第187回 クラファンで変えられるもの

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第187回「クラファンで変えられるもの」


安田

法隆寺のクラファンがすごい事になってますね。

久野

凄いですよ。1億越えでしたっけ。

安田

目標金額2,000万円なのに1億5,000万円集まったそうです。なんと1日で2,000万超えちゃったという。

久野

こういうものにお金が集まる時代で、本当によかったですよ。

安田

観光客が減ってかなりキツかったみたいです。

久野

コロナで完全に止まってしまいましたから。

安田

それにしても法隆寺ですよ。庭の手入れとか、国宝を維持するお金とか、日本にはその程度のお金もなかったのかって。そっちが驚きなんですけど。

久野

いやあ、日本は厳しいですよ。ずっと赤字ですから。

安田

ネットを見ると妬みもあって。「これでいい思いするんじゃないのか法隆寺は」みたいな書き込みとか。

久野

最低ですね。

安田

ホントですよね。人が善意でお金を出して、自分の懐は1円も痛んでないのに。

久野

でも集まってよかったですよ。

安田

みんな「お金ない」って言ってますけど、その気になればこれぐらいのお金は集まるってことですね。

久野

クラファンという仕組みができたのが大きいです。

安田

政治家が税金を集めて再分配するより、よっぽど良い仕組みですよね。

久野

自分の意思がちゃんと反映されるし。

安田

アメリカだったら寄付した分の税金が安くなったりするじゃないですか。

久野

アメリカは寄付の文化ですから。日本もそうすりゃいいのにと思うんですけど。

安田

政府も小さくした方がいいですよ。アメリカだったら、小さい政府か大きい政府かを選挙で選べます。日本の場合どこがなっても大きい政府で。

久野

私もそう思います。歴史的な建造物なんかも国家に頼り過ぎず運営した方がいい。労働と同じような展開になっていくので。

安田

労働と同じ展開ですか。

久野

与えられれば与えられるほど考えなくなっちゃう。

安田

確かに。

久野

自分で工夫すれば、ちゃんとこうやって成り立つわけで。自分で考える習慣をつけないとダメです。

安田

地方の過疎化とかもそうですよね。

久野

もう国にお金がないので地方の道路や線路は保てない。維持していくなら自分たちで考えるしかないです。

安田

これだけ国民が社会保険料や税金を払ってるのに。それでも無理ですか。

久野

昔は道路や線路をつくると、そこに家が建って人が集まって、最終的には税金で回収できるモデルだったんですよ。

安田

なるほど。

久野

今は道路をつくり直しても誰も通らないし。

安田

地方のインフラに投資しても回収できないと。

久野

昔は回収できたんですけど。今は回収できないです。

安田

今って現役世代が1人で2人以上の高齢者を支える状態じゃないですか。

久野

そうですね。出生率も下がってますし。

安田

でも出生率はどこかで下げ止まるでしょうし、高齢者の方がお亡くなりになっていけば、どこかで楽になる気がしますけど。

久野

いやあ、本当にキツいのはここからですよ。高齢者が100年生きる時代になっていくので。

安田

この先10年20年じゃ終わらないってことですか。

久野

終わらないでしょう。

安田

なるほど。

久野

上が少なくなって、1回小さく戻ってってくれればいいんですけど。広がったままなので。

安田

しかも日本全国に広がってますからね。

久野

そうなんですよ。このまま維持するのはもう無理。

安田

いっそのこと法隆寺的みたいに、直接お金を集めて運営したらどうでしょう。

久野

さすがに交通インフラは無理だと思いますよ。美術館とか公園なら何とかなるかもしれませんけど。

安田

やっぱ無理ですか。でも政治を介すると、また利権が絡んでくるじゃないですか。

久野

そうなんですよね。

安田

まずは出来るところから変えていくしかないと。

久野

そう思います。今回の法隆寺を見てるといろいろできそうですし。

安田

こういう寄付をしたい人って一定数いますもんね。

久野

いるでしょうね。

安田

必ずしも富裕層というわけではない気がします。

久野

私も小学生の時に法隆寺に行きましたけど、幼少期の体験があると「お金出してもいいな」って思うんじゃないですか。

安田

なるほど。

久野

お寺も長期戦略で小学生をもっと取り込むとか。工夫しないと。

安田

まずは国の予算から外すことですか。

久野

そうしないと自分で考えないですから。

安田

学校とかも寄付だけで運営できないですかね。

久野

教育は難しいですね。日本の場合は平等に全員に教育を受けさせる前提なので。

安田

その代わりに国の言うことを聞かないといけないし。言われた通りの教育プログラムでやらないといけないじゃないですか。

久野

そうなりますね。

安田

もうちょっと主導権を持って、アメリカのように独自のプログラムでやる学校があってもいいと思うんですけど。

久野

そこを変えるのはかなり難しいと思いますよ。

安田

やっぱり難しいですか。

久野

若い人の起業サポートとか、そっちの方が早いと思う。

安田

なるほど。

久野

スタートアップの会社がクラウドファンディングでお金集めて、一気に伸びていくとか。今すごく増えてるみたいです。

安田

ZOZOの前澤さんも100万人集めて会社をつくるそうです。知ってますか?

久野

知ってます。登録しました(笑)

安田

おお!私も登録しました(笑)月500円かかるんですけど。

久野

面白いことができたら、それだけで元が取れますよ。

安田

初期メンバーが既に20万人を超えてるそうです。それだけで月に1億円の資金ができちゃう。

久野

集客力のある人はいくらでもやりようがあります。

安田

批判してる人もかなりいるみたいですけど。「自分が儲けたいだけだろ」みたいな。

久野

法隆寺でさえ批判する人がいるんですからね。

安田

ちゃんと「使った内訳出せ!」みたいなコメントが書き込まれていて。

久野

自分でお金出してない人がそうやって書くんですよね。

安田

そうなんですよ。自分で1円も出してもいないくせに、なぜ文句を言うのか。

久野

根っこにあるのは僻みですよ。もう末期的です。

この対談の他の記事を見る



久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

感想・著者への質問はこちらから