第16回 管理職がなくなる日
結婚式の1週間後、私宛の手紙が配達されてきました。(15年以上前です)
年齢は10歳ほど上、大学時代のサークルOBとして頻繁に顔を出してくださり、とても面白い先輩でした。私は勝手に懐き、バスケットボールもそれ以外もたくさんの時間を過ごし、かわいがってくださって、結婚式にもわざわざ大阪から東京へ出席してくださいました。その方から、後日手紙が来たのです。
【先輩からの手紙<ほぼ原文ママ>】
親愛なる松尾君へ
とても素晴らしい結婚式でした。お二人が出席いただいた方々にとても愛されていると想像できました。そんな結婚式はそうそうあるものではありません。私もそこに参加させていただいて、幸せでした。本当におめでとう。二人でつくる人生に幸あれ!
と、私が筆をとったのは、ちょっと気がかりなことがあったからです。松尾君の会社の社長、取引先の社長、スピーチを聞きましたが、松尾君の性格やエピソードには言及されていましたが、仕事について触れられていませんでした。
仕事で成果を出していますか?周りの人と仲良くして、それで満足していませんか?
人を巻き込んで組織をつくっていく能力、リーダーシップを執ってまとめていく力は、100人単位の団体をまとめたことでもわかります。何年も近くで見ていた私は、誰よりも君を理解しているつもりです。君の周りの人からの信頼を集める能力は、目を見張るものがあります。私もそんな君に期待をしながら、付き合ってきました。
仕事で成果を出しながら、その信頼をもとにリーダーシップを執るのは、組織にとても重要です。リーダーの成長の方向性が、会社の方向性と一致するからです。
君のその能力は、会社の方向性と一致しなければ、大きな反対勢力となります。今は会社が成長している最中なのでわからないと思いますが、会社の成長が止まると、君は組織にとって一番いらない人になるでしょう。
営業なら営業数字。拠点長なら、拠点の数字。企画なら会社の全体の数字。まずは成果を出しなさい。出した後で初めて君の魅力が発揮されることでしょう。
期待しています。がんばれ。
【教えてもらえない。変われない。】
私にとって耳が痛い手紙でした。認めたくない指摘でした。
なぜなら当時は会社に成果をもたらしていたのではなく、少しずつ出てきた数字を鼻にかけてわがままにふるまっていましたから。その先輩は、私の日頃の行動や態度をなどをみて、指摘してくれたのだと思います。
30歳を超えてくると、もう誰からも教えてもらえません。今は会社の上司でさえ、パワハラだモラハラだということを恐れて、関わり合いを避ける傾向が見えます。
お前の人生のためだと言って、親身になって指導してくれる人はもう少なくなっているのです。
そしてもうひとつ。自分自身が変われなくなってきます。ひとまわり違う世代には、共通の話題が少ないため、下ネタかダジャレしか言えなくなります。あとは仕事で経験したことを伝えるだけ。とくに中小企業はポストが限られていて、歳を経るごとに異動が難しくなります。気が付くと発酵した椅子に癒着している管理職ができあがりです。
【模索される新しいチーム】
もう、無理だと思うんです。年功や経験で管理職を務めるのは。
仕事をマネージメントする人が重要で、人の行動管理をする人はもう必要ないのです。人の行動管理はすでに重要な仕事ではなくなっています。肩書ではチームが動かないということですね。
組織目的が変わっていかないといけないのに、同じ人が、同じポジションで、同じやり方では、なにも変わっていきません。特に、誰にも教えてもらえない人たち、自分で変えることのできない人たちは、ゆっくり立場をなくしていくのでしょう。
目的に対して様々な知恵を集め、取捨選択しながらチームを運営していく。新しい組織の在り方が求められています。