2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
第294回「在宅リモートが生み出す人材の流れ」
在宅リモートワークが減って出社が増えているみたいですね。
同じリモートでもリモートワークスペースに出社して、とか。
わざわざ出社してリモート?
顧客に対してはリモートの方が効率はいいわけですよ。移動もなくなるし。
だったら在宅でいいような気もしますけど。アメリカでは「出社しろ」と言った途端に転職しちゃうらしいですよ。
大半の日本人は言われたら戻ります。業務命令だから。ただし転職のきっかけにはなる。
やっぱりそうですよね。
ハローワークで言われたんですけど在宅勤務の問い合わせがすごく多いそうです。「週2日でもいいから在宅勤務できる求人はないですか」って。
週2日でもいいんですね。
いいんですよ。要するに週3は会社に行ってもいい。週2在宅リモートだと家事や育児がすごくうまく回るんですって。
今はみんな共働きですしね。
そう。だからお互いが週2、週3だったらうまく回るわけです。
だけど企業としては週5出社を求めていると。
そうなんですよ。朝から夕方まで会社にいなさいと。
来てくれないとマネジメントできないってことでしょうか。
結局そこなんですよ。対面じゃないと伝わらないとか、対面じゃないとニュアンスがわからないとか。もう完全に組織マネジメントと評価の問題ですね。
マネジメント以外はリモートでも回るんでしょうか。
仕事ができる人ほど余裕で回ります。むしろ在宅の方が効率よくできる。
だったら優秀な人は出社させなくていいじゃないですか。
在宅だと間が持たないって人が多いわけですよ。「やってる感」だけ出している仕事がいかに多いかってことです。
そういう人たちのための出社ってことですか。
そうですよ。これって人手不足を鏡で写しているような気がします。そんなにお宅は人手不足なの?本当のところどうなの?って。
人が足りないと言いつつ、じつは無駄なことをいっぱいやらせていると。
一体誰のための何のためにやる仕事なのか。それをもう一度考えた方がいい。
無駄なことをやらせなければ仕事はちゃんと回ると。
規模が大きな会社ほどそうです。「やってる感」を出してる率が高いから。本当に人が足りないのは現場だけですよ。
現場以外は逆に余っているかもしれませんね。
ホワイトカラーは間違いなくAIに取って代わられます。だってこんなに要らないもん。
要らないんですか。
必要ないってことがコロナの時にわかっちゃったんですよ。大企業の経営層が気付いちゃった。「こんなに人は要らんな」と。
それでこんなにリストラが増えてるわけですね。
「もう早く辞めさせろよ」「45歳以上の人間はほとんど何もしてないだろう」って。
中小企業は人が足りなくて困ってるのに。
中小は本当に人が足りない。
大手で余ってる人材を採るのはどうなんですか?
ちゃんと機能する人材を採ればいいんだけど。中小企業はそもそも採用が下手なので。
そんなに下手ですか。
ものすごく下手ですね。人不足なのに要らない人材ばかり採って。余計に現場が回らなくなってる。
人不足だから採っちゃうんでしょうね。どうしたらいいんでしょう。
中小企業は週2日でもいいから在宅リモートを取り入れた方がいいと思います。とくに価値を生み出す仕事はどんどんリモート化していく。
在宅で回せない現場の仕事はどうしたらいいんですか。
いつも言っているように丁寧な求人を作っていくしかないですね。応募者を増やそうとするのではなく絞り込んでいく。
やっぱりそれしかないですよね。
10年以内にはホワイトカラーからブルーカラーへの労働力の移動が必ず起こります。そこまでは丁寧に求人していくしかない。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。