さよなら採用ビジネス 第111回「大企業社員のゆくえ」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第110回『変化できる経営者とは』

 第111回「大企業社員のゆくえ」 


安田

リモートを機に「大手企業の社員」が副業を始める可能性ってどうですか?

石塚

ありますね。

安田

ですよね。エリート人材がどんどん外に出てくる。

石塚

それは微妙ですね。

安田

そうですか。

石塚

マイクロソフトのCEOが「デジタルトランスフォーメーション2年分がコロナショックによって2か月で終わった」ってコメントしてましたよね。

安田

ヤフーニュースで見ました。

石塚

マイクロソフトはクラウド事業が絶好調なんですよ。つまり一気にリモートが進んだってことです。

安田

一気に進みましたね。私もやる気なかったですけど、もうZoomざんまいです。

石塚

「会わなくてもできる」「通勤しなくてもできる」と気づいちゃった。この経験が副業に火をつけると思います。

安田

ですよね。だったら会社を辞めて起業する人も出てくるのでは?

石塚

難しいでしょう。

安田

大手のエリート人材って、かなり優秀なんですよね?

石塚

優秀な人はたくさんいます。

安田

ポテンシャルは相当高いはず。そういう人がどんどん起業すると、ちょっと脅威だと思ってたんですけど。

石塚

ホントですか?

安田

これまでは「ちょっと外れた人」が起業家の主流だったじゃないですか。組織になじめない人とか。

石塚

確かに創業社長にはそういう人が多いです。

安田

でもこれからは大手の主力人材が起業しだすんじゃないかと。

石塚

安田さん、大手の優秀な人材が起業したら成功すると思ってるんですか?

安田

やっぱり地頭がいいですからね。それに基本的にみんな勤勉だし。

石塚

僕はまったく違う意見を持ってて。

安田

へぇ~。

石塚

たとえばF1で優勝したマシンをラリーに出場させても、100メーターも前に進めない。仕事も同じだと思う。

安田

競技の種類が違うってことですか?

石塚

車を使ったレースであることは同じ。でもきれいなサーキットを300キロで走るF1と、冬の雪原や山道を四駆で走るラリーでは、まったく違う。

安田

そんなに違いますかね。

石塚

大きなエンジンを積んで、4つのタイヤをシャシーで支えてる。そこまでは同じですけど、まったく別のものじゃないですか。

安田

まったく別ものになるのは、かなり経験を積んでからですよ。たとえば40〜50歳になってきたら、たしかに車高が低くなっちゃって「山道走れないぞ」ってなりますけど。

石塚

なるほど。

安田

20代とか30代の前半であれば、まだ車高が決まってないというか。山道でも走れるぐらいの対応は十分可能だと思うんですけど。

石塚

若ければ若いほど、マシンの改良はやりやすいですからね。

安田

はい。

石塚

いわゆるビジネスでいう「オフロード対応」もしやすいかもしれないですね。

安田

そう思うんですけど。もともと車体のポテンシャルは高いわけだし。

石塚

でもね、安田さんが思っているほど「20代でオフロードに出てくる人」って、多くないです。というかほとんど出て来ない。

安田

結構いそうな気がしますけど。

石塚

僕の感覚でいうと1パーセントもいないですよ。

安田

そんなに少ないですか!?

石塚

ぜんぜんいないです。

安田

2・3割はいると思ってたんですけど。

石塚

いやいや。逆に2・3割も出てきたら、日本の教育も相当成功してるってことですよ。未来は明るい。けど実際にはそういう教育は受けてないので。

安田

道を外れないように教育されてるってことですか。優秀な人ほどレールに乗ってると。

石塚

おっしゃる通り。

安田

たとえば「満員電車で出社する」って、なかなかの苦痛じゃないですか。出勤時間に給料が出るわけでもないし。

石塚

ですね。

安田

でも、そんなことを考える暇もなく働いてきた。だけどコロナで考える時間ができちゃった。

石塚

コロナで時間が止まったのは事実ですね。

安田

時間が止まっちゃったことが、想像以上に彼らに影響すると思うんですけど。

石塚

いや。しないと思う。

安田

しないですか。

石塚

むしろ大企業ほど通勤が減り、リモートワーク環境も整い、ストレスのない安定した会社員生活が続く。

安田

なるほど。面倒くさい上司への報告とか、面倒くさい会議もなくなって。逆に独立する必要もなくなっちゃうと。

石塚

おっしゃるとおり。

安田

でも副業は増えるわけでしょ?

石塚

大企業サラリーマンの「社内フリーランス化」みたいなもんですよ。

安田

社内フリーランス化ですか。

石塚

自分で起業するよりずっと快適なわけです。だって、休みもあるし、給料も出るし。

安田

だけど自分が好きな仕事はできないですよね。

石塚

当然そうですね。

安田

やってみたいとは思わないんでしょうか?

石塚

思わないと思います。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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