変と不変の取説 第36回「抜け出せないサイクル」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第36回「抜け出せないサイクル」

前回、第35回は「もう教科書はいらない」

最近すごく感じることがあるんですよ。

安田

何ですか?

抜け出せないサイクルというか。

安田

抜け出せないサイクル?

嘘くさい世界観でも、耳障りがいいから抜け出せない。

安田

嘘くさい世界観ですか。例えばどんな?

「自由・平等」とか。「みんな可能性がある」とか。お決まりの価値観。本当の現実は違うじゃないですか。

安田

本当は自由でも平等でもないってことですか。

だってみんなが同じなわけないでしょ。

安田

そりゃあそうですね。

生物にも多様性があるじゃないですか。それが調和して自然界は出来ているわけで。

安田

まあそうですね。

人間もひとりひとりが、それぞれの役割を持って生まれてきてると思うんですよ。なので、その役割を探すお手伝いはできますけど・・・

安田

全員をイチローにすることは出来ないと。

「誰もが本田圭佑とかイチローみたいになれる可能性に満ちあふれてる」っていうのは嘘だと私は思ってるんですよね。

安田

よく彼らの作文を例に出しますよね。「この人たちは小学生のときから『絶対なれる』と信じてたからなれたんだ」って。

はい。それは論理のすり替えだろうって気がします。

安田

ですよね。プロになった人って、たいがい小学生のときには、そんな作文書いてるわけで。

私も書いてましたよ。「バレーボールでオリンピックに出る」って(笑)

安田

書いてて実現しない人のほうが、圧倒的に多いわけですからね。

そうですよ。たまたま実現した人をたどっていって、「小学生のときから言ってた」とかいうのはズルいですよ。

安田

宝くじに当たった人をたどっていって、「買わないと当たらない」みたいに言ってるのと同じ。

そういう嘘くさい世界観の中に入れられてると、そうではない現実を見た時にねじ曲がる。

安田

ということは平等じゃないってことですか?泉さんの考えは。

ひとつのラインではぜんぜん平等ではないですよね。だって「犬と猫って平等?」って聞かれたら、ぜんぜん平等じゃない。

安田

じゃあ「平等」っていう言葉自体がおかしいってことですか?

そうです。「憲法や権利が同じじゃないのはおかしい」っていうなら分かりますけど。

安田

人の可能性や特徴が同じかって言われたら、やっぱ違いますもんね。

ぜんぜん違うと思いますね。

安田

自由に関してはどうなんですか?

自由も平等も「与えられているものだ」と思い込んでるから、おかしな話になって行く。

安田

ということは平等でもないし、自由でもないってことですか?本当は。

だって車の運転するのだって、自力で免許取らないといけないじゃないですか。見せかけの自由とか平等からみんな抜け出せなくなってる。

安田

見せかけ?

そうです。「自由だ、平等だ」って言ってるのにそうじゃない。だから親や社会から嘘をつかれて騙されてる気がするんですよ。

安田

なるほど。それが抜け出せないサイクルだと。

そうです。「世の中って自由・平等とか言ってるけど、本当は違う」ってことが分かってくる。するとダブルスタンダードが許せなくなってくる。

安田

それでみんなキレちゃうんですかね。

この前、みずほ銀行でキレてるおじいちゃんがいたんですけど。

安田

最近おじいちゃんがよくキレますよね。何に対してキレたんですか?

「通帳をなくしました」という相談だったんですね。で、行員の方が「何か身分証明書ありますか?」って。

安田

なぜそれでキレるんですか。

おじいちゃんは、いろいろ出すんですけど「これは身分証明書になりません」「他にありませんか」「マイナンバーとか」「それからハンコもいります」とかってどんどん言うわけです。

安田

それでキレたと。

「あれがいる」「これがいる」「これがいかん」とか。おじいちゃん、そういうのぜんぜんわからなくて、イライラしてきて、最後、怒りだしたんですよ。

安田

でも銀行員としたら、確認しないわけにはいかないですよね。

多分ずっと、おばあちゃんに任せてたんじゃないですか。亡くなっちゃったとか。

安田

でも通帳なしで印鑑もなしじゃ、仕方ないですよ。

そうなんですけどね。おじいちゃんからしてみたら、そこに自分のお金があるのに出せないっていう。

安田

なるほど。たしかにそうですね。「俺の金や」と。

そう。「俺が金預けてるのに、なんで出されへんの?」と。で、「あれがない」「これがない」「これは無理です」とか言われて、えーっ!?みたいな。

安田

便利なはずのシステムが不自由をもたらしてると。

そうです。身分とか証明書みたいなものに縛られちゃってる。

安田

でもそれって利用者のためにやってることですよね。

どうなんでしょう。レールに乗せて管理しやすくしてるように見えますけど。

安田

なるほど。

その割には「オレオレ詐欺」とかでいっぱいお金持っていかれて。「ぜんぜんできてへんやん」みたいな。

安田

個人的にはマイナンバーで統一してくれたほうが楽だと思うんですけど。結婚届出すだけでもいろんな役所に行かないといけないし。

いや、どんどん楽にしたほうがいいと思いますよ。今はそれが中途半端なんです。Face IDとかで、顔だけでいけるとか。

安田

そうなったら、おじいちゃんも一気に楽になりますよね。

はい。

安田

自由とか平等って難しいですよね。オリンピック選手で、女子なのに生まれながらにして男性ホルモンの多い人が出場禁止になったじゃないですか。

ああ、ありましたね。

安田

それをOKしてしまったら、男子と女子を分けている意味がなくなるっていう。

ルールに従えばそうなりますよね。

安田

でもそんなこと言ったら黒人と我々もだいぶDNAが違うわけで。「そもそも生物として違うじゃないか」みたいな気がするんですけど。

平等に公平にと言いながら、きっちり線引きしてますからね。

安田

線引きするから公平になるとも言えますけど。

たとえばオリンピックって、国対抗の競争みたいになってるじゃないですか。

安田

はい。国の威信をかけた戦い。

そういう線引きが、もう無理があるなって感じます。

安田

ハーフの人なんて、どちらの国籍を選ぶかによって変わりますもんね。

そうなんですよ。理屈があってないようなもの。誰かが勝手に決めた線引きですから。

安田

もう、その線引きに意味がなくなってると。

国とか会社とか人権とか平等とか、そういう線引きが無意味になってきてるにも関わらず、そこから抜け出せない。

安田

だから苦しい?

はい。そこを断ち切らない限り苦しみから抜け出せないですね。


場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


| 第1回目の取説はこちら |
第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

感想・著者への質問はこちらから