第23回 経営者に向いている社員、向いていない社員

この対談について

「日本一高いポスティング代行サービス」を謳う日本ポスティングセンター。依頼が殺到するこのビジネスを作り上げたのは、壮絶な幼少期を過ごし、15歳でママになった中辻麗(なかつじ・うらら)。その実業家ストーリーに安田佳生が迫ります。

第23回 経営者に向いている社員、向いていない社員

安田

最近は世間一般でも、身内が会社を継ぐ時代ではなくなりつつあると思うんです。実際、中辻さんも社長の親族ではなく、イチ社員から経営者に大抜擢されているわけですし。


中辻

ありがとうございます(笑)。

安田

私も長らく経営者をやってきましたが、その視点で考えても、「どれだけ教育したところで、全員が経営者になれるわけじゃない」というのが実感としてあるんですよ。


中辻

ああ、なるほど。適性があると。

安田

そうそう。「経営者向きの社員」と「経営者向きではない社員」は現実にいるよなと。まあ中辻さんについては、最初から「この人は経営者に向いている」と確信していましたけどね。


中辻

もったいないお言葉です(笑)。

安田

そんな中辻さんから見て、どういう人が経営者に向いていそうですか?


中辻

そうですねぇ。私は経営者に選ばれた側の人間なので、どういう人に適性があるのかあまりわからないですけど……。強いて挙げるなら、「自分で舵をとっていきたい人」「自己顕示欲が強い人」「負けず嫌いな人」「面倒見の良い人」「リーダーシップのある人」とかですかね。

安田

なるほど。では反対に、「こういう人は無理でしょ」というのはどんなタイプですか? 実際、中辻さんの周りにもいらっしゃったと思いますけど。


中辻

笑。まず「ルーズな人」「やらなくてはいけないことを後回しにする人」、あとは「お金に汚い人」ですかね。お金に欲があるのは悪いことではないですが、経営者になると入ってくるお金を「自分のお金」ではなく「会社のお金」で見ないといけませんよね。

安田

ああ、確かにそうですね。会社のお金を、あたかも自分のお金のように捉えている経営者って多いですもんね。


中辻

ええ。わけのわからない役員報酬の設定をしたりとか(笑)。そういう人は経営者には向いてないと思います。やっぱり謙虚な人がいいんじゃないでしょうか。

安田

でも、謙虚で真面目に働いてくれる人って、社員としては良いけど、経営者としてはちょっと頼りない感じもしませんか? やっぱり経営者には「野心」が必要な気もします。


中辻

確かに、それはそうですね。どんどん儲けたい、偉くなりたいっていうのが野心だとするなら、「あまり儲けすぎたり偉くなりすぎると、責任もついてくるから嫌だな」という人は、経営者には向かないのかも。

安田

責任を負うことを避ける人に経営者は無理、そういうことですか?


中辻

責任がついてくることにプレッシャーを感じてしまう人は難しいかな、と。経営者にとっては「これは当たる」と思ったことをやりきる力が大事だと思うんです。それなのに、「もし失敗したらどうしよう……」と心配して精神をやられちゃう人はちょっと……(笑)。

安田

確かにそんな経営者だったら、誰もついていきたくないですよね(笑)。


中辻

自分を信じて、自分の周りの人も信じて、新しいことにも挑戦して、どんどん新しいことを取り込んでいけるような人が、経営者に向いているんだと私は思いますね。

安田

なるほど。ちなみに中辻さんは、ご自身が社員をされてた頃から「社長は私みたいな人を経営者にしたいんだろうな」って思われていました?


中辻

う〜ん、どうですかね(笑)。少なくとも社長の久保さんにとって私は「有益な社員」ではあるんだろうな、というのは思っていました。入社して3日目くらいで(笑)。

安田

3日目!?


中辻

笑。というのも久保さんって、自分の考えはすごく持っているんですが、いちいち全部話さないんですよね。1を言ったら10まで汲み取ってほしい人というか。

安田

ああ、わかります。というか、経営者ってみんなそう思ってますよね。でも逆に、そんな風に10まで汲み取ってくれる社員はなかなかいません。それを中辻さんは3日目でできていたと。


中辻

笑。できていたというか、「そう思っているんだろうな」と気付いたのが入社3日目で。そこからは久保さんから指示された段階で、どう仕事を進めれば納得・満足してくれるか、というのを自分なりに考えて動くようにしていました。

安田

ということは、社長の頭の中に1から10までの計画があったとして、1と2をやってくれと言われて、そのまま1と2だけをやっているようでは、経営者になれる素質はないということですね。


中辻

だと思います。そして久保さんも、1とか2までしか言わないのに勝手に10まで進めてしまう私の性格を評価してくださったのかなと。

安田

そういえば先日、東京で開催された展示会に、ペイント王としてブースを出店されていましたよね。あの準備も全部、中辻さんがされていたんですよね?


中辻

そうですね。あれも実は久保さんから「今度、東京の展示会に出たいから。ついてきてね」って。それしか言われてないんです(笑)。

安田

ええ?! それしか言われていないのに、あれだけしっかりしたものを準備したんですか? ノベルティで久保さんの着せ替え人形みたいなものも作ってましたよね?


中辻

せっかく出店するからには、なにか爪痕を残したいと思って。他社さんが絶対にやっていないことやってみました(笑)。

安田

当然、久保さんから「これをやってくれ」というような指示はなかったんですよね?


中辻

そうですね。展示会に参加したいと言われて「何を準備したらいいですか?」と聞いた時点で、たぶん久保さん的にアウトなんですよね。久保さんの求めている「中辻麗」像ではない、というか。

安田

それはつまり、展示会で何を得たいのかというところから逆算して、最大の効果を得るためには何をするか、ということを考えられる人でなくてはいけない、と。


中辻
はい、私はそうなんじゃないかなあと思っています。
安田
なるほどなるほど。中辻さんは出世すべくして出世した、ということがよくわかりました(笑)。

中辻

あはは! ありがとうございます(笑)。


対談している二人

中辻 麗(なかつじ うらら)
株式会社MAMENOKI COMPANY 専務取締役

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1989年生まれ、大阪府泉大津市出身。12歳で不良の道を歩み始め、14歳から不登校になり15歳で長女を妊娠、出産。17歳で離婚しシングルマザーになる。2017年、株式会社ペイント王入社。チラシデザイン・広告の知識を活かして広告部門全般のディレクションを担当し、入社半年で広告効果を5倍に。その実績が認められ、2018年に広告(ポスティング)会社 (株)マメノキカンパニー設立に伴い専務取締役に就任。現在は【日本イチ高いポスティング代行サービス】のキャッチコピーで日本ポスティングセンターを運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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