一方通行の河

コロナの蔓延で休業や
社員の自宅待機を余儀なくされる。
国からの補償が出たとしても何ヶ月も先。
しかも満額ではない。
売上の低下は著しい。
それでも給料は払い続けなくてはならない。

このような状態になったとき
「やっぱり正社員は安泰だ」と感じる人は多いだろう。
もちろん社員にだって不安はある。
支給されるとは言え給料は目減りする。
ボーナスはカットされるかもしれない。
業種によってはコロナの危険を冒してでも
出社しなくてはならない。

なぜうちの会社は休みにならないのかと、
不満に思う人もいるだろう。
だがそれでも経営者よりはずっとマシである。
休もうが休むまいが給料は支給されるのだ。
仮に解雇されても、会社が潰れても、
社員であれば失業手当も入ってくる。

何と言ってもしんどいのは経営者である。
たとえ売上がゼロになっても
社員の給料は払い続けなくてはならない。
蓄えがある会社ならいいが、多くの会社は
借金をして給料を支払うことになるだろう。
もちろん社長は個人保証を迫られることになる。

中小企業でも数千万円の借金。
下手をすれば数億円の借金を背負うことになるのだ。
しかもその使い道は社員の休業補償である。
“フリーランスだ”“個人の時代だ”と叫ぶ人は多いが、
結局のところ社員がいちばん安泰だ。

この先もずっと社員で居続けよう。
そう考える人が増えるのは当然の流れである。
だが雇用を担うべき肝心の会社は、
コロナで激減していく可能性が高い。
しかも経営者は“もう雇用はこりごりだ”
という気持ちになっている。

コロナの後、フリーランスの流れは加速するのか。
それとも正社員へと逆戻りしていくのか。
未来を正確に予測することは誰にもできない。
だがひとつだけ確かなことがある。
それは歴史とは大きな河だということ。

ゆったりと流れる大きな河。
もちろん時には激しく流れることもある。
場合によっては逆流することもあるだろう。
だが大きな目で見れば流れの方向は一定だ。
なぜなら水は高いところから低いところに
流れるものだから。
この本質が変わることは絶対にない。

コロナが河を堰き止める倒木だったとしても、
永遠に流れを止めることはできない。
なんらかの出来事によって歴史が停滞しても、
その後に必ず歴史は大きく動く。
倒木でせき止められた水が
その後加速して流れ出すように。
あらゆる出来事は歴史を前進させる。
なぜならそれは一方通行の河だから。

 


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1件のコメントがあります

  1.  当主(一族郎党の頭)をやっていると、集団を率いる経営者疲れを解るような気がします。
     一族郎党の絆も「個」の時代でしょうか!

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