モテる努力

企業にはモテる努力が必要である。
まず顧客にモテること。
たとえばジョブズが作ったアップル製品は
世界中でモテている。
会社そのものがモテていると言ってもいい。

行列のできる食パン屋さんも、
常連だけで繁盛し続けている小料理屋さんも、
その根幹にあるのはモテなのである。
商品がモテる、スタッフがモテる、
お店がモテる、女将さんがモテる、などなど。

モテる要素は違っても、
その仕組みと効果は同じである。
そこにはお目当ての何かがある。
その何かが発する引力に顧客は引き寄せられていく。

モテがない企業には、モテに変わる何かが必要だ。
安さ、速さ、便利さ、など。
アッシー君が便利さで選んでもらい、
メッシーくんがご馳走で選んでもらうのと、
理屈は同じである。

ここで重要なのは、モテることの分析である。
モテるとはどういう状態なのか。
安さや便利さで選ばれることは、モテるとは言わない。
その根幹にあるものが損得だからである。

こっちの方が安い、あっちの方が便利だ、
という理由での選ばれ方。
これは真っ直ぐレッドオーシャンに突き進んでいく。
さらに安い店、さらに便利な会社が、
常に現れてくるからである。

モテとは、損得ではなく
好き嫌いに訴えかけるものでなくてはならない。
ゆえに相手を選ぶ。
どちらが安いのかは誰がみても明白だが、
どちらが好きなのかは人によって異なるからだ。

万人に好かれることを考えてはならない。
多くの人の「好き」を奪い合うアイドルのように、
レッドオーシャンで戦う羽目になってしまう。

ある特定の人にとっての特別な存在。
それこそがモテの根幹なのである。
特定の顧客にとことんモテる。
これが実現すれば集客にはまったく困らなくなる。

そしてもうひとつ。
これからの企業が宿命的にモテなくてはならない相手。
それは働き手である。

ここで働きたい。
この商品を売りたい。
この人たちと一緒にいたい。
その求心力がある会社とない会社。
ここで決定的に未来が分かれる。

一方は、勝手に人が集まり、勝手にサポートし合い、
勝手に商品の良さを広める会社。
もう一方は、お金を使って人を集め、育成し、
管理しながら販売させる会社。
どちらが勝つかは明白である。

だが残念なことに、
多くの会社は顧客にモテる努力はしても、
働き手にモテる努力はしない。
働き手にモテる会社は顧客にもモテる。
この一石二鳥のモテ戦略こそが
ブルーオーシャンなのである。

 


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