この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
安田
職探しをしている65歳以上のシニアが25万人もいるそうで。ニュースになってました。
久野
この10年で2.2倍に増えたみたいです。2倍ってすごいですよ。
安田
今まで「引退できていた人」が「働かなくちゃいけない人」になったってことですね。経済的な問題なのか、寿命が長くなって退屈だから働くのか。
久野
両方あるんじゃないですか。年金だけだと厳しいって声は聞きますし、生き甲斐のために働く人も増えてます。
安田
そもそも年金だけで「老後の生活を補う」という考えは正しいんですか。
久野
現実問題として、年金だけだと持ち家とかがない人は厳しいと思います。キャッシュアウトに耐えられないです。
安田
久野
現役時代と同じ生活レベルを維持していくのは厳しいと感じます。何歳まで生きるかわからない時代なので不安で貯金も取り崩せなかったり。
安田
貯蓄だけで生きていくには相当貯めないと無理ですよ。2000万どこじゃなくて。
久野
安田
昭和の初め頃までは自営業者が多かったので、結構な年齢になってもみんな働き続けていましたよね。いつから「定年後は年金で生きていける」となったんですか。
久野
高度成長期の後ぐらいからでしょうね。退職金と年金で生きていける人が増えていって。みんな安心していたんですけど。
安田
久野
そうですね。だから職探しをするシニアがこんなに増えたんでしょう。
安田
この10年で2倍になったという話ですけど、まだまだ少ない気がします。少なくとも70ぐらいまではみんな働かないと。逆になぜ働かないんでしょう。
久野
安田さんは特殊な仕事なので分からないと思いますけど、普通の人は仕事が突然なくなるんですよ。
安田
久野
仕事は「取りに行くもの」ではなく、会社に行けば「そこにあるもの」なんです。だから会社に属さなくなったらもう仕事がない。
安田
なるほど。働きたくないわけじゃなく「やるべき仕事がなくなっちゃう」ってことですね。
久野
安田
確かにそうですね。定年になると「はい、今日で終了です」となるわけで。
久野
安田
だから就職活動するシニアがこの10年で2倍になったわけですね。働きたい人がみんな働けているとは限らないですもんね。
久野
65歳を過ぎて仕事があるって恵まれているんですよ。
安田
国としては「70歳まで雇い続けろ」と言うほかないですよね。もしくは自分で稼いでいけるスキルを身に付けてもらうか。
久野
そうです。だから政府も「70歳まで継続雇用する努力をしてくれ」と全企業に言っているわけで。ただ強制はできないから「業務委託もありだよね」って言い出した。
安田
今後はどうですか?企業に強制するようになるんですか。
久野
たぶんどこかで「70歳まで継続雇用」ってことになるでしょうね。そうしないと日本人は働けないから。
安田
60歳まで会社勤めしかしたことがない人に自営業は厳しいですよね。
久野
安田
そうですよね。販売力がある人だったらいいんでしょうけど。言われた通りの作業だけをやってきた人には厳しい。
久野
プライドも捨てなきゃいけないし。大企業の社員だと会社の名前で営業してますから。
安田
シニアの人たちはもう営業現場はやってないだろうし。
久野
よく面接で「君は何ができるんだ?」「課長です」みたいな笑い話があるじゃないですか。
安田
久野
安田
やっぱり収入を減らしてでも継続雇用してもらうしかないかも。
久野
働きたいと思っているシニアはたくさんいるんですけど。やりたい仕事とか納得できる待遇とかがないんでしょう。
安田
「なぜ自分がこんな仕事をしなくちゃいけないんだ」ってなるんでしょうね。
久野
割り切って働けばシニアでも3〜400万ぐらいは稼げると思います。気力と体力があれば全然大丈夫なんですけど。
安田
夫婦で働けば5〜600万あるわけじゃないですか。そこそこ豊かな老後が過ごせそう。お金もそんなに使わないだろうし。
久野
仕事を選んでいるから働けないんだと思います。「60過ぎてんだから仕事を選ぶなよ」って言いますけど、60過ぎてるから仕事を選ぶんですよ。
安田
確かに。終の仕事だからこそ選びたいですよね。能力のあるシニアもたくさんいますから。
久野
「シニアは安い」というイメージが出来てるから、能力があっても企業とマッチングしないんです。若い子みたいに辞めないし、スキルの高いシニアはすごく狙い目なんですけど。
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安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。