第21回 住宅業界に足りないのは「売り方を考える人材」

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第21回 住宅業界に足りないのは「売り方を考える人材」

安田
いろいろな業界の社長と話していると、ある業界では当たり前なのに別の業界では全く考えられていない、ということがよくありますよね。それが人材の質にも言えると思っていて。

渡邉
ああ、なるほど。確かに業界によって偏りがありますもんね。
安田
渡邉さんは住宅建築業界にすごく詳しいじゃないですか。住宅建築業界の人材も客観的に見たらけっこう偏ってるように思うんですが……

渡邉

安田さんもご存知だと思うんですけど、住宅建築業界はそもそも大変な人手不足で。営業も職人も施工管理も事務員も……あらゆる部署の人員が足りない。それも昨日今日始まったものではなくて、慢性的にずっと足りていない状態なんですね。

安田
確かに、人手不足が叫ばれる数多の業界の中でも、特に深刻な業界のひとつですよね。あらゆる部署で足りない……と仰いましたが、中でも一番足りていないのはどの部署なんですか。

渡邉
一番となると施工管理と職人、要するに現場ですよね。営業も足りてはいませんが、採用難易度は意外と低いんです。リフォームや新築のマーケットってニーズが顕在化しているので、そこまでの営業力は求められないので。
安田
なるほど。経験やセンスより、何となく人当たりがいいとか、お客さんに愛される雰囲気さえあれば、ある程度成果は出すと。

渡邉
仰るとおりです。そういう意味では現場に比べたら全然採れると思います。他の部署で言えば、実は商品企画などの企画系も足りてません。こういった職種の場合、足りていないことに社長さん自身が気づいていないケースも多いですけど。
安田
社長が気づかないって……住宅なんて商品開発力が全てのような気がしますけど。

渡邉
そうなんですよ。なのにそこが弱い、下手すると弱いことにも気づいていないと。フランチャイズに入る工務店さんが多いのはその辺が理由かなと。
安田
ああ、なるほど。自分が売る商品を自分で作らないわけですね。

渡邉
作らないというより、作れないんです。工務店さんの経営者ってあんまり企画側にいた経験がないので、そういう発想がそもそもないことが多いんですよ。逆に言えば、バリバリ現場でやっていた人が経営者になるパターンは多いので、もの作り自体は得意ですよね。
安田
ああ、確かにそういうイメージはありますね。大工さん出身だったり。
渡邉
そうそう。あとは現場監督をやっていた方も多いですね。でも、リフォーム業界になるとまたちょっと違ってきます。
安田
ほう。どう違うんですか?

渡邉
リフォームって、500万円未満の工事は建築業許可が要らないんですね。つまり営業力と人脈さえあれば、現場の知識がなくても立ち上げられてしまうわけです。
安田

そうなんですか! じゃあ商品を売ることができて、工事の下請けをしてくれるところが見つかればリフォーム業者になれてしまうと。


渡邉
そうなんです。だからリフォーム業界には自然と営業系の方が集まってきますよね。
安田

ふむふむ。つまり、建築が好きでやっている人ばかりではないってことですか。ある程度ニーズが顕在化していて、かつ単価の高い業界を探して、それがたまたまリフォーム業界だっただけ、というような。


渡邉
そっちの方が多いように思います。本当に建築が好きでやっている人なんてほとんどいないかもしれない。
安田

へぇ。じゃあそういった方たちは、儲かる事業があれば他の事業に鞍替えしてもいいって感じなんですか。

渡邉
そういう方がほとんどだと思いますね。
安田
なるほど。でも、そういう柔軟な人の方がむしろ商品開発は得意そうですけどね。「他のリフォーム会社がやってない儲かる商品はないだろうか」ってどんどん考えればいいわけで。

渡邉
仰っている意味はわかるんです。でもリフォーム事業って、商品開発が必要な商品、つまり今までなかったような商品はあまり儲からないんですよ。こだわり系のリフォーム商品やリノベーション商品にチャレンジする会社もなくはないんですが、なかなかうまくいっていない。
安田
へぇ、なんでうまくいかないんですかね?

渡邉
独自の商品にすると、それだけ手間がかかるし、事故率も高くなる。何よりそういう珍しいものに魅力を感じるお客さん自体が少ないんですよ。結局、キッチンの取り替えとかLDKを全体的に綺麗にする、というような定番商品が一番儲かるんです。
安田
なるほど。単に取り替えたり綺麗にしたりするだけで儲かると。確かにそれならわざわざ商品開発はしませんよね。ちなみにリフォームじゃなく新築でも同じなんですか?

渡邉
ああ、それはまた話が違います。新築をやってる工務店さんには設計が大好きな人も多いですよ。とはいえ安田さんが言うような商品開発のレベル、つまりコンセプトがしっかりあって、かつ売れる仕組みもできているようなものを生み出せる人はほとんどいなくて。
安田
そうすると新築業界って注文住宅が多いんですか。自分たちから「こんな家はどうですか」と提案できないから、お客さんの要望に応える形でやっていくという。

渡邉
そういう会社も多いですよね。でもそのやり方だと、年間でもそんなに数を受けられない。結果、あまり大きな会社にならないわけです。じゃあ大きな会社、つまり儲かっている会社がどうやっているかというと、コンセプトのある看板商品でグッと惹きつけて、その上でセミオーダーのようにしているところが多い。
安田

ああ、なるほど。でも結局、そのコンセプトのある魅力的な看板商品が作れるかどうか、ってことですよね。会社を大きくしようと思ったら、商品力強化に行くしかないんじゃないですか。

渡邉
それは仰る通りで。でも先ほど言ったように商品開発力を持っている人はほとんどいない。話が堂々巡りなんです。結局、新築だとフランチャイズに入って商品の資料やツールをもらったり、売り方や見せ方を教わるしかない、という状況なわけです。
安田

なるほど。逆に言えば、商品開発力のある人を外から連れてきたらいいんじゃないですか? 商品開発のプロ人材を。

渡邉
そうなんですけど……商品開発が得意なプロ人材はそれなりにいるんですが、「住宅関係の商品開発をやってきた人」となるとかなり希少なんですよ。
安田
そうか。住宅で商品開発というと「家を作る」わけですもんね。いろいろな経験や知識が必要になる。そういうプロ人材はなかなか見つからないと。
渡邉

まさにその通りです。だから個人的には、商品開発自体はフランチャイズで解決すればいいと思っています。つまりお金で看板商品を買うということですね。で、その先のマーケティングとかブランディングとか広報とか、そういうところにプロ人材を活用するのがオススメです。

安田
ああ、つまり商品自体を考えるプロではなく、商品の見せ方を考えたり工夫したりするプロたち、ってことですね。
渡邉
ええ。そういうことです。見せ方が変われば営業対象も広告を掲載するメディアも全部変わるので、かなり結果が変わってくると思いますよ。

 


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

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1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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