モノからコトへ。
体験消費といえばこのフレーズが浮かぶ。
物を手に入れるのではなく、
旅行や食事などの体験こそが人生を豊かにする。
という流れである。
しかし「体験消費はそれだけではない」と
マーケティングのプロである小出紘道氏が書いている。
いわく、そこには3つの文脈があるそうだ。
1「モノから体験へ」
2「買い物という体験こそが重要」
3「商品の製作過程を開示し体験させることが重要」
という3つである。
そこに共通するのは「体験」という言葉であるが、
顧客が求める価値はそれぞれ違う。
1は体験自体が商品であり、
そこに価格がついていることが特徴だ。
旅行、食事、映画、遊園地などがこれである。
2は消費体験が価値であるが、
価格がついている商品は別にある。
高級ブランドショップでの買い物などがこれに該当する。
ネットで安くお手軽に買うのではなく、
ドアマンのいる一等地の重厚なお店を訪れ、
礼儀正しい一流店員のおもてなしを受け、
お目当ての商品を購入する。
購入に至るプロセスが顧客にとっての価値なのである。
3は私自身がよく使う手法である。
商品説明の文脈を変えることで、その定義を変え、
価値をアップさせるという手法。
たとえば、こだわりのビーフシチュー。
もちろん食べれば美味しいのだが、それだけでは
顧客の体験価値は「1:コト消費」で終わってしまう。
このビーフシチューにはどんな材料が使われているのか。
それはどれほど希少なものなのか。
加工するためにどんな手間が加えられているのか。
このレシピが完成するまでに
どれほどの思考と失敗体験が繰り返されたのか。
ここを共有することで、美味しいビーフシチューは
「特別なビーフシチュー」へと変わる。
顧客が食しているのは単なる
美味しいビーフシチューではなく、
「あの希少な材料を使った、とんでもない手間を
かけた、〇〇さんの人生が詰まった、
特別なビーフシチュー」なのである。
お金を払う対象は
シチューであってシチューではない。
顧客はシチューを食べながら
その背景にある物語を食しているのである。
顧客から見れば偶然の出会いと感動。
しかし売る側は意図してこれをやらなくてはならない。
まずは自分たちの商品価値が、
どの消費体験に属するのかを明確にすること。
そして消費体験が感動体験に変わるように、
顧客に開示する情報を練り込んでいくこと。
ピカソを見て感動するのは、
ピカソを知っている人なのである。
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