この記事について
自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。
『オルタンシア』|仕事のワクワク感を映し出すサイズの絵を玄関に飾るKさん
さて、これは注意しなきゃな、と思いました。サイズを慎重に考えなければ。
「玄関に絵を飾りたいのです。でも、サイズが自分ではうまく決められなくて。ネットでいくら見ても、一向にピンとこないのです」訪れたKさんは構造設計のプロ。目に見える建物の外観や内装のために、目に見えない部分を一ミリ単位どころか、0.00ミリ単位まで計算します。限られた条件で、ピタッとハマる形を見つけた時が、なんとも快感だそうです。「ああ、きっちり揃って収まった、と思うと満足感が湧き上がってくるのです」
建物や内装は意匠設計と言って、形を美しくデザインします。例えば、東京オリンピック会場の建築家、隈研吾は意匠設計の建築家です。一方、構造設計は、建物が機能する構造を設計します。地震に対応するのも構造設計の分野。
だから、
「美しくあるために柱をなくしたい」
「耐震性のために柱が必要だ」
など、意匠と構造は時に対立するそうです。
意匠は目を惹くために0.00ミリでこだわるし、構造は見た目の美しさと安全安心との調和に0.00ミリ単位で妥協しない。そのせめぎ合いの中で、私たちが快適で安心できる建物ができるのです。
裏方の構造設計ならではの快感。オーダーに生かせたらと思いました。
「Kさん、玄関の構造から逆算して、額装の大きさと絵の大きさを決めましょうか?」と提案しました。すると「さすが門間さん、そうしたいと思っていたんです。できますか?」目が輝き、一気にテンションが上がりました。
「窓の大きさは何センチでしょうか」
「20センチです」
「では、絵のサイズに、20センチを使いましょう」
「ぜひ、お願いします」
するするとやり取りが決まりましたが、これは、実はマニアックな会話です。
普通は、絵を美しく見せる基準のサイズから選びます。何百年も間に精査された万人に「それはいい」と言われる大きさです。絵画は、「号数」で規格化。フランス規格をベースに尺寸単位に置き換え、メートル法に換算(1 尺=約 30.3cm) したもの。ネットで何千、いや、何万もの絵が溢れていますが、ほとんどは規格サイズです。
でも、Kさんが、毎日毎日、気分良く玄関を通り抜けるのに規格は関係ありません。
ぴったり収まる。きっちり収まる。
絵が窓と同じサイズが気持ちいい。
Kさんとのセッションで、声なき声が聴こえてきました。それを、言葉にして投げかけたら、スッと決まったのです。
「窓は正方形ですか?」
「そうです」
「では、三つ並んでいると、60センチですね」
「はい」
「では、20×60センチの横長ではどうですか?」
「それ、いいです!」
絵の縦横も決まりました。
この会話もマニアックなのです。
絵を飾る時、普通は窓より絵を一回り大きくしたり、小さくしたりします。人は、違いによって目をとめるので、窓の比率と変えるのがセオリーです。でも、Kさんは、裏方としてピッタリはまるのが快感。
窓と絵を同じリズムを玄関に刻む。絵も、窓と同化する。
それが、Kさんのワクワクを引き出しました。
意匠設計に携わる人ならば、窓とはっきり違う比率の絵に、テンションが上がるでしょう。形を外に主張するのが快感。「自分のデザインだ!」と、表現したいからです。でも、構造設計の矜持は別のところにあります。目立たない正確さが目に見えるものを支えているという、揺るぎない誇りです。
その誇りと紐付けて、絵の大きさが決まりました。私のオーダーでは、その人だけの世界を大切にたいせつに創り上げます。
その人だけの生き生きとした感性が湧き立つもの。内面からの、ワクワクする感覚を呼び起こす。心地よさで安心する。基準や数字では図ることができないその人だけの魅力と共鳴します。
一番大事なのは、絵を飾る人が毎日まいにち気持ちよく楽しく過ごせること。そのための絵は何か。寄り添って一緒に考えることだと思っています。
自分だけの絵や空間を手に入れるとき。それは、世界で一つの自分にしか紡げない物語の一部となります。日本を代表する心理学者の河合隼雄によると、物語は科学の働きを補完します。科学は分析でものごとをバラバラにする一方、物語は、つなぎ合わせるからです。
近代科学の発達によって、分析するチカラが飛躍的にのびました。それによって、誰が見ても美しい絵のサイズやセオリーなどが手に入りました。でも、それだけに頼ると、かけがえのない自分自身につながる絵との出逢いを見逃してしまうかもしれません。
自分の感覚や、気持ち。一見たよりになる基準もなく、数字にも表せない‥‥、そんなところに、人生にとって重要なものが隠れていることがあるのです。
著者の自己紹介
ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。
今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。
人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。
人生
の節目には様々なテーマが訪れます。
経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。
こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。
でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。