変と不変の取説 第31回「ゆたぼんと義務教育」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第31回「ゆたぼんと義務教育」

前回、第30回は「リセットすべきタイミング」

安田

ゆたぼん君って、知ってますか?

はい、ニュースで見ました。

安田

不登校の小学生ユーチューバーなんですけど、結構有名なんですよ。

ですよね。

安田

ゆたぼん君に関しては、ネット上で意見が割れてまして。「小学校ぐらい行っとかないとダメだ」っていう人と「べつにいいんじゃないの?」っていう人。

なんで、そんなに学校行かせたいんですかね。

安田

行かない理由が「いじめ」とかじゃなくて、「宿題をやりたくない」みたいなのが反感を買ってますね。

ああ、それ言ってましたね。そんな理由は許せん、みたいな。

安田

泉さんは、どう思いますか?率直に。

率直に言うと、彼は「目覚めちゃった人」なんですよ。

安田

目覚めちゃった人?

分かっちゃったんですよ。みんなが見えてない仕組みとかが。

安田

子どもなのに?

そう。分かっちゃう子ってたまにいるんですよ。「マトリックス」で目覚める「ネオ」みたいな感じ。

安田

凄いですね。ネオですか。彼は。

もう見えちゃったので、アホらしくてしゃあない。

安田

それは、頭がいいってことなんですか?

ある種の頭のよさですね。仕組みというか、システムが見えちゃうんですよ。

安田

泉さんは、ゆたぼん君のYouTube見たことありますか?

はい。

安田

 私は見たことないんですけど。

「メッセージを送る熱い少年」って感じですね。

安田

「嫌だったら学校行かなくていいんだ」ってことを発信してるんですよね。

そうそう。メッセンジャーみたいな感じですね。

安田

誰向けにやってるんですか?小学生向けですか?

いや、大人とか社会全体ですよ。

安田

へぇ。

メッセンジャーの特性をもってますね。彼は。

安田

メッセンジャー?

プレゼンテーション能力がとても高くて、言葉に言霊を乗せてしゃべる。

安田

え。10歳にして言霊を操る?

自分で「少年革命家」って名乗ってましたけど。キング牧師とかと一緒で、言葉に“気”が乗るタイプですね。

安田

すごい小学生ですね。

子どもの頃から「そういう才能」をもってる子はいるんですよ。

安田

ちょっと考えられないですね。「学校の中がすべて」という年代ですよ。

普通はそうですね。

安田

ゆたぼん君にしたって、まだそんなに見てないと思うんですけど。学校以外の世界を。

他の人と見てるところが違うんですよ、たぶん。

安田

どう違うんですか?

「大前提を疑う」みたいな視点ですね。そういうアンテナをもってる。

安田

「何のために勉強するのか」みたいなことですか?

そうそう。「なんで学校があるのか」とか「なんで宿題するのか」とかいうことを、ずっと考えてる。

安田

私も学校とか宿題は嫌いでしたけど、そこまでは考えませんでしたね。

直感的な違和感を感じたら、それをブワッと自分の中で問い詰めていくみたいな。そういう特性をもってるんですよ。たぶん。

安田

で、それを「無理やりやらされる」ことに耐えられなかったと。

それを、ちゃんとうまく説明できなかったんでしょうね。先生が。

安田

反対派の人たちは、学校に行かないと「後々困るぞ」みたいなことを言ってます。

たとえば、何が困ると言ってるんですか?

安田

「常識が身につかない」とか「集団行動でしか学べないことがある」とか「“我慢する”ことを、宿題を通じて学ぶんだ」とか。

宿題で忍耐力を身につけろと。

安田

人生には嫌なことがたくさんあるので、我慢することを覚えなくてどうするって。

すごい理論ですね。

安田

でも確かに、人生には我慢も必要じゃないですか。すぐキレちゃう人とかダメなんで。

我慢にも2種類あるんですよ。「従順なる我慢」と、筋トレみたいに「成長するための我慢」と。

安田

なるほど。

たぶん彼は、従順なる我慢が嫌なんですよ。思考停止しながら我慢するのが嫌。

安田

我慢ができない人は、大人になった時「どうしようもなくなる」って叩かれてました。

従順なる我慢も必要だと?

安田

と、思ってるみたいです。「あとで泣きついてくんなよ!」みたいに言ってました。

生活保護を申請してくるなよ!みたいな?(笑)

安田

ゆたぼん君がそうなる可能性もありますけど。でも学校に行ってる人がそうなる可能性だってあるわけで。

同じでしょう。

安田

なんで、あそこまで10歳の子に厳しいんですかね。いい大人が。

あれはですね、学校という仕組み自体に疑いを抱いてないからです。

安田

学校という仕組み?

「学校行くのは当然だ」ってなってる。

安田

まあ、なってますよね。

彼らは「学校がなぜできたか」を知らないんですよ。

安田

社会で困らないためじゃないんですか。

違います。義務教育のベースはナポレオンが作ったんですよ。全員を軍隊にするために。

安田

え!ナポレオンがつくったんですか!?

そうですよ。元々は職業軍人しかいなかったのを、「市民もちゃんとした軍隊にしないといけない」と。

安田

じゃあ、学校は軍人を育てるための機関なんですか?

そうです。「突撃!」って言ったら「イエッサー!」って動く従順な人間を、どれだけ育てるか。

安田

確かに学校では、従順さが求められますよね。でも知能も育てるじゃないですか。

指揮官の言ってることを頭でよく理解できて、それでも大前提を問わない。

安田

そういう人を育てるのが学校の目的ですか。

頭が良くて、従順で、集団行動ができる人を育てる。そのために義務教育ができたわけですよ。

安田

それは日本でも?

日本も富国強兵で「早く強い兵隊をつくらなあかん」ということで導入したわけです。

安田

寺子屋では強くならないと。

ならないです。寺子屋の子供は戦争になったら、どっか逃げていきますからね(笑)

安田

なるほど。だから「宿題やれ」って言ったら、黙ってやる人間が必要だと。

そうです。「突撃!」って言ったら突撃するんですよ。

安田

じゃあ、それを我慢することには、あんまり意味ないってことですか?

昔はあったわけですよ。でも今の時代には意味がないですね。

安田

たとえば会社での処世術には、活かせるような気もするんですけど。

「意味ないな」と思っても会議の資料を準備するとか?

安田

だって「こんなんやってられませんわ」とか言ったら、すぐクビじゃないですか。

まあ、そういう人たちは、給料が上がらないままいくしかないですけど。

安田

我慢しても、明るい未来はないと。

もう、そんなの明白じゃないですか。

安田

なのにどうして我慢を強いるんですかね。「小学生ぐらいから好きなことやっときゃよかった」って思わないんですかね。

従順に我慢した人たちって、ああいう自由にやってる人をすごく嫌がるんですよ。「俺は我慢したのに、なんでおまえは好きにやってんねん」っていう。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


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第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

2件のコメントがあります

  1.  おもしろい対談をありがとうございます。
     私の立場でこんなことを言うとそれこそ、炎上しそうですが…ゆたぼん君の出現は、世の中の必然だと思っています。いつまでも、生産性向上のための教育の視点に固執して、子どもたち一人ひとりを本当に大切にすることなんて、考えることさえ忘れているかのような学校現場の制度疲労が表出しているのだろうと思います。やみくもに批判している人は、見たこともない考えられないような子どもが出てきたことに困惑しているのだと思います。
     自由にしているのだから、それに伴う責任を彼自身が負うことは、当たり前です。ですから、周りが脅かす必要もありません。
     これからも、貴重なメッセージを宜しくお願い致します。

  2. 百瀬せんせい
    コメントありがとうございます。
    教育界ど真ん中におられる百瀬さんの存在が「陰中の陽」です。希望に救われる先生がたくさんいます。
    我々は陽転の機会を与えられたので、思う存分それを学びにすりゃいいのでしょう。
    それにしても、ゆたぼんを始め子供達の純粋さにメッキを剥がされます。メッキが剥がされて質素剛健になっていくのですね。

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