庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第29回 予算の2倍のプランを提案しても依頼される理由
大手ハウスメーカーで家を建てて、お庭を作る段階でdirect nagomiさんに依頼するという方もけっこういらっしゃるとお聞きしました。
そうですね。そういうケースもあります。
こちらのお客様も、ハウスメーカーが提案してきたお庭がイメージと違っていて、それで中島さんにご依頼されたんですよね。
ああ、direct nagomiさんはお庭だけじゃなく外構も得意ですもんね。他にはどんなケースがありました?
茶室のあるお宅からご依頼いただいたことがありますね。こちらもハウスメーカーさんからのご提案に満足いかなかったとのことで。
ええ、仰るとおりです。
で、中島さんはどんな提案をされたんですか?
ははぁ、これはまたすごいお庭ですね! 芝生をただ敷くだけよりずっと素敵です。でも、茶室とバラ園って、ちょっとアンマッチな気もするんですが……
実はこの庭は、表と裏があるんです。表、つまり茶室から見える面は、雰囲気に合わせて日本庭園風になっています。そして裏側、外から見える面がバラ園になっていて。
なるほど! 茶室からはバラ園は見えず、枯山水のある風情のあるお庭が見えるわけですね。すごい設計です! でもこの話、もともと予算に課題があったわけですよね。芝生を埋めるだけの庭より、よっぽどお金がかかっちゃいそうですけど……
そうですね……最終的に3000万円を少し超えるくらいでした。もともとのご予算も1500万円と決して少なくはなかったんですが、敷地全体で350坪くらいあるお宅だったので、工事も大規模になりまして。
へえ! そんなに広いお宅だったんですか。実物を見たらさぞ壮観なんでしょうね。
ええ、個人的にもすごく気に入っているお庭ですね。
予算内に収める提案ができることも大事なんですけどね。でも私は、まずはお客さんのご要望やイメージを最大限実現することが重要だと思っています。それをイメージ図に起こしてお見せすることで、お客様の気が変わることも多々あるので。
そうですよね。逆に言えば、そのイメージ図を見て「なんかイメージと違う」ということもわかるわけで。
なるほどなぁ。確かに、「ないもの」をイメージするのは難しいけれど、「あるもの」をジャッジすることはできますもんね。もしイメージと違っていても、どこがどう違うのか指摘しやすくなる。
仰るとおりです。さらに言えば、お客様のご要望をそのまま具現化するんじゃなく、プロとして「こうした方がよりイメージに近づきますよ」というプラスアルファのご提案をするようにもしています。
ははぁ、なるほど。ただ指示通り作るわけではなく、プロならではのアレンジを加えると。だからこそお客さんにとってドンピシャな庭が作れるわけですね。
ええ。そういうことです。
それにしても、ハウスメーカーはあまりお庭のことを重視していないんですかね。「ハウスメーカー=家を建てる会社」ということなんでしょうか。
うーん、会社さんによってスタンスは様々だと思いますが、「お庭」というよりは「外構」という意識が強いのかもしれません。例えば門まわりを作り込むメーカーさんはたくさんありますが、その門まわりもまた「庭の一部」という意識は持ってないのかもしれない。
ああ、なるほど、すごくわかりやすい説明です。そういう意味では、中島さんは常に「建物も外構も含めた全体」を意識しながら庭のデザインをされていますもんね。もっと言えば、敷地の外の風景や街並みの雰囲気までを考えて作られている。
そうですね。「自然の景色を取り入れた庭」というのが我々の一つのテーマですので。
いや、素晴らしいです。きっと簡単には真似できないんだろうなぁ。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。