終身雇用や年功序列は過去のものとなりつつある。
大企業への就職を希望する若者でさえも、
もはやそのような制度をあてにはしていない。
会社に人生を委ねるほどの信頼関係は
もはやなくなったと言っていいだろう。
とは言え会社と社員との雇用関係が
終わるわけではない。
会社は引き続き社員のやる気を
引き出していかねばならない。
もしこれから先も社員の雇用を考えるなら
避けては通れない問題がある。
それはポストと昇給の問題である。
これまで企業はピラミッド型組織を
維持することによってその問題を解決してきた。
ピラミッド型組織とは、最下層にいる若手を
増やし続けることで、
ポストを生み出し続ける仕組みである。
だがそれはふたつの理由により継続不可能となった。
ひとつは人口問題である。
若者が減り続ける中で企業だけが
ピラミッド型を維持することは不可能だ。
ふたつ目は拡大し続けるという
戦略自体の行き詰まりである。
利益を最大化するためには
適正サイズを維持しなくてはならない。
そうなるとポストも昇給も
社員に約束することができなくなる。
では新たな組織において
社員は何を求めるようになるのか。
答えはひとつではない。
稼ぎを優先する社員。
スキルアップを優先する社員。
労働時間の短さを優先する社員。
副業との兼ね合いを優先する社員。
その中間など、さまざまな優先順位を
持つ社員が現れて来るだろう。
もはや同じ待遇ですべての社員を
引きつけることは不可能だ。
それぞれの人生設計に応じて雇用契約するしかない。
どの程度の収入を目指すのか。
休みはどれくらい確保したいのか。
どのようなスキルを身につけたいのか。
マネジメントはやりたいのか、やりたくないのか。
それぞれの人生設計、得意不得意、
好き嫌いを吟味し、本人のやる気を引き出していく。
お互いにとってベストな待遇を見つけ出す。
とんでもなく面倒な作業だが
丁寧に作り上げていくしかない。
会社と社員の関係は間違いなく変わる。
会社と社員はもう一蓮托生ではないし、
社員は経営者のファミリーでもない。
互いに依存せず自立しあった関係。
これこそが真っ当な雇用契約なのである。
だが大きな組織で手の込んだ人事制度はむつかしい。
これは小さな会社にとっての大チャンスなのである。
拡大、ポスト、定期昇給を捨てる。
それぞれに合ったベスト待遇を見つけ出す。
それが新たな組織作りの基本となる。
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1件のコメントがあります
20.3月に33年間勤務していた会社を60才前に退職し、投資家になったのは、時代の流れがある中で、適時的な判断と行為だと思いました。