変と不変の取説 第45回「腹と気が生み出す力」

「変化だ、変化だ、変化が大事だ」とみなさんおっしゃいますが、会社も商品も人生も、「変えなくてはならないもの」があるのと同様、「変わらないもの」「変えてはならないもの」もあるのです。ではその境目は一体どこにあるのか。境目研究家の安田が泉先生にあれやこれや聞いていきます。

 第45回「腹と気が生み出す力」

前回、第44回は「義務と権利の境目」

安田

本当か嘘かわからないんですけど。

何ですか?

安田

昔の日本女性は米俵2つ担げたって。本当なんですか?

本当ですね。写真も残ってますから。

安田

昔の人は身体能力が高かったということですか?

体の使い方が上手かったと言われてますね。

安田

体の使い方?

アフリカとかでは、頭の上にでっかい壺を載せて歩いてる女性が普通にいます。

安田

たしかにいますね。

体の使い方がぜんぜん違うみたいです。

安田

ということは、潜在的には誰でもできるってことですか?

時代劇に出てくるカゴがあるじゃないですか。

安田

かご?「おサルのかご屋」の?

そう。前と後ろで人が担ぐやつ。

安田

人を乗っけて移動する。

そうそう。あれ実は、めちゃくちゃ重いんですよ。

安田

そりゃあ、人間入れてますもんね。

カゴ自体がものすごく重いんです。

安田

そうなんですか?

あんなの現代人には絶対に担げません。2人で担ぐのも大変ですよ。

安田

そんなに重いんですか?

坂とか登るのは地獄です、あれ。

安田

そんな重いものに人間を入れて運んでたんですか?

じつは1回持ったことがあるんですけど。あれで人を運ぶなんて考えられないですよ。

安田

時代劇では人を乗せて走ってますよ。

本当に走ってたんですよ。

安田

現代人には無理?

絶対に無理でしょうね。

安田

それは……どういうことなんですか?やっぱり昔の人は身体能力が高かったんですか。

体の使い方がぜんぜん違うんだと思いますね。力の使い方とか。

安田

現代人は「忘れてしまってるだけ」ってことですよね。

そうです。ゴールドジムでバリバリ筋トレやってる税理士がいるんですけど。

安田

ムキムキの税理士さん?

はい。引っ越しの時に無理やり駆り出したんですけど、残念な生き物状態でした。筋肉はムキムキなんですけど(笑)

安田

ムキムキなのに力がないってことですか?

力の使い方がダメなんですよ。ヒョロヒョロの引越し屋のお兄ちゃんのほうがぜんぜん運べます。

安田

たしかに。引っ越し屋のお兄ちゃんで、細いのにすごい怪力の人っていますよね。

「なんでこんな重い荷物ひとりで持てんの?」みたいな。

安田

腕もめちゃくちゃ太いわけじゃないのに。

体とか筋肉の使い方が違うんですよ。

安田

そういうのは、現代では教えてくれる人はいないんですか?

和服の先生とか。

安田

和服の先生?

知り合いに和服の先生がいるんですけど「和服というのは腹で着る」と。

安田

腹で着る?

和服は重心が後ろにあって「腹で着る」らしいです。洋服は「肩で着る」そうで、前に傾いて歩くらしいです。

安田

確かに、前に体重を移動しながら歩きますよね。

現代人はそうですよね。でもそれは洋服の歩き方。

安田

へぇ~。でも後ろ体重でどうやって前に進むんですか?

後ろに重心かけて、すり足のように歩いていくらしいんですよ。足で草履を掴みながら歩く。

安田

ものすごく難しそうな歩き方ですね。

それが本来の和の歩き方なんですよ。今とは重心とか歩き方もぜんぜん違う。

安田

でも考えてみたら、ついこの間ですよね。江戸時代とか明治とかいったら。

考えようによっては最近ですね。

安田

動物の進化の速度からいくと100年200年なんて一瞬ですよ。つまり身体的にはそんなに変わってないはず。

肉体的にはほとんど変わってないんじゃないですか。

安田

ということは、すごく不向きな体の使い方をしてるってことですか?現代日本人は。

そうじゃないですか。

安田

本来は着物のほうがいいんですかね。

どうなんですかね。まあ体的にはいいみたいですけどね。

安田

「ゴムひもがよくない」って言う人もいますよ。

基本、着物はノーパンですからね。

安田

ふんどしもしないんですか?

先生はノーパンがいいと言ってました。

安田

パンツ履かないだけで体調が変わるっていいますよね。

日本人の体に合ってないんでしょうね。

安田

そう言えば飛脚も、すごい距離を1日で走ったとか言われてるじゃないですか。

あれは本当みたいです。日付の入った文献が残っているので。リレーみたいに中継はするらしいですけど。

安田

それにしても、ものすごい速さですよね?

異常なぐらい速いです。昔は舗装もされてなかったし、靴もいまみたいなナイキのシューズじゃなく草履で走ったわけですからね。

安田

昔の日本人って短足のイメージですけど。それも理にかなってたんですか?

重い物を持って移動するときは重心が低いほうがいいですもん、やっぱり。重心が高いと山登りとかも大変ですからね。

安田

日本人はいつ頃まで高い身体能力を維持してたんですか?

西洋文化が入ってきて、体の使い方が変わったんでしょうね。機械とか車とか。

安田

じゃあ戦前ぐらいまでは、いまで考えたら「おぉ~」みたいな人いたんですかね。

いたと思います。気の入れ方が違う人。

安田
気の入れ方?
丹田というか、腹に気を入れないと力が出ないんですよ。現代人はみんな気が抜けちゃってるんだと思います。
安田
どうして気が抜けちゃったんでしょう?
重たい物を背負いたくないから。責任はもちたくないとか。だから腹のくくりとか、腹腰文化がなくなった。
安田
腹とか気とかって、現代日本ではちょっと怪しいことばになってますよね。西洋医学の影響でしょうか?
それは多分にありますね。エビデンスとかを重視するようになったので。「腹で気をコントロールする」っていうのが、本来の日本人の生き方なんですけど。

場活師/泉一也と、境目研究家/安田佳生
変人同士の対談


| 第1回目の取説はこちら |
第1回:「変わるもの・変わらないもの」
長い間、時間をかけて構築された、感覚や価値観について問い直します。

ブルー・オーシャン戦略は、未知の新大陸を探しだす作業ではありません。
新たなブルー・オーシャンは今いるレッド・オーシャンの中に無数に存在するのです。

感想・著者への質問はこちらから