第142回 「自費診療は儲かる」は間違い?」
お医者さん
うーん、自費診療を始めたっていう医者に会ったが、なんとも楽しそうだったな。患者数も順調に伸びているとか。
お医者さん
ウチもどんどん売上が下がっているし……ここらで思い切って自費診療に切り替えてみようか。
保険診療と違い、自費診療は値段設定も自由ですからね。うまくいけば売上の改善にも繋がるでしょう。
絹川
お医者さん
そうそう、そこなんだよ。保険診療では単価をいじれないから、患者数を増やすしかないわけで……かといってそれも簡単じゃないし。って、あなた一体どなたですか。
初めまして。ドクターアバターの絹川と申します。お医者さんの様々な相談に乗りながら「アバター(分身)」としてお手伝いをしている者です。
絹川
お医者さん
へえ、様々な相談ってことは、自費診療についても詳しいの?
そうですね。どうやって自費診療を始めるか、悩んでいるお医者さんは多いですから。
絹川
お医者さん
そうなんだよね。これまで何十年も保険っていう既存システムの中でやってきたからね。いざ自分で自由にやれと言われてもなかなかね。
わかります。ただまずご理解いただきたいのは、「自費診療=儲かる」という単純な話ではないということです。これは、自費診療に詳しくない方ほど勘違いしがちなんですよ。
絹川
お医者さん
む……いや、まあそれくらいはわかってるつもりだよ。でも実際知り合いの医者は随分患者も増えたと言っていたし、悪くない戦略だと思うけど。
もちろんうまくいっているクリニックも多数あります。ちなみに先生はどのような形で自費診療を取り入れていくイメージでしょう。
絹川
お医者さん
いや、単純に保険診療の患者さんに自費診療をおすすめするだけだよ。
なるほど。しかしそれはなかなかハードルが高いと言わざるを得ません。保険の患者さんを自費診療に切り替えるのは、かなり強い信頼関係がないと難しいです。
絹川
お医者さん
え、そうなの?
ええ。だって考えてみて下さい。診察室でいきなり自費診療への誘導をされたら警戒しかねないですよ。
絹川
お医者さん
いやでも、新規の患者が増えるかもしれないし。
でも、どのような自費診療を行っているか既存の患者さんも知らない中で、まったくの新規が飛び込みで来るのは考えにくいですよね。
絹川
お医者さん
そうは言うけど……じゃあ一体どんな風に始めればいいの。
そうですね。よくオススメするのは、既存サービスは今まで通り保険診療のまま続け、新たに自費メニューを作ることですね。
絹川
お医者さん
新たに作る?
ええ。多少金額が高くても受けたいな、と思われるようなメニューを作り、それを少しずつPRしていくんです。院内にポスターを張ったり、リーフレットを置いたりして。
絹川
お医者さん
ああ、なるほど。それを見て興味を持ってくれた人を誘導するってことか。
そういうことです。内容や金額に納得してもらった人だけに特別メニューとして提供していく。まずはその数を少しずつ増やしていくんです。
絹川
お医者さん
ふむふむ。そうなれば口コミなどでも広がっていくかもしれないな。
そうなんですよ。そのうち最初から自費メニュー目的で新規の方が来るようになるかもしれない。
絹川
お医者さん
なるほどねえ。逆に言えば、そういった実績もないまま一気に舵を切るのは危険ってことか。
仰るとおりです。医療業界にお金を落としてくれるのは患者さんです。あくまで患者さん目線で考えないと失敗します。
絹川
お医者さん
言われてみれば当然の話だな。結局は患者さんとの日々の信頼関係が大事ってことだね。
そういうことです!
絹川
医療エンジニアとして多くの病院に関わり、お医者さんのなやみを聞きまくってきた絹川裕康によるコラム。
著者:ドクターアバター 絹川 裕康
株式会社ザイデフロス代表取締役。電子カルテ導入のスペシャリストとして、大規模総合病院から個人クリニックまでを幅広く担当。エンジニアには珍しく大の「お喋り好き」で、いつの間にかお医者さんの相談相手になってしまう。2020年、なやめるお医者さんたちを”分身”としてサポートする「ドクターアバター」としての活動をスタート。