第224回「すし職人には英語が必須」

この記事について

2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第223回「国家を動かす人材」

 第224回「すし職人には英語が必須」 


安田

東南アジアから出稼ぎの人が「もう日本では稼げない」って。給料も安いし、円安なので価値がすごく毀損しちゃって。

石塚

もう誰も来なくなりますよ。

安田

逆に海外に出稼ぎに行く日本人が増えてるみたいです。

石塚

すし職人は海外に行くと倍以上になる。

安田

倍ですか!

石塚

日本にいたら500万稼ぐのも大変ですよ。若手なんてめちゃくちゃ安いし。

安田

若手でも海外に行ったら1,000万ぐらい稼げますか。

石塚

スキルがあれば稼げます。タイでもマレーシアでも1人6万円を超える高級店がたくさんあって。

安田

そんな高い店にお客さん来るんですか?

石塚

予約しようとしても1か月以内は無理とか。そういう状況みたいです。

安田

なんと。

石塚

日本の職人は腕がいいし、仕事が丁寧だし。英語での接客さえ覚えれば引く手あまたらしいです。

安田

そりゃあ海外に行っちゃいますね。

石塚

すし職人を紹介するエージェントもありますから。

安田

そんなのまであるんですか。

石塚

正確にいうと「日本料理人を海外に紹介するエージェント」ですね。

安田

なるほど。鉄板焼き職人とかもニーズあるでしょうね。

石塚

あるでしょう。

安田

海外の高級ホテルにも鉄板焼き増えてますし。

石塚

あれは技術も必要ですから。

安田

カウンターなのでコミュニケーション力も必要ですよね。

石塚

必要ですね。英語でのコミュニケーション。

安田

カウンターでの接客って、どれぐらいのレベルの英語が必要なんでしょうか。

石塚

注文をちゃんと聞けて、おススメもちゃんとできるぐらい。エージェントも「職人が最低限おさえなきゃいけない英語」を教えてますね。

安田

英語の勉強してる職人さんって、イメージが湧かないですけど。皆さんちゃんと勉強するんですか。

石塚

「給料が倍以上になる」っていったら、そりゃ頑張りますよ。

安田

たしかに。しかも円安ですからね。ドルで稼いで日本に持って帰ってきたら、倍どころじゃないかもしれないです。

石塚

倍どころじゃないですよ。マレーシアで5年ぐらい気合い入れてやったら、為替差益でとんでもないことになります。

安田

一軒家が建っちゃう?

石塚

地方だったら余裕で建つでしょう。「日本は安いな~」なんていって(笑)

安田

若い職人はみんな海外に行っちゃいそう。

石塚

もし自分が30歳前後のすし職人だったら、マレーシアかバンコクに行くと思います。

安田

へぇ~。

石塚

日本はコロナだなんだと景気が悪いし。

安田

ずっと同じことしてますもんね。

石塚

向こうは「コロナ?大丈夫、大丈夫!」みたいな感じで。人も動いてるし。

安田

マレーシアやバンコクにそんな高級店があるんですね。

石塚

ASEANの発展って今すごいですから。

安田

日本より高層ビルが多いらしいですね。家賃も高いっていう噂で。

石塚

日本よりも活気があるし、若い人が多いし、伸びてるし。

安田

若い職人の方が海外では人気がありそうですね。

石塚

多いのは30代40代です。

安田

あまり若すぎてもだめですか?20代とか。

石塚

若いと腕前がまだ。日本って10年ぐらい下働きで、ぜんぜん技術なんか身に付けさせてくれないじゃないですか。

安田

たしかに。魚さばいているだけだったりして。

石塚

魚なんかさばかせてもらっていればまだいいほうで。シャリかきばっかりとか。だから日本は育成構造上、20代で腕のいいすし職人がいないんですよ。

安田

なるほど。

石塚

すしアカデミーが流行るのもわかります。

安田

じゃあ30〜40代が中心なんですね。英語を覚えて海外に行っちゃう職人は。

石塚

そのゾーンが中心です。

安田

やっぱり東南アジアですか?ニューヨークやロンドンではなく。

石塚

母国語が英語のところって結構ハードル高いんですよ。お互い英語が母国語じゃないほうが働きやすい。

安田

確かに。カタコトの英語でも問題ないですもんね。

石塚

そうするとやっぱり東南アジアの、お金持ちが集中してる大都市になるわけですよ。日本食も身近だし日本食の評価がすごく高いし。

安田

中国はどうですか?

石塚

中国はゼロコロナ政策だから、みんな閉めちゃってる。

安田

中国でやるんだったら中国語ですか?

石塚

上海や香港だったら英語でまったく問題ないです。

安田

すしアカデミーは、英語での接客も教えてるんでしょうか。

石塚

教え始めているらしいです。そういうニーズが高まってるので。

安田

やっぱりそうですか。

石塚

職人だけじゃなく経営者も「高級店を海外に出そう」って人が増えてます。単価も高く取れるし。

安田

タイやマレーシアの高級日本食店は、日本人がオーナーなんですか?

石塚

日本人の経営もいるけれど、中国系も多いです。香港系とか。

安田

働くなら、どっちがいいんでしょう。

石塚

稼ぐ目的なら中国・香港系がいいと思う。イエス・ノーがはっきりしてるから。

安田

なるほど。日本人の店は上下関係とか厳しそうですもんね。

石塚

あとは現地の富裕財閥層が持っている店。そういう店もいいでしょうね。

安田

日本国内の高級店はこの先なくなっていくんでしょうか。

石塚

インバウンドで海外からのお客さんをどんどん取り入れていかないと。高級な店にお金を払える日本人って、ごくごく限られますから。

安田

国内の高級店も外国人向けになっていくんですね。

石塚

「うわ~安い!マレーシアで食べるより安い!」とか言って食べるんですよ。銀座とかで。

安田

日本人はそれを横で見てるだけ。悲しい。

石塚

それが現実ですね。国内で働くすし職人もいずれ英語が必須になりますよ。

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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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