さよなら採用ビジネス 第35回「もし大企業が劇的に変わるとしたら」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第34回「外資と転職と終身雇用と」

 第35回「もし大企業が劇的に変わるとしたら」 


安田

もし解雇規制が緩和されて「金払うなら解雇してもいいよ」ってなったら、大企業はどうなりますか?

石塚

まあ、すんなりクビってわけにはいかないでしょうけど、可能性はありますよね。

安田

前、石塚さんが言ってたじゃないですか。生活最低保障を国と企業で折半するって。

石塚

ベーシックインカムですね。国が半分、大企業が半分負担する。それで済むなら大企業は喜んでやるでしょうね。

安田

そうなったら45歳以上の人が、ガサッと大手からいなくなる。そしたら、どういうことが起こりますか?

石塚

大企業に戦後初の「もの凄いイノベーティブなこと」が、起きる可能性がありますね。

安田

若い社員の収入が一気に上がって、優秀な人もどんどん集まってくる?

石塚

若手の収入が増えることも、もちろんそうなんですけど。

安田

もっと凄いことが起こりますか?

石塚

大企業って「ただ決裁する為だけの人」がいて、ここがイノベーションの邪魔をしてるんですよ。

安田

ただ決裁するだけ?

石塚

何かやろうとすると、すぐ「オレは聞いてない」って邪魔する人。

安田

じゃあ、その人がいなくなったら?

石塚

はい。本当に大企業の中で「第2の戦後みたいなこと」が起こるんじゃないでしょうか。

安田

第2の戦後?

石塚

戦後の焼け野原から希望を見いだして、みんながチャレンジし始めたようなことがまた起こるんじゃないですかね。

安田

でも全員がいなくなるわけじゃないですよね? 50〜60代の人が1パーセントぐらいは残る。それでも改革は起きますか?

石塚

もう劇的に変わるでしょうね。だって99%の無駄な決済がなくなるわけですから。

安田

劇的に変わりますか?

石塚

だって、余計な決裁や根回しがなくなって、グッと平均年齢が下がって「やってやろうぜ」みたいな雰囲気になりますよ。

安田

なりますか?

石塚

実は日本の大企業って、眠ってるものはいっぱいあるんですよ。もし仮にそうなったら、むちゃくちゃ伸びるんじゃないでしょうか。

安田

なるほど。じゃあ、条件もよくなり、好きなこともでき、決裁権もある程度委ねられて、優秀な若者が集まってきますよね?

石塚

集まって来ますね。

安田

で、その若者が頑張るとは思うんですが、その子たちもいずれ40代50代になりますよね。

石塚

なりますね。

安田

でも、終身雇用は約束されてない。ってことは、どうなるんですかね? 40代50代でもスキルを伸ばし続けるような中年になるんですか?

石塚

出口の選択肢って、いま1個しかないじゃないですか。

安田

定年退職ってことですよね?

石塚

はい。定年退職で辞めるか、定年退職後、再雇用されるか、せいぜい2つ。

安田

今はそうですね。

石塚

もし、そういう状況になったら、出口がものすごく多様化すると思うんですよね。

安田

出口が多様化?

石塚

たとえば、ゼロから起業する人もいるでしょう。会社と相談して、業務委託みたいな契約にするする人も出てきます。

安田

なるほど。

石塚

会社と話をつけて「この部分だけ、俺に売ってくれ」みたいなことが、始まるかもしれない。資本を出してもらって社内ベンチャー始める人もいるでしょう。

安田

なるほど。じゃあ、みんな組織からは離れていくと?

石塚

いや、もちろん中にはマネジメントや教育が上手な人もいれば、イノベーションを起こす人もいるでしょう。

安田

そういう人は残っていくと?

石塚

タクトを振るのがうまい人がいたら、そのままマネジメントとして上がってもらえばいい。

安田

かなり選択肢が増えますね。

石塚

出口が多様化すると非常に風通しがいいので、若手も早々に権限を持たせてもらえるし、就職の人気も上がるでしょうね。

安田

良いことづくめですね。

石塚

いろんなイグジットが見えて、いろんなタイプのロールモデルがいれば、能力が高くて意識の高い人がどんどん集まってくる。

安田

じゃあ「終身雇用の終了」と「出口の多様化」はセットなんですね。

石塚

そうしないと成り立たないってことですね。

安田

なるほど。

石塚

入社したときから、40〜50代の「理想のロールモデル」をたくさん見せてあげる。

安田

リクルートにもありましたよね?給料をたくさん払うかわりに「3年たったら辞める」みたいなロールモデル。

石塚

それ、半分正しくて、半分間違ってます(笑)

安田

あ、間違ってますか。どんな制度でしたっけ?

石塚

いまは最長6年やってる人もいるんですけど、結構安い給料で「元リクルート」というブランドを取りにくる。

安田

なるほど。安いんですか?

石塚

リクルートを好きにさせる仕組みがあるから、3年とか、最長6年で、きれいに卒業させていく。決して給料は高くないどころか、安いですね。

安田

なるほど。じゃあ「安く若い子を使う」っていう仕組みなんですか?

石塚

労務管理サイドからしたら非常に練り込まれた制度です。給料安い、仕事時間長い、だけど満足度高いって、ものすごい魔法のような。

安田

さすがリクルートですね。

石塚

はい。

安田

他の大企業では無理なんですか?「10年コース」とか「15年コース」とか。入るときから出口を想定しておく。

石塚

最初に想定しておいても、個人ごとにかなり差が出るでしょうね。リクルートのCV職はかなり限定的な働き方なので。

安田

なるほど。じゃあ、やっぱりロールモデルを作りつつ「働きながら自分で出口を見つけていく」ってほうが現実的ですか?

石塚

と思いますね。ただ、誰もやったことないので。

安田

最初にやる会社が出てきますかね?

石塚

みんな同調圧力が強くて、横並び意識も強いですから。収益とか経営上何の問題もないときに、そんなリスクとるのか?っていう。

安田

まあ、そうですよね。

石塚

でも経営破綻した会社って、案外結果的にそうなっちゃったりするんですよ。

安田

そうなんですか!

石塚

会社が倒産寸前っていう時には、シニアは責任感じるんでやっぱり出るんですよ。

安田

自ら退くと?

石塚

はい。そうすると若いヤツだけが残るわけですよ。で、若手が集まって「どうする?」って前提や固定観念なしに話し合う。

安田

それで、どうなるんですか?

石塚

それでV字回復が始まった例があります。

安田

たとえば、どんな会社ですか?

石塚

もうこれは社名出していいと思うんですが、おもちゃのバンダイとかそうですね、まさに。

安田

そうなんですか?

石塚

バンダイは2000年初頭に、事業でしくじっちゃって、経営危機に陥ったんですよ。

安田

どんな失敗だったんですか?

石塚

確か、アップル社との共同事業での失敗だったと思います。

安田

それで、どうなったんですか?

石塚

当時の経営陣が、次世代社員で構成される委員会にバサッと権限を渡して、「おまえらの時代だから頼む」って。

安田

何と!

石塚

で、30代40代中心の、若くて、意識の高いヤツらだけ集まって「バンダイこれからどうする?」って。

安田

上は辞めていったんですか?

石塚

辞めましたね。

安田

へぇ!潔いですね。

石塚

潔かったですね。

安田

で、V時回復に成功した?

石塚

そこから「世界一の感動創造企業を目指す」という理念が生まれ、バンダイの復活劇が始まるんです。


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

3件のコメントがあります

  1. たいへん興味深く拝読しました。
    正に今、45才以上のビジネスマンを応援する事業を考えていまして、近々スタートしたいと思っています。
    機会有れば意見交換させてください。
    当方現在はフリーコンサルにて47才です。

  2. 谷川様

    是非、安田と石塚氏もお会いしたいと申しております。問い合わせフォームから一度ご連絡いただけますと幸いです。日時調整出来ればと存じます。
    お問合せフォーム https://brand-farmers.jp/blog/contact/

    ご検討くださいませ。

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