第29回「既存商品を新商品に変える方法とは?」

このコラムについて
世の中の情報は99%が「現在」または「過去」のものでしょう。たった1%の未来情報をつかめる人だけが、自分のキャリアやビジネスを輝かせるのです。でも、未来情報なんか手に入らないよ!と思ったアナタ。ご安心を。もしアナタが古い体質の会社に勤めているなら超ラッキー。そんな会社の経営者ならビジネスがハネるかも。

未来コンパスが、あなたの知らない未来を指し示します。

 29  既存商品を新商品に変える方法とは?

来年にむけての新商品を開発中の経営者の皆さん。お疲れ様です!
新商品というと機能の付加や性能の向上が思い浮かびますが、それだけではありません。
実は「既存商品を新商品に変える」という考え方もあるんです!


特意匠権者:花王株式会社
意匠登録第1457454号【意匠に係る物品】マッサージ具
意匠登録第1458057号【意匠に係る物品】洗浄具
【図面】


上の図は、頭皮を洗浄・マッサージする花王の商品です。CMで見た方もいるのではないでしょうか。
ポイントは、全く同じデザインについて「マッサージ具」と「洗浄具」という異なる二つの物品で意匠権を取得している点です。なぜか。
専門的な話になりますが、意匠権は「形態(デザイン)」だけでなく、「物品」も権利範囲を確定する要素です。物品が変われば権利のカバー範囲も変わるため、花王は一般消費者の使い方を想定して、それぞれについて権利を押さえたものと思われます。

未来コンパスが指すミライ

「まだないマーケットを探したい」「他社と競合しない新商品を作りたい」。そんな時には、従来とは異なる商品を作ろうと考えるのが一般的です。「新商品=これまでと違う商品」という頭があるからです。
ですが、使い方を見直すことで既存商品を新商品に変えることが可能です。「現実にはそんな都合の良い話はない!」と思ったアナタ。次の事例を見てください。

刻みのりバサミ→シュレッダー
3枚の刃が重なったハサミが「刻みのりバサミ」として販売されました。用途が限られ、大して売れせんでしたが、これを「シュレッダー用ハサミ」としたところ、100万本を超える大ヒットになりました。個人情報の取り扱いに慎重になっている時代にマッチしたのです。

食器乾燥器→プラモの乾燥室
食洗器が普及したことで、乾燥器だけの需要は減っています。
一方で、プラモデルの塗装の乾燥という用途で、乾燥器が注目されています。天候に左右さない上に、カバーでゴミやホコリが入ることもありません。
精巧なフィギュアや模型、プラモデルが高値で取引される時代に、それらを支える道具のマーケットが出来るのは必然です。

商品の価値はユーザーの「使い方」に表れます。
誰がどのように使うのか?そこにどんな利便性が生まれるのか? それらを突き詰めると、同じ商品から全く違う価値=まだないマーケットが見えてきます。
そう考えると、「誰にどんな使い方を売るか」という「売り方そのもの」を新商品と捉えることも可能です。

商品の「売り方」の数だけ新商品が生まれます。それぞれについて権利化が可能な場合もあります。そこには競合が気付いていない まだない「小さなブルーオーシャン」が広がっていることでしょう。

 


 この記事を書いた人  

八重田 貴司(やえだ たかし)

外資系企業/法務・知財管掌。弁理士。
会社での業務とは別に、中小・ベンチャー企業への知財サポートをライフワークとする。クライアント企業が気づいていない知的財産を最大化させ、上場時の株価を上げたり、高値で会社売却M&Aをしたりと言った”知財を使って会社を跳ねさせること”を目指す。
仕事としても個人としても新しいビジネスに興味があり、尖ったビジネスモデルを見聞きするのが好き。

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