属人化という言葉があります。
「この仕事はあの人じゃなきゃわからない」とか
「ある人が辞めてしまったら他にできる人がいない」などの
会社組織からみて望ましくない状態について、
一般に悪いニュアンスで使われる言い方です。
しかし実際、どこかで働いてみると
業務なんてものは誰かが何かを担当しているわけで、
担当があるということは
とくに詳しい人とそれ以外の人がいるということでもあります。
担当が個人ではなく部署やグループだったとしても、
そこで知識や経験が均等に行き渡っていることなどはありえず、
「〇〇は××さんに聞くのが一番良い」ということだけが
誰もが共通して認識しているナレッジであったりします。
個人的に、わたくしが肌身で知っているのは中小企業でして、
中小というのはもう
「属人」という六角形の小箱が集まってできているハチの巣のような世界ですが、
優秀な人が多いといわれる大手企業であっても
知る限りにおいては多かれ少なかれ、
属人的な要素をシステマティックに排除できているとはいえないように思います。
どんな業務にも流れは存在し、具体的で個別の情報が組織の末端、
担当という「個人」に行きつくことに変わりはなく、
それは企業の規模によらないものだからです。
たとえば、大量の担当者が並列にならんで同一の処理にあたる形状の組織であれば
システム化、マニュアル、標準化といった
「仕組み」を続々と構築できるわけですが、
組織の形のために会社があるわけではないので
もともとしやすいところとそうでないところがあるといわざるを得ません。
しかし、そうでない会社であっても弊害が目立つため、
脱・属人への志向はあらゆる企業で共通しているように思われます。
しかし、そこで唐突ながら、わたくしは思い出すことがあるのです。
それは「乳酸」についてです。
ご存じの方も多いかと存じますが、
ずいぶん長いこといわれてきた常識として
運動をしたときに体内に生じる「乳酸」は疲労の原因といわれてきましたが、
近年の研究で、乳酸の値が疲労のプロセスに連動して高まるのはたしかだけれど
「原因」という点からは否定されつつある、という話です。
それと同じで、
属人化はよろしくない、ということは明らかでも、
それは属人化を敵視したり取り除こうとすることで解決できるのか、
という素朴な疑問を抱かずにはいられないのです。