医者に向いていなかった医師 上谷ミレイ
精神科医になりたくて、医学部に入られたということですけど。
はい。なりませんでしたけど。
そもそも、なぜ精神科医になろうと思ったんですか?
7歳のときに両親が別居して、9歳のときに離婚したんですけど。めちゃくちゃ悲しくて。それが私的には結構つらい体験で。
身につまされる話ですね。
そのなかで、「物事の考え方・見方を変えれば、人生って前向きに明るく生きられるんだ」みたいなことを、子どものころから自分なりに思って生きてきて。
すごいですね。
あと、友だちから相談を受けることが多くて。私に話すと「元気になる」って言われて。
それで精神科医になろうと。
はい。「自分次第で人生って変わるんだよ」ってことを人に伝えたり、応援できるような仕事がしたいなあと。医者になるか弁護士になるか迷ったんですけど。
頭が良かったんですね。
勉強は好きだったので成績はよかったです。あと、女子だし、なにか手に職系がいいかなと。それで私の適性から精神科医がいいかなあと。
だけど最終的に精神科医にはならなかった。
ならなかったですね。私が思っていたのって対話型のカウンセリング的な、心理療法的なイメージだったんです。でも実際の精神科医って薬物療法が中心で。
アメリカのドラマに出てくる精神科医は対話中心ですけどね。
そんなのぜんぜんないんですよ。
へぇ~、そうなんですね。
私がやりたかったような、そういうシーンに出てくる仕事って、心理職の人がやる仕事なんです。
心理職?
臨床心理士さんとか。当時はなかったんですけど、いまは公認心理師という国家資格があって。私も資格を取りました。
精神科医と心理士は違うんですね。
精神科医は診断するために話は聞きますけど、それはあくまでも投薬治療のためという側面が多いんです。それこそ30年ぐらい前の大学病院は、まだ閉鎖病棟的な印象もありました。
昔の精神科病棟って鉄格子が嵌ってるイメージでした。
病院に入院するような患者さんは症状の重い人が多いです。だけど「そういうことをやりたいんじゃないんだよな」って思って。
何科になるかは、どのタイミングで決めるんですか?
私たちの時代はストレート入局といって、卒業後すぐに所属する科を決める流れでした。
今は違うんですか?
今は卒後2年間で全科を回ってから決める流れになってます。実際やってみて適性を考えて決めるんです。
適性は大事ですよ。
そう思います。だけど私の時にはそういう制度がなくて。
上谷さんは外科と内科で4年間研修したんですよね。
そうです。最初は外科系の医局に入ったんですけど、めちゃくちゃ適性がなくて。「無理だ」と思いました。
> 第2回「 医者だって病気になるのです 」へ続く