第85回 ゼネラリストが足りない。

このコンテンツについて
自覚して生きている人は少ないですが、人生には必ず終わりがやってきます。人生だけではありません。会社にも経営にも必ず終わりはやって来ます。でもそれは不幸なことではありません。不幸なのは終わりがないと信じていること。その結果、想定外の終わりがやって来て、予期せぬ不幸に襲われてしまうのです。どのような終わりを受け入れるのか。終わりに向き合っている人には青い出口が待っています。終わりに向き合えない人には赤い出口が待っています。人生も会社も経営も、終わりから逆算することが何よりも大切なのです。いろんな実例を踏まえながら、そのお話をさせていただきましょう。

この10年間くらいは、
技術者が各所でとても重宝されています。
特にIT技術者(大雑把ですが)においては、
ものづくりの工場においても、
セールスにおいても、
人事や総務の現場においても、
コンピュータ抜きの仕事を探すのが難しいほど、
人手不足感があります。

さらに最近は
クラウド技術やネットワーク技術など
新しい分野も加わり、
全然人手が足りません。
アイデアや事業構想はあっても、
結局それを設計したり、
プログラムに落としたり、
デザインを施したり、
運営やカスタマイズをする人が足りないのです。
わかりやすく足りないので、
忙しいですが食いっぱぐれのない仕事です。

そのIT技術者が頑張ってくれたおかげなのか、
コロナでお客様との接点が変化したのか、
お客様や取引先との一次情報を
IT部門やIT技術者が持つようになりました。

IT技術者のもともとの仕事は、
お客様の情報を集約して、
商品開発や業務に生かしてもらう裏方の仕事で、
いわば「情報の加工屋さん」でした。

他の人から受け取った情報を
IT技術を駆使してわかりやすく整理して、
周りの人に提供してきたのです。
それが、
商流や受注形態が変わってきたので、
情報そのものが集まるようになったのです。

そうなってくると、
今度は会社においての役割が変わってきます。
言われたままに加工するのが仕事だったのに、
一次情報が集まるからという理由で、
営業手法や業務の改善、商品開発、
さらには他社との提携などの仕事も回ってきます。

「情報の加工屋さん」は今となっては、
会社全体を動かすような役割となっています。
それはそれで喜ばしいことなのですが、
もともとはプログラムの言語を知っている技術者、
ITスペシャリストなわけです。
急に会社全体を動かす判断を求められても、
なかなか重荷というものです。
刺身のツマを上手につくれるからといって、
寿司屋を経営できるとは限らないのです。

今、中小企業に本当に足りないのは、
IT情報を事業に活かすことのできるゼネラリストです。
全体の情報を俯瞰してみることができ、
事業を再構築できる人が足りません。

IT技術者が足りないからと採用をしたところで、
加工した情報がわかりやすく整理され、
その画面を見て安心するだけです。

スペシャリスト不足の時代に、
本当に足りないのは、
幅広い知識と、
リアルなネットワークを持ったゼネラリスト。
IT技術者に仕事を取られて、
最近ヒマそうにしている営業部長あたりが、
活躍できる時代だと思うんだけれどなあ。

 

著者の他の記事を見る


- 著者自己紹介 -

人材会社、ソフトウェア会社、事業会社(トラック会社)と渡り歩き、営業、WEBマーケティング、商品開発と何でも屋さんとして働きました。独立後も、それぞれの会社の、新しい顧客を創り出す仕事をしています。
「自分が商売できないのに、人の商品が売れるはずがない。」と勝手に思い込んで、モロッコから美容オイルを商品化し販売しています。<https://aniajapan.com/>
売ったり買ったり、貸したり借りたり。所有者や利用者の「出口」と「入口」を繰り返して、商材を有効活用していく。そんな新規マーケットの創造をしていきたいと思っています。

出口にこだわるマーケター
松尾聡史

感想・著者への質問はこちらから