第51回 「家付き求人」が採用難を救う

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第51回 「家付き求人」が採用難を救う

安田
今年もそろそろ学生の就職活動が本格化してきました。のうひ葬祭さんの採用活動はいかがですか?

鈴木
ウチもちょうど先月から始めました。今はまだ学生さんたちを集めているところですけど。
安田
のうひ葬祭さんでは新卒採用しかしていないんでしたっけ?

鈴木
今のところはそうですね。入社後の定着率とかを考えると、やっぱり新卒がいいかなと。
安田
鈴木さん、実は今、だいぶ時代は変わっていて、中途採用した人のほうが長く働いてくれることが多いらしいですよ!

鈴木
え、そうなんですか?
安田
確かに私も以前は「定着率アップのためには新卒を採用しましょう」と提案していました。なんだかんだで新卒の7割は定着していたので。

鈴木
そうですよね。中途の方というのは、当然ながら1度辞めた経験があるんで、またすぐに辞めちゃうんじゃないかという不安が拭えないんですよ。
安田
わかります(笑)。ただ今の学生たちは、社会人としてのイロハを教えてもらうのに適した会社を「新卒1社目の会社」として選ぶんだそうです。要は、社会人としての最低限のスキルを、給料をもらいながら身につけさせてもらうと。それが1つのキャリアパスになっているんですね。

鈴木
へぇ、そうなんですか。それは知らなかった。じゃあ、最初に入社した会社をステップにして、次の会社に転職するわけですか。
安田
そうなんですって。そう考えると、2社目は中長期で働けそうな会社を選ぼうという人が多いんでしょうね。

鈴木
ああ、なるほど。1社目である程度社会人経験を積んでいるからこそ、今後の人生設計をしっかりと考えた転職活動ができて、結果的に定着率もアップすると。
安田
仰る通りです。だから新卒採用にこだわりすぎず、いわゆる「第二新卒」とかもうちょっと上の世代…例えば結婚して家族がいるような方たちを狙うのもアリなんじゃないかなと思っています。

鈴木
ほぉ。それは考えたことがなかったですね。あ、そうすると安田さんが前回仰っていた「家とセットの求人」に魅力を感じてくれる人も増えそうですね!
安田
そうなんですよ! お子さんがいる方にとっては、働き口もあって一軒家もついてくるなんてかなり良い条件だと思ってもらえるのかなと。

鈴木

確かに。新卒だとさすがに一軒家には住みたがらないでしょうけど(笑)、そもそもの採用ターゲットを変えることで、「家付き求人」の良さが引き立ちますね。

安田
ええ。だってこれからどんどん採用は難しくなると言われているんですから。ちなみに鈴木さんは、たとえば今より採用が10倍も難しくなったら、どんな戦略で打って出ますか?

鈴木
うーん、どうしましょうか…(笑)。でも今までのお話からも思いますが、新卒採用だけにこだわることはしないかな。というか今、初任給もどんどん上がっていますよね。
安田
そうですね。初任給30万円時代なんて、あっという間にくると言われています。

鈴木
ちょうど先日、銀行にお勤めの方とそういう話になりまして。新卒の初任給が上がったとして、じゃあその原資はどこからもってくるの? と聞いたら、ある一定の年齢になった社員の給料を下げて、それを新卒の分に充てるんだ、と。
安田
いわゆる「役職定年」ですね。50歳とか55歳になると、それまで支給されていた「役職手当」がもらえなくなる。そうすると額面上の金額はドンっと下がるんですよ。

鈴木
それまで課長とか部長だった人が、突然「来週から平社員です。給料も下がります」となるわけでしょ? そうしないと組織が成り立たないというのはわかりますが、なかなかひどい話ですよ。昔は定年まで給料は右肩上がりだったのに。
安田
そうですねぇ。でもある意味、理にかなっているのかなとも思っていて。会社への貢献度という観点で考えれば、入社から徐々に上がっていって、一番仕事ができる40代くらいがピークで、その後はなだらかに下がっていくじゃないですか。

鈴木
確かにそうですね。脂が乗ってバリバリ働いている30代40代より、もうそろそろ引退する60歳手前の人の方が高給って、よくよく考えてみたら変なシステムだったのかも(笑)。
安田
笑。とはいえ、50代60代になったからといって、仕事が全くできないわけではない。若い頃のようにバリバリ働くことは難しいかもしれないけれど、年月を重ねたからこそ得られた知識量や経験値は、若者の比ではないと思っていて。

鈴木
ああ、だからそういう人たちも採用ターゲットに設定するのも良いのかもしれないですね。
安田
そうそう、まさにそうです! シニア層って今は本当に狙い目なんですよ。大企業はあえてシニアを採用しようとはしないので、意外と良い人材がマーケットに溢れているんです。

鈴木
しかも今の流れだと、新卒の初任給よりも安い給与で採用できそうですね。ウチの会社だと力仕事はないので、シニアの方でも全く問題なさそうだなぁ。
安田
ええ、良いと思いますよ。そういうシニア層には「庭付き物件」を紹介してあげるのはどうでしょう?

鈴木
いいですねぇ! 「仕事もしながら、家庭菜園もできますよ」って謳い文句で(笑)。
安田
最高ですね(笑)。美濃加茂にもまだそういう空き家はありそうですか?

鈴木
安田
シニア層って、別に現役のときのようにがむしゃらに働きたいと考えている人は少ないと思うんです。だから例えば週4日だけ働いて、残り3日はDIYしたり畑仕事したり趣味に費やしたりする。そういう働き方でもいいんですよ。

鈴木
確かにそうですね。適度に稼ぎつつ、快適な田舎暮らしをしたい方にはいいかもしれないです。
安田
ですよね? 来る採用難の時代を乗り切るためにも、この「家付き求人」はなかなか良いアイディアだと思っているので。鈴木さん、ぜひやってくださいね!(笑)

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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