか増やすとかではなく、逆に身軽になっていく。

安田

身軽になっていく?

ものを持つ必要がないんですよ。関係性があるので。

安田

??

「ちょっと俺、おなか減った」って言ったら、「いま鍋パーティーやってるよ」「じゃあ家に白菜あるから持っていくわ」みたいな。

安田

それが理想の未来社会だと。

理想というか、そうなっていくだろうと。

安田

たとえば、お金を持ってたら、友達がいなくてもうまい鍋が食えるじゃないですか。

食えますね。楽しいかどうかはわかりませんけど。

安田

いや、楽しいですよ。お店行ったら「ハハーッ」っていう感じで最高級の肉とか野菜を用意してもらえて。後片付けもしなくていいし。

お金で得られる快感って、ひとつのラインしかないじゃないですか。

安田

ひとつのライン?

お金持をってる人の上には、さらにお金を持ってる人がいて、その1本のラインしかない。

安田

GSCは違うんですか?

関係性ってオンリーワンの関係なんですよ。私と安田さんの関係って、誰かと比べられることはできないじゃないですか。

安田

まあ、そうですね。

1個しかないから特別なんですよ。そして特別感がいっぱいあるほうが、人間って豊かなんだと思います。

安田

どっちが上だ、下だ、っていう快感は、本当の豊かさではないと。

常に比較し合ってる状態の中にいるので。そこから解き放たれると、まったく別の豊かさが手に入る。

安田

じゃあ「あの人すごい」とか「うらやましい」とか「女の子にモテモテだ」みたいな優越感は、なくなっていくと。

なくなっていきますよ。だんだん変わっていく。

安田

で、その社会関係資本を高めるには、どうしたらいいんですか。お金稼ぐスキルを身につけるのは、分かりやすかったんですけど。

獲得するとか、増やすとか、貯めるとかじゃなくて、与えるほうになる。

安田

たとえば?

「わらしべ長者」みたいに、偶然会った人に「困ってたら、俺、手伝うわ」みたいな。

安田

いきなり知らない人に与えちゃうと。

そう。そういうのをどんどんやってるうちに、社会関係資本となって返ってくる。

安田

資本がある人って「やってあげる」というよりも「やってくれる人がいっぱいいる」っていうイメージなんですけど。

それはゴールですね。そうなるためには、まず与えまくる。

安田

投資みたいなもんですか?「先にお金を使ったら、お金が増えて返ってくる」みたいな。

そうです。それがお金じゃなくて、相手のために何かやってあげたのが返ってくる。

安田

そういう時代になるだろうと。

そうです。

安田

それは何年後ぐらいなんですか?

その質問好きですよね(笑)

安田

いや、そこがやっぱり重要なところなので。「500年後」とか言われても、誰も見向きもしてくれないんで。

10年ぐらいじゃないですかね。

安田

早い!じゃあ10年後にはもう、それが普通になってると。

はい。社会関係資本という概念は、もう普通になっていると思います。

…次回へ続く…


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

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新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

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