考え抜かれた中途半端

 

完璧なビジネスモデルをつくる事は出来ない。
これは私の持論である。
これまでに出会って来た数千人の経営者の中で、
例外と言える人物はたった一人しかいない。

東証一部上場企業の創業者でもあるこの人物は、
「まだ起きていない失敗が、起きる前に全て見える」
という特異な能力の持ち主だ。
100点満点まで仕上げたビジネスモデルしか
絶対にリリースしない、というポリシーを持っている。
見えないものが見える。
それは素晴らしい能力だと思うが、生まれ持った才能であり、
努力して真似の出来る能力ではない。

普通の人間がビジネスを行う場合、
どんなに考え抜かれたビジネスモデルであっても、
スタートした後に必ずいくつもの障害にぶつかってしまう。
ぶつかる度にその障害を乗り越える方法を考え、
ビジネスモデルを改善していく。
地道で根気のいる作業だが、
これを続けることこそが、経営者の仕事なのである。

考えても、考えなくても、結局は障害にぶつかってしまう。
だったら深く考える前に、
とりあえず始めてしまえばいいのではないか。
実はそういうタイプの経営者は、世の中にはたくさんいる。
彼らは、とことん考え尽くす前に、事業をスタートしてしまう。

だが、安易に始めたビジネスモデルが成功することは、
まずない。
運だけで成功するほど、世の中は甘くはないのである。
完璧なビジネスモデルはつくれない。
中途半端なビジネスモデルは失敗する。
では一体、どうすればいいのか。

天才ではない、凡人経営者がとるべき道。
それはひとつしか無い。
考えて、考えて、考え抜くのである。
もちろんそれでも、完璧にはならない。
だがレベルの高い中途半端にはなる。
考え抜かれた中途半端なビジネスモデルと、
考え抜かれていない中途半端なビジネスモデルには、
雲泥の差があるのだ。

よく考えられた中途半端なビジネスモデル。
それは、やるべき事をやり遂げた、アスリートのようなものだ。
やり遂げても勝てるとは限らないし、
やるべき課題は次から次へと現れて来る。
課題はいつまで経ってもなくならない。
だが、課題に向き合わない限り、
絶対に勝つことは出来ないのである。

飲食店、アパレルショップ、印刷屋、不動産屋、本屋など、
世の中はビジネスで溢れている。
そのビジネスのひとつひとつを注意深く見ていくと、
完璧なビジネスモデルなど無いことに気がつく。
そこにあるのは、考え尽くされた中途半端なビジネスモデルと、
考え尽くされていない中途半端なビジネスモデルだけ。

誰に対して、どのようなコンセプトで、
どういう価値を提供しているのか。
見つけてもらうために、どのような工夫をしているのか。
考え抜かれたビジネスからは、その思考の痕跡が伺える。
だが、考え抜かれていないビジネスからは、
そういう意図を感じない。
もちろん、意図通りに顧客やマーケットが
動いてくれるとは限らない。
だが、意図の無いビジネスには、
顧客やマーケットすら存在しないのである。


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