「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。
第17回 トゥモローゲートが「ケータリング事業」を始める理由
最近トゥモローゲートさん、オフィスを増床されたじゃないですか。今日はその件についてお聞きしたいんですけど。
ああ、ぜひぜひ。
増床前に私もオフィスに伺いましたけど、社員数から考えれば、あの時点ですごく広かったじゃないですか。でも今回、あれと同じ広さをもう1フロア借りたわけでしょう? こんなことを言うのもあれですけど、さすがに広すぎやしませんか?(笑)
笑。確かにそうですね。現時点では広すぎます(笑)。
でしょう? なのになんで増床なんてしちゃったんですか(笑)。
いや、でも、もともとのオフィスのキャパが60人くらいで、いまスタッフが50人くらいになっているので、そんなに早すぎるわけでもないんですよ。
ああ、そうなんですか。私が行ったときは、「広々したオフィスでいいなぁ」と思ったものですけど。
ありがとうございます。確かに現時点ではまだ大丈夫なんですけど、僕たちの場合、物件探して内装工事して移転して、ってやっていると1年がかりなんですね。1年後となると多分キャパオーバーになるだろうなということで。
なるほど。人を増やしていく前提で増床されたと。…でも、以前聞いたときはオフィスじゃなくてキッチンを作るって仰ってませんでした?
ええ、キッチンメインで作ってます。でも1フロア全部がキッチンというわけじゃなくて、ワークスペースもちゃんとあって。
なるほど、そういうことなんですね。ちなみにフロアを増やすことで何かビジネスモデルが変わったりもするんですか?
ええ。それで言うとケータリングの事業を本格的に始めましたね。
ケータリングということは、食事を作ってどこかに持っていくということですよね。どうしてそのような事業を? ブランディング事業とはだいぶかけ離れている気がするんですが。
意外とそうでもなくて。というのも、企業のミッションやビジョンが新たに完成したときって、だいたい全社の発表会イベントが行われるんですね。
ああ、はいはい。「新しいミッションはこれです!」みたいなね。
そうですそうです。今までもそういう会に招待いただいたりすることが多くて。で、その発表会で出すお料理をウチで担当させてもらったらどうだろう、って考えたんです。
ほう、それはまたどうして? 別に普通のケータリングでいい気もするんですけれど。
安田さんにオフィスにお越しいただいた時、「境目研究家」をイメージした食事をシェフが作ったのを覚えてらっしゃいますか? ああいう感じで、完成したミッションやビジョンを体現するものを作っていくんです。
なるほど! つまりブランディングの内容に合ったオリジナルの料理を出すわけですね。確かにそれは他の会社さんじゃできないですね。…とはいえ、シェフさん一人でケータリング全部やるのは厳しくないですか?
確かに、暇ではないですね(笑)。でも既存社員が2~3人サポートに入るので、なんとかなるかなと。
ちなみに発表会イベント的なものだと、何名分くらいになるんです?
40~50名分くらいですかね。
ははぁ、それをシェフと2~3名の社員だけで回すと。大丈夫ですか、そんなブラックな働き方をさせて(笑)。
笑。大丈夫です。というか、そもそそもこの事業自体、本人たちから提案してきたものなんです。
へえ! そうなんですか。現場の人はこういう仕事やりたがらないのかな、なんて思いましたが。
いやむしろやりたがりますね。というのも、この事業もちゃんと売上がつくんですよ。頑張っただけ本人の評価になる。
ははぁ、なるほど。それは確かにやる気が出るでしょうね。ちなみに単価はどれくらいなんですか?
1人6000円からで、飲み物は別ですね。一般的なケータリングに比べたら多少割高かもしれません。
まぁでも、普通の料理じゃないですもんね。一回きりのオーダーメイドなわけで、そう考えればむしろ安いくらいです。
ありがとうございます。実際、なかなか手がかかっているので。
そうですよね。ちなみにこれまではどんな料理を提供されたんですか?
例えば、先日はあるお米屋さんのケータリングを担当させてもらったんですが、創業当時からの歴史を、お米を使ってあれこれ表現して。
ははぁ、なるほど。やっぱり現場でシェフが説明をするわけですか?
口頭でもしますし、メニュー1つ1つに説明書がついていて。ここが創業時の大変だった時期を表しています、みたいな。
へぇ~、すごい。社長とか古株の社員さんなんかは嬉しいだろうなぁ。
すごく喜んでくれますね。どこにでもある普通の料理ではないので。
なるほどねぇ。それを今回増床したキッチンで作るわけですね。でも、ケータリングで使うだけだとちょっともったいないような。
もちろん他の使い方もしますよ。いま始めているのは、経営者さんを招いてのランチですね。1日5人限定なんですけど、1200円でうちのシェフが作ったランチを食べてもらうという。
へえ、それは近所の経営者さんたちが来るんですか? 大阪近辺の。
いや、東京からとか、全然遠方からいらっしゃいますよ。
なんと! そうなんですね。それはどういうモチベーションで来られるんです? 話題のシェフさんの料理を食べたいってことなんですかね。
それもありますし、あとはうちのオフィスを見てみたいとか。
ああ、なるほど。社内見学を兼ねているわけだ。…でもそれ、トゥモローゲートさん的にはどんな旨味があるんですか?
端的に言えば、リード獲得ですよね。経営者さんと直接商談ができるので。
そうだと思いました(笑)。でも実際、来社型の営業は効率いいんですよね。私も昔よくやってましたけど。
そうなんです。今後はそっちに舵を切って、いわゆるテレアポは完全にやめようと思ってるんです。こっちから追いかけるんじゃなく、来てもらう営業にしていこうかなと。
なるほど。いいと思います。美味しいご飯を食べながらなら、契約も取りやすそうですしね(笑)。
対談している二人
西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社 代表取締役 最高経営責任者
1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数18万人とSNSでの発信も積極的に展開している。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。