今週は!
私は、これまで組織(企業)というものにちゃんと所属した経験がないこともあって、組織の長である経営者に対しても、その立場を超えていわゆる尊敬の念を覚えたことはほとんどありません。ただ一人だけこの人は違うよね、と思わせてくれる人がいます。Hondaの創業者である本田宗一郎さんです。人としての生き方が本当に素敵だなと思い、本田さんが亡くなった翌年に誕生した息子に、お名前を頂戴してしまったほどです。
Honda車も好きで、運転免許を取得して初めて乗った車がACCORD。そのあと2台ばかりドイツ車と浮気をしてしまいましたが、ミニバンのSTREAMが登場して再びHondaに。このSTREAM、デザインとドアを閉じる際の柔らかな音がなんとも好きで、およそ12年もの間お世話になりました。いまいまは家人のたっての希望でMiniを所有していますが、私個人のHonda好きは変わらず。同社がオーナー向けに発行している会員誌『Honda Magazine』を取り寄せては欠かさず読んでいます。
前置きが長くなりましたが、同マガジンの冬号で、Honda車の名前のヒミツを特集しているのが目に留まりました。好奇心の針が振れる内容だったので、少し掘ってみたくなりました。
Hondaが現在国内で販売している全17車種中、圧倒的に多いのが、実際にある英単語をそのまま使用している“ストレート系”です。
ACCORD【調和】
CIVIC【市民の】
CLARITY【明解、明晰】
FIT【ぴったり】
GRACE【優美】
LEGEND【伝説】
INSIGHT【洞察力】
JADE【翡翠】
ODYSSEY【長い冒険旅行】
SHUTTLE【シャトル】
それに対して、他社には多い“造語系”はわずか3車種。
VEZEL【乗り物=Vehicle×カットした宝石の小さな面=Bezel】
FREED【Freedom短縮、Free×doという意味も】
STEP WGN【STEP+WAGON】
これまた他社に多い複数の単語の頭文字を繋いでいく“頭文字系”も、2車種のみ。
CR-V【Comfortable+Runabout+Vehicle】
NSX【New+Sports+eXperience】
そして、最後にHonda車の伝統を受け継いだ“ヒストリー系”が、2車種。
Nシリーズ【1960年代、Hondaの大きな足跡となったN360より】
S660【1963年発売のHonda初のスポーツカーS500より】
こうやって見てみると、“ストレート系”が10/17で圧倒的なポジションを占めます(私が愛したSTREAMもここに入ります)。さて、これはどうしてだろう?と考えたとき、HondaのDNAを形づくったある製品に付けられたネーミングのことが浮かびました。
Hondaが送り出した製品で、はじめてネーミングらしいネーミングを付けられたのが、設立年の翌1949(昭和24)年に発売した本格的オートバイ『ドリーム号』です。このネーミングには、本田宗一郎さんが社員たちとドブロクを飲み交わしながら決めたというエピソードがあります。「Dream(夢)」とは、なんともストレートでわかりやすい。そのときHonda創業のメンバーたちは、自分たちの夢を人々の夢と重ね合わせて、ネーミングに託したんだろうと思います。(ちなみに、DreamはHondaの現スローガンであるThe Power of Dreamsに引き継がれています)。
「ごちゃごちゃと格好つけずに、おまえたちの気持ちをまんま伝えたらいいんだ」。Honda車のネーミングには、創業者のそんな思いがずっと変わらず流れているのかもしれませんね。