第174回「おじいちゃんと若者のコラボレーションが生んだ小さなブルーオーシャン」

このコラムについて

小さなブルーオーシャン?
何だかよく分からないよ。ホントにそんなので商売が成り立つの?

と思っている方は多いのではないでしょうか。何を隠そう私もそのひとりでした。私は人一倍疑り深い人間なのです。そこで・・・私は徹底的に調べてみることにしました。小さなブルーオーシャンなんて本当にあるのか。どこに行けば見られるのか。どんな業種なら可能なのか。本当に儲かっているのか。小さなブルーオーシャン探求の中で私が見つけた答えらしきもの。それはきっとみなさんにとっても「何かのヒント」になるはずです。

「おじいちゃんと若者のコラボレーションが生んだ小さなブルーオーシャン」


私は文具が好きで、
時間があると、
文具店に入ってしまう
という変な癖があります。

文具の何が好きかと言うと、
常に進化しているからです。
あの小さなものの中に、
さまざまな機能を詰め込み、
さらにデザインや使い勝手まで
考えてある。
文具を考えるヒトって、
ホントにすごいな、と思います。

さて、約7年まえ、
あるノートが爆発的に売れたのを
ご存知でしょうか?

そのノートは
「おじいちゃんのノート」
として、話題となり、
いまでも根強い人気のあるノートです。

通常のノートの約3倍の販売価格じゃあねぇ…

「水平開きノート」

中央が膨らまず、真っ平らに開くノート。

書きやすく、ワイドに使え、
コピーやスキャンがしやすい、
取り外しても使えると
利便性が高いノートです。

私は「マインドマップ」を
作る際に使っていますが、
とにかく使いやすいノートです。

しかしこのノートは
廃業寸前だった企業が、
手作りで作っていたんです。

東京都北区にある中村印刷所。

紙媒体が電子媒体に変わるにつれ、
どんどん経営が悪化。
廃業するしかないか――と追い込まれたとき、
市場に見当たらなかった
「水平開きノート」に光を見出し、
自社の近くで製本会社を営んでいた
ある男性とともに3年半の歳月をかけて開発した。

ところが、時間とコストがかかるので
通常のノートの約3倍の販売価格に。

売れずに困った中村氏。

しかしあるツイートをきっかけに
状況が一変したのです。

1つのツイートから爆発的人気に

共同開発社の男性の孫娘が
2016年1月1日、Twitterに
ノートの特徴を画像付きで説明する投稿をした。
すると、あっという間にリツイート数3万超え
それをきっかけにノートを求めて会社に
大勢の人が押しかけ、電話やファックス、
メールでひっきりなしに注文が入るように。

2016年の売り上げは4500万円。
過去最高の売り上げ。
その状況が3年続いたという。

これだけ話題になれば、
周囲も放っておくわけがない。
続々とコラボの話が舞い込み、
この7年で有名企業との共同製作や
個性的なコンセプトの製品が多数生まれている。

クラウドファンディングでは、
8つのプロジェクトを実施し、
すべて成功させていると言う。

市場が拡大し続けるノート

文具店に行くと、
さまざまなノートがあります。

これって、逆を言えば、
消費者がずっと、
自分に合うノートを探し求めている
ということなのではないでしょうか。

この水平開きノートは、
7年前、学生を中心に人気があったようです。
最近では利用者層も大幅に変わった気がします。

さらに、ノートだけではなく、
手帳、スケッチブック、原稿用紙、音楽用など、
さまざまな水平開きノートが発売されている。
さらに、さらに、今後は海外へ。

7年前、潰れそうな会社から生まれた
通常のノートの約3倍も高いノート。
市場が拡大し、アイテム数が増え、
今後は海外へ。
夢がありますね。

このストーリーから見て取れる
小さなブルーオーシャンは、
どんなに良いモノを作ったとしても、
消費者に届かなければ、
商品としては売れないということ。

そして、小さな市場から、
飛び越すのではなく、
周囲から少しずつ市場を広げていったこと。

この2つだと思います。

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株式会社中村印刷所
東京都北区
https://nakaprin.jp/
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佐藤 洋介(さとう ようすけ)
株式会社グロウスブレイン 代表取締役

大学(日本史専攻)を卒業後、人材コンサルティング会社に16年間勤務。ソフトウェア開発会社、採用業務アウトソーシング会社、フリーランスを経て、起業。中小企業の人材採用、研修に携わる一方で、大学での講義、求職者向けイベント等での講演実績も多数。人間の本質、行動動機に興味関心が強い。
国家資格キャリアコンサルタント、エニアグラムファシリテーター、日本酒ナビゲーター。

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