国を動かす役人、官僚とは実際のところどんな人たちなのか。どんな仕事をし、どんなやりがいを、どんな辛さを感じるのか。そして、そんな特別な立場を捨て連続起業家となった理由とは?実は長年の安田佳生ファンだったという酒井秀夫さんの頭の中を探ります。
第18回 元官僚から見た軍事予算
つまり、どこから防衛するためのお金かっていうことですか?
確かに日本は島国ですから、諸外国から守るとなるとそうですよね。
時代は変わっているのに、自衛隊ができた頃の名残を引きずっていると。
そうなんですか。なんで議論できないんですか?
ええ。本来であれば、そういうシナリオに基づいた予算配分を考えなきゃいけないんですけど。今の日本の風潮では「仮想敵国がある方がおかしい」という意見も大きく、どの国のどうのような脅威を想定するかという議論までなかなか進まない。
結局そうやってアメリカに守ってもらえるんだから、日本独自の軍事予算なんて必要ないような気もしますけどね。
なるほど、そこのせめぎ合いなんですね。状況がわかってきました。一方で、「アメリカから武器を買おうとしても、最新鋭の戦闘機は売ってもらえずにミサイルばかり買ってる」なんて話を聞くと、その予算に意味はあるのかなと思っちゃうんですよ。
でも実際には撃ち落とせないんじゃないかっていう声も多いですよね。
そうですね。撃ち落とせる可能性が低いとして、それに対し国が「日本国内にミサイルが落ちたら多少の犠牲は出るかもしれないけど、次の瞬間迎撃するから大丈夫」という理屈は国民からすると受け入れ難いわけで。そもそも、その時、敵基地を攻撃してよいかについても議論がありますし。
犠牲者が出る前提の話は受け入れられないと。それで日本もアメリカも「撃ち落とします」って言い張ってるわけですか。
なるほど。そうなったらアメリカが日本に基地を置かなくなる可能性もあると。
そうですね。ただ、どのレベルで防衛するのか、どの兵器まで許容するかにもよるので、厳密にはお金だけの問題ではなくて……
「日本人の犠牲者は1人たりとも出さない」というレベルであればかなりの額が必要でしょうし、ある程度の犠牲は許容するということであればまた変わります。逆に、先に敵基地や首都を攻撃するぞと威嚇をする方が、金額的には防衛費が少なくなるかもしれません。ただ、それはなかなか難しいですよね。
国民の総意として決めておいた方がいいというのは仰る通りです。ただ、その選択をみんながリアルに想像できないというか。「日本の戦後教育」のせいにするのはいささか雑ではありますけど。
アメリカに戦争で負けた時も、自分の家族や友達が奴隷のように売られることはなかった。そういう記憶があるからこそ、自国が占領される恐ろしさを想像できない部分はあるでしょうね。
ええ。あんなものじゃ済まないはずなので。中国やロシアの対応を見てると、確実にもっとひどい状況になると思いますから。
じゃあ、やっぱりアメリカの属国であり続けるのがいいんですかね。早期退職を迫られても会社にしがみつくサラリーマンみたいに。
まあ、現実として今までもそういう選択をしてきてますからね。「アメリカの属国」か「中国やロシアの属国」かを選ぶとなると、アメリカの属国でいる方が生きやすいのは明らかなので。
なるほど。そこをみんなが理解して議論するには、リアリティがないと。地続きじゃないから実感がわかないんでしょうね。
対談している二人
酒井 秀夫(さかい ひでお)
元官僚/連続起業家
経済産業省→ベイン→ITコンサル会社→独立。現在、 株式会社エイチエスパートナーズ、ライズエイト株式会社、株式会社FANDEAL(ファンディアル)など複数の会社の代表をしています。地域、ベンチャー、産官学連携、新事業創出等いろいろと楽しそうな話を見つけて絡んでおります。現在の関心はWEB3の概念を使って、地域課題、社会課題解決に取り組むこと。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。