第27回 万代流「値付けの極意」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第27回 万代流「値付けの極意」

安田

以前、万代さんでは「プロが楽しめるセミプロショップ」にするために、あえて値付けを甘くすることがあると伺いました。経営において値付けってすごく重要だと思うんですが、それをあえて甘くする判断ができるのがすごいなぁと。


倉橋

「価格設定こそが社長の仕事」だと言われますからね。僕自身も値付けについてはすごく研究しています。

安田

研究しているからこそ、時には意図的に「甘い」値付けをすると。実際倉橋さんは「適正価格」をどうやって決めているんですか?


倉橋
「商品価値公式」という考え方があるんです。「品質」と「(顧客にとっての)利潤」を足したものを「価格」で割ると、その「商品の価値」がわかるというもので。つまり「価格」を上げたければ、「品質」と「利潤」を高めればいいわけです。
安田

ふーむ、なるほど。分母の「価格」を大きくしても「商品価値」が小さくならないようにするには、分子となる「品質」と「利潤」も大きくすればいいと。


倉橋
仰るとおりです。とはいえリユース商材は、仕入れた商品の品質は変えられない。だからその分「お客さんのお得感や嬉しい気持ち」を高めるわけです。そこには店舗の環境整備や接客もすごく関係してくる。
安田
ということは、「適正価格を見つける」のではなく、「いかに価格を高く設定できるかに注力する」という方向なんですかね。それが「値付けの極意」だと。

倉橋
確かにそれが、僕の会社運営のテーマとも言えるかもしれません。
安田

ふ〜む、なるほど。とはいえ世の中全体を見ると、「値段を上げられない経営者」がものすごく多いですよね。


倉橋

ああ、最近も卵業者さんが悲鳴を上げているというニュースがありましたね。

安田
そうなんですよ。私も実際卵業者さんから相談を受けたんですけど、本当にどう頑張っても高く売れないんだと。個人的には、今の倍くらいの値段でも安いくらいじゃないかと思っているんですけどね。

倉橋

値上げできない背景には、先ほどの「商品価値の構成比」を動かせなくなっているということがあるんだと思います。特にここ30年のデフレで、値下げをすることで大きくなった会社は難しいでしょうね。

安田

それは方向性を変えることが難しいということですか? 例えばサイゼリヤって低価格なのに美味しいと評判ですよね。美味しいならもっと高くしてもお客さんは来そうな気がするんですけど、そうはしない。


倉橋
サイゼリヤさんは「品質を上げながらも値上げしない」というのが今までの成功パターンだったんです。それが強すぎて、実際今も成功し続けているからこそ、変えるモチベーションはわきづらい。客側からしても「サイゼリヤ=安い」というイメージがあるから、急に高くなったら行かなくなっちゃうんじゃないかなぁ。
安田
確かにそうか。その一方で、値上げがうまい企業もありますよね。

倉橋
そうですね。僕がよく行く立ち食い蕎麦屋さんなんかは、毎月必ずと言っていいほど値上げしているんです。卵1個ですら100円から110円になっていたりして。
安田

へぇ。まぁ10円くらいなら「別にいいか」と思いますもんね。でもメディアでは口を揃えて「少しでも値上げしたらお客さんが減る」と言っているので、皆値上げが怖くなってしまうんですよね。


倉橋
逆に考えたら、大手も含めてどこも値上げに躊躇している中で、しっかり品質やお得感を高めつつ価格を上げていけば、売上はちゃんと増えていく。そういう意味では今って中小企業にとってのチャンスですよね。
安田

確かにそうですね。ちなみに「品質」と「お得感」だとどちらを上げるのがおすすめですか?


倉橋
お得感を上げる方が、圧倒的に価格に転嫁しやすいと思います。品質はある程度の高さまでいくとそんなに変えられないので。
安田
なるほどなぁ。そこでお店を綺麗にしたり、気持ちのいい接客をしたりというのが大事になってくると。いやぁ、面白いですね。

 


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に18店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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