庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第22回 石のはじまりから終わりまで
ええ、安田さんの石好きはよく存じています(笑)。
「大谷石(おおやいし)」という種類が特に好きなんです。栃木にかなり大きな採掘場があって、資料館もあるそうなんです。いつかぜひ行ってみたくて。
そうなんです。私の住んでいる中央区に「築地本願寺」という有名なお寺があるんですが、そこにも大谷石が使われていて。近くを通るたびに眺めては、「いいなぁ」と思っています。中島さんもお庭によく石を使われていますが、どんな風に選んでいるんですか?
いろいろなケースがありますが、建物の色に合わせて選ぶことが多いですね。例えば私の自宅はグレーに近い色なので、石もそれに合わせてグレーに統一しています。
多いです。ただそれは和の石にこだわっているというより、なるべく現場に近い場所にある石を使うからなんです。石は輸送にコストがかかるので。
そのままの形で使う場合は、国内のものを使うことが多いですね。石垣を作る場合も、色のバランスを見ながらなるべく近場にある石から選ぶようにしています。
ああ、中島さんがよく作られる「自然の石を組んで作る石垣」ですね。
へぇ。それはどうしてなんですか?
加工費が海外の方が安く、色も豊富だからです。以前は韓国からの輸入が多かったんですが、費用的な理由から今は中国が中心ですね。最近は中国のものも高くなってきてしまいましたけれど。
中国も人件費が上がってますもんね。場合によっては日本よりも高かったり。
そうですね。さらに最近は、国内で採れる石も海外から持ってくることが増えてきました。鉄平石はまだ日本でも採れますが、全体的にはインドやベトナムなど海外で採れたものの方が多くなっています。
さすが詳しいですね(笑)。御影石は中国産の方が硬度があって艶が長持ちするんですが、今は中国のものが高くなってしまったのでベトナムが中心になっています。インドの方だと黒御影石がこれから増えてくると思います。
そうですね。僕個人としてはシャープな石が好きなので、細長く加工された石をよく使います。大きさ的には15cm×1.8mくらいが多いですね。
へぇ。そういうイメージに合う石はいつもどこから見つけてくるんですか?
うーん、どうでしょう(笑)。買えないことはない気がしますが、一般の方が買いに来ているのを見たことがなくて……
まぁ、一般の人はなかなか石を買わないでしょうからね(笑)。ちなみに不要になった石はそういうところで買い取ってもらえたりするんですか?
へぇ! おもしろい。そうしてどんどん小さく割っていって、処分場に持っていくと。それにしても、「石の処分場」なんてものがあるんですね。
そうか。だからなるべく近くにある石を使うようにするわけですね。産地から処分場まで、一口に石と言っても奥が深いですね。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。