第22回 石のはじまりから終わりまで

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第22回 石のはじまりから終わりまで

安田
以前から私が「石好き」なことは何度かお話していると思うんですが。

中島

ええ、安田さんの石好きはよく存じています(笑)。

安田

大谷石(おおやいし)」という種類が特に好きなんです。栃木にかなり大きな採掘場があって、資料館もあるそうなんです。いつかぜひ行ってみたくて。


中島
ああ、確かに大谷石は栃木のものが有名ですね。少し緑がかった、やわらかい風合いの石ですよね。
安田

そうなんです。私の住んでいる中央区に「築地本願寺」という有名なお寺があるんですが、そこにも大谷石が使われていて。近くを通るたびに眺めては、「いいなぁ」と思っています。中島さんもお庭によく石を使われていますが、どんな風に選んでいるんですか?


中島

いろいろなケースがありますが、建物の色に合わせて選ぶことが多いですね。例えば私の自宅はグレーに近い色なので、石もそれに合わせてグレーに統一しています。

安田
ほう、なるほど。色で統一感を演出するわけですね。ちなみに日本の造園ではやはり「和の石」を使うことが多いんですか?

中島

多いです。ただそれは和の石にこだわっているというより、なるべく現場に近い場所にある石を使うからなんです。石は輸送にコストがかかるので。

安田
ああ、なるほど。そういえば韓国などから輸入した墓石はかなり高額だという話を聞いたことがあります。そうすると、基本的には国内にある石を使うわけですか。

中島

そのままの形で使う場合は、国内のものを使うことが多いですね。石垣を作る場合も、色のバランスを見ながらなるべく近場にある石から選ぶようにしています。

安田

ああ、中島さんがよく作られる「自然の石を組んで作る石垣」ですね。


中島
そうです。一方で、加工された石は海外からの輸入が多くなります。レンガとか、薄く削った石、お寺の名前を刻んだ石などもそうです。
安田

へぇ。それはどうしてなんですか?


中島

加工費が海外の方が安く、色も豊富だからです。以前は韓国からの輸入が多かったんですが、費用的な理由から今は中国が中心ですね。最近は中国のものも高くなってきてしまいましたけれど。

安田

中国も人件費が上がってますもんね。場合によっては日本よりも高かったり。


中島
ええ。とはいえ国内では種類が少なく色が選べないので……。結果、アプローチや床に貼る石は、海外のものを使うしかない状況です。
安田
ああ、なるほど。海外と同じものが日本で採れればいいけれど、そうもいかないと。

中島

そうですね。さらに最近は、国内で採れる石も海外から持ってくることが増えてきました。鉄平石はまだ日本でも採れますが、全体的にはインドやベトナムなど海外で採れたものの方が多くなっています。

安田
へぇ、インドやベトナムから。そういった国ではどういう石がよく採れるんですか?

中島
ベトナムでは御影石がよく採れますね。
安田
ああ、お墓によく使われる花崗岩ですよね。

中島

さすが詳しいですね(笑)。御影石は中国産の方が硬度があって艶が長持ちするんですが、今は中国のものが高くなってしまったのでベトナムが中心になっています。インドの方だと黒御影石がこれから増えてくると思います。

安田
ほう、なるほど。中島さんはどういう加工石を使うことが多いんですか?

中島

そうですね。僕個人としてはシャープな石が好きなので、細長く加工された石をよく使います。大きさ的には15cm×1.8mくらいが多いですね。

安田

へぇ。そういうイメージに合う石はいつもどこから見つけてくるんですか?


中島
情報収集も兼ねて普段から造園資材屋さんに顔を出すようにしています。よく行くのは愛知県の小牧市にある、日本でもトップクラスの造園資材屋さんですね。国内、海外合わせてかなりの種類の石を扱っていて、現物を見ながら選べるので重宝しています。
安田
へぇ、専門のお店があるんですね。ちなみにそういうお店からは、プロの造園業者さんしか仕入れられないんですかね。例えば私がふらりと行って買えるものなんでしょうか?

中島

うーん、どうでしょう(笑)。買えないことはない気がしますが、一般の方が買いに来ているのを見たことがなくて……

安田

まぁ、一般の人はなかなか石を買わないでしょうからね(笑)。ちなみに不要になった石はそういうところで買い取ってもらえたりするんですか?


中島
いえ、買い取りはしてもらえないので、手で持てるくらいの大きさまで小さく割って、処分場まで持っていきます。割る時に「セリ矢」という矢の形をした道具を使うんですが、ドリルで開けた穴に差し込んで叩いていくと、パカンと半分に割れるんです。
安田

へぇ! おもしろい。そうしてどんどん小さく割っていって、処分場に持っていくと。それにしても、「石の処分場」なんてものがあるんですね。

中島
そうなんです。そこでリサイクルして砂利にします。もっとも、処分費がかかるので、リフォームの場合はそのお宅で使わせていただくことが多いんですけどね。
安田

そうか。だからなるべく近くにある石を使うようにするわけですね。産地から処分場まで、一口に石と言っても奥が深いですね。


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

Facebook

高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから