第5回「外国人労働者の現状と未来」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第5回「外国人労働者の現状と未来」

安田

海外実習生の受け入れとか、今進んでいってるじゃないですか。

久野

はい。進んでますね。

安田

「何を今更」ってくらい、現場には「すでにたくさん外国人がいる」って聞くんですけど。

久野

実際はそうでしょうね。だから法案の整備を急がないといけないんです。

安田

社労士さんから見ると、海外人材って今後どうなっていくんですか?日本企業は受け入れるべきなんですか?

久野

中小企業でいったら、絶対やるしかないでしょうね。

安田

それは「日本人が採用できないから」ってことですか?

久野

そうです。日本人が採用できない。特に今の若い子は、やりたくない仕事が明確なので。

安田

コンビニとか外食とか介護。あと建築とか、日本人だけじゃ回らないって言われてます。

久野

それが現状なんですよ。

安田

いま労働法が厳しくなってるじゃないですか?「残業させちゃいけない」とか「残業代きっちり払わないといけない」とか。

久野

なってますね。

安田

それは、外国人も同じ基準になるんですか?

久野

法律では一緒じゃないといけないので。海外みたいに外国人を安くしていいみたいなことは一切できないです。

安田

でも本音はどうなんですかね。政府は「同じ人間としてちゃんと扱おう」なんて言ってますけど、本音では「使い倒してやれ」ぐらい思ってんじゃないですか?

久野

いや、国会答弁を見てると、ぜんぜんそんなことないです。

安田

そうなんですか?

久野

外国人って言葉のハードルもあるし、移動するコストもかかりますから、条件が悪いと来てもらえなくなるんですよ。

安田

働く場所として「魅力的な国にしなきゃ」ってことですか?

久野

そうです。実際、最低賃金がここ最近上がってるじゃないですか?

安田

それも関係あると?

久野

外国人って基本的に、最低賃金で雇われてることが多いので。

安田

最低賃金を下回ると、外国人労働者といえども捕まるんですか?

久野

もちろん捕まります。

安田

時給300円で働かされてたって、ニュースになってましたけど。

久野

周りの中小企業で、あんなの見たことないです。

安田

え!そうなんですか?

久野

だって300円で雇ってて、もし居なくなっちゃったら、明日から経営が成り立たないですよ。

安田

じゃあ「ちゃんと日本人と同じ報酬払うから来てくれ」って感じですか?

久野

それが現実ですよ。あんなニュース「よく見つけてきたな」と思います。

安田

テレビならでは、ですね。

久野

ホントに。「こんな人見たことないよ」って現場では言ってます(笑)

安田

実際の現場では、日本人と同じくらい大事にされてると?

久野

どちらかと言うと「この子は外国人だから、ちゃんと残業代払わなきゃいけない」って感じです。

安田

えーっ!

久野

外国人のほうが、ちゃんと払ってる。

安田

ドラスティックだから、すぐに辞めちゃったりとか?

久野

外国人には分単位で残業代払ってて、日本人は15分単位とか。

安田

ホントですか?

久野

いやホントに。「外国人だから労働契約ちゃんと結ばなきゃ」って。

安田

驚きですね。

久野

現実はそういうもんです。

安田

ところで、この少子化って、どこかで好転するんですか?「今だけのガマンだ」って政治家は言ってるように聞こえるんですけど。

久野

どんなデータ見ても、少子化が止ることはないですね。

安田

ですよね。

久野

生産性が上がって、今のペースで外国人を受け入れて、女性とシニアが活躍しても、2030年に260万人足りなくなるんです。

安田

移民が嫌だとか、言ってられないと?

久野

何で抵抗してるのか、僕にはよく分からないです。

安田

よく言われるのが、治安の悪化と報酬の下落ですよね。

久野

だから変な人が入ってこないように「法整備をしっかりやろう」ってことじゃないですか?

安田

報酬に関してはどうですか?さっきの話だと、外国人を受け入れることによって「逆に最低賃金が上がって行く」という可能性もありますよね?

久野

その通りなんですよ。「日本人の給料が減る」ってのは、ちょっと考えられないですね。

安田

じゃあ何を心配してるんですかね。

久野

「俺たちの仕事をとられる」とか「報酬が下がる」っていうのは、単純労働を想定してますよね?

安田

そうですね。

久野

でもそういう仕事って、もともと日本人はやりたがらないですよね。

安田

「もっと給料高くて、俺がやりたくなる仕事を作れ」ってことじゃないですか。

久野

外国人が来なければ、そういう仕事が増えるってことですか?

安田

「だんだん条件が良くなっていくかも」と考えてるとか。

久野

でも単純労働じゃない人たちも、いずれ入ってきますよ。

安田

ということは、条件のいい仕事も奪われていくと?

久野

そこはもっと「自国民を信じろ」と言いたいですね。言葉の壁だってあるし、能力の高い日本人もたくさん居ますから。

安田

でも日本人全員が勝っていけますか?外国人材に。

久野

そもそも勝ち負けの問題じゃないんですよ。会社をグローバル化しようと考えたら、外国人を受け入れていくしかないんです。

安田

それは単純労働という分野だけではないですよね?

久野

そうなんです。むしろ企業の中枢になるような人材に「日本に根付いて欲しい」と考えている。

安田

そうじゃないとグローバル化した世界では生き残っていけないと?

久野

その通りです。

安田

じゃあ、仕事を奪うどころか、仕事を生み出してくれる外国人も出てくると。

久野

出てくるでしょうね。

安田

とは言え、やっぱり日本人の仕事を奪う外国人も、出てくるんじゃないですか?

久野

それは、もちろん出てくるでしょうね。

安田

それでもいいと思ってるんですか?政府は。

久野

政府はやっぱり、日本全体の国力のことを考えてますので。

安田

国力を高めてくれるのが外国人でもいいと?

久野

そう思ってると思います。

安田

じゃあ、結果的に仕事を奪われる日本人が出てきても?

久野

本音では「奪われるやつが悪い」と思っているでしょうね。

安田

奪われるやつが悪い?

久野

あなた達がやりたがらないだけで「仕事はいっぱい余ってるでしょ」と。

安田

「生産性の低い人は、誰もやりたがらない仕事やっとけ」と。

久野

外国人労働者という「爆弾」を落としたら、目が覚めるだろみたいな。

安田

選んでばかりいて不満を言う人に危機感を持たせたい。

久野

それは絶対にあると思います。

安田

ウカウカしてたら「そんな仕事すらなくなってしまうぞ」と。

久野

そうですね(笑)

安田

じゃあ、人手不足の現場は「やってくれるなら、日本人でも外国人でもいい」と。

久野

そうです。

安田

知的労働も「生産性を上げてくれるなら、日本人でも外国人でもいい」と。

久野

そういうことです。

安田

いずれ彼らは、帰化して日本人になっていくんでしょうか?

久野

そういう人も、たくさん出てくるんじゃないですか。

安田

じゃあ日本は、多人種国家になっていく?

久野

これほどの少子高齢化は、誰も経験したことがないので。

安田

どうなるか分からない?

久野

はい。でも普通に考えたら、外国人の受け入れしかないんですよね。

安田

あるいは「国力が落ちること」を受け入れるか。

久野

この国のトップは、絶対にそういう選択をしないでしょうね。



久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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