第225回「新卒はオワコン!?」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第224回「すし職人には英語が必須」

 第225回「新卒はオワコン!?」 


安田

2023年入社の新卒内定率が4年ぶりにアップしているそうです。

石塚

この2年間コロナの影響で新卒採用を抑制したじゃないですか。あれの反動ですよ。

安田

なるほど。どれぐらい落ちてたんですか?

石塚

いま4割戻ってるという話ですから、半分ぐらいになっていたということでしょうね。

安田

え!半分ですか?みんな路頭に迷っちゃいますよ。

石塚

就職率が半分になったわけではなくて。採用の総数自体を抑制していたということです。それが戻ってきているということ。

安田

つまり求人倍率が上がったってことですね。

石塚

たとえば10人新卒を採用する予定だけど、「うーん、まあ、3人ぐらいでやめとこうか」みたいな会社が非常に多かったということ。

安田

つまり採用自体はやっていたけど、採用に結びつかなかったということですか。

石塚

そこにズレがあったということなんでしょうね。

安田

コロナが始まってから2年以上経ちますけど。けっこう早い段階で「やっぱり人が足りないから採用しなくちゃ」という動きがあったイメージです。

石塚

新卒採用ってもっと先を見越してするものなので。そこまで見据えて採用する企業はかなり少数派だということ。

安田

なるほど。

石塚

「やらせようと思っていた仕事がコロナでぜんぶなくなった」という例も少なくない。

安田

それは飲食関係とか?

石塚

旅行代理店関連、サービス業関連もそうですね。

安田

人が動かなくなりましたもんね。

石塚

はい。日本旅行やHISも全部そんな感じです。

安田

コロナの間も相変わらず業績がいいところはありましたけど。大量採用する企業は減ってるんですか。

石塚

質の高い人材は欲しいけど、単に数が欲しいという企業は減りましたね。

安田

今回はそこが戻ってきた感じですか。

石塚

おっしゃる通りです。こんなことを言うと怒られちゃうけど、頭数がどうしても必要な職種とか会社・業種ってあるじゃないですか。

安田

ありますね。

石塚

そこが止まっちゃうと労働側はあおりを食います。

安田

つまり「頭数採用が戻ってきた」という見立てですか。

石塚

そうです。

安田

やっぱり旅行関係ですか?人が動くからサービス業?

石塚

人が動く系の旅行・サービスは多いんじゃないんですか。あとは様子見していた中小企業とか。中小企業ってこういう時に止めるじゃないですか。中小企業の悪いところだけど。

安田

こういう時こそ「採ればいいのに」って思います。

石塚

そうなんですよ(笑)採用は逆風を突いていくのが一番いい。だけど中小企業は順風ばっかり探してしまう。

安田

経験者のニーズも高まってますか? 

石塚

即戦力性の高い人材は常に欲しがってます。だから、まず第1が経験者。新卒はその次ですね。

安田

即戦力でなければ、社会人経験者よりも新卒の方がニーズがあると。

石塚

安田さんもよくご存知のように、新卒採用が好きな会社って相変わらずあるので。

安田

これって今後も続くと思いますか。

石塚

新卒の数はこれから毎年減っていくので。1人を採るための競争率が落ちることはない。一方で「そもそも新卒って必要なのか」と疑問に感じている会社も増えてます。

安田

「中小企業こそ新卒をとるべきだ」って、私も大々的に広げたことがありました。

石塚

まあ(笑)そういう時代でしたから。

安田

当時とだいぶ事情が変わりましたよね。「新卒はやめない、育てやすい」という常識も変わってきました。

石塚

今は辞めることを前提に入ってきます。他社の情報もいくらでも入ってくるし。

安田

他社の情報なんて昔は遮断されていて、「社会人とはこういうもんだ」という理屈が通用しました。

石塚

むりむり(笑)「そんな会社はやめとけ」って、LINEで速攻否定されますよ。

安田

新卒って、どうしてもステータスで会社選びをするじゃないですか。

石塚

おっしゃる通り。

安田

大学に高い学費を払う目的がそこなので。できるだけいい会社に就職したい。

石塚

「いいと言われている会社」ですね。正しくは。

安田

そうなんです。働いたことがないのでその区別がつかない。だから入社してから「ちょっと違うよな」ってなるんだと思う。

石塚

実際そうなってます。社会に出てから「本当に自分に合う会社や仕事を選び直していく」という。そういう時代ですね。

安田

となると第二新卒が狙い目じゃないですか。

石塚

おっしゃる通り。優秀な学生ほど早くそれに気づきますから。

安田

昔は「入社してすぐ辞める奴なんてダメだ」って感じでしたけど。

石塚

今は逆ですね。2社目3社目で生涯働き続ける会社をしっかり選ぶ。そういう現象をいっぱい見聞きしてます。

安田

学生って居酒屋やコンビニのバイトぐらいしか、働いた経験がないので。ビジネスシーンに触れたことがないと分からないですよね。

石塚

本当の意味で、自分に合う仕事を新卒で見極めるのは無理でしょう。

安田

もう1回、就職活動をやり直すと言ったら変ですけど。ちゃんと社会人の目でもう1回「自分に合ったところを選び直す」という人が増えていきそう。

石塚

「いまの会社にいてもレベルアップできるとは思えない」という人が本当に多いですから。

安田

中小企業はとくに新卒じゃなく、第2新卒もしくは第3新卒を狙うべきじゃないですか。

石塚

おっしゃる通り。社会人を経験して、A社B社を経験したうえで、「御社の仕事が自分には合っていると思うし、ここで続けたい」ときっちり判断できる。

安田

20代半ばぐらいの人とか。能力的にも、やる気的にも、ベストじゃないかという気がするんですけど。

石塚

僕もそう思います。

安田

それでも中小企業は新卒採用をつづけますか。

石塚

やっぱり相も変わらず、という認識の会社さんをよく目にしますね。

安田

そうですよね。「新卒はいい人が採れる」「真っ白だから育てやすい」って、今でも思っていらっしゃる方が多い。

石塚

「新卒は辞めない」とかね。ぜんぶ、もう過去の話ですよ。

安田

新卒って見る目がない分、どうしても「よさそうな会社」を選ぶので。新卒の人気企業ランキングと中途の人気企業ランキングって、ぜんぜん違いますもんね。

石塚

ぜんぜん違います。

安田

せっかく大学まで出たんだから、社会的ステータスが高いところへ入ろうとする。中小企業は明らかにそこが不利になっちゃいます。

石塚

そうなんですよ。

安田

よっぽど採用上手な会社じゃない限り、他社を落ちた人の中から採らざるをえない。

石塚

「大企業に入って失敗した」っていう新卒がいま本当に多いので。ここを狙うのが僕のおすすめですね。

安田

大企業や有名企業の内定を、新卒の時にひっくり返すのは難しいですからね。

石塚

だけど第2新卒・第3新卒だったら、大手に行くレベルの人材が採れる。だから無理して新卒採用しなくてもいいのにって思うんです。コストもかかるし、辞めちゃうし。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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