第50回 人工油と人工糖まみれの食生活?

この対談について

健康人生塾の塾長にしてホリスティックニュートリション(総括的栄養学)研究家の久保さんと、「健康とは何か」を深堀りしていく対談企画。「健康と不健康は何が違うのか」「人間は不健康では幸せになれないのか」など、様々な角度から「健康」を考えます。

第50回 人工油と人工糖まみれの食生活?

安田
以前の対談で、久保さんが「旨さは砂糖と油でコントロールされている」というようなことを仰っていて。あれ以来、普段の生活でも気にかけていたんです。そうしたら、確かに街なかで「美味しそうだな」と惹かれるニオイって、だいたいが油のニオイでした(笑)。

久保
ハンバーガーとか焼き肉とかうなぎの蒲焼とかね(笑)。油ギトギトなはずなのに、不思議と「美味しそうなニオイ」だと感じますよね(笑)。
安田
ええ(笑)。以前、人間が砂糖の中毒性に抗えないのは本能のせいだということもお聞きしましたが、油もやはり「本能」で欲しているんでしょうか。

久保
それもあると思います。油も体を動かすためのエネルギー源ですし、細胞膜を作るためにも必要なので。それに加えて食べ物の「美味しさ」を引き出すような効果もあるんですよね。
安田
ほう、それはどういうことでしょう?

久保
たとえば、パンには「ショートニング」と呼ばれる植物油脂が入っています。そのおかげで焼く時に水分が蒸発し過ぎないらしいんです。パンの中に水分が閉じ込められることでふっくらしたり、口当たりが良くなったり、耳の部分まで柔らかくなったりする。
安田
へぇ! つまり「油」が入ることで、人間が好んで食べるような食感や味に仕上がるわけですか。

久保
そういうことです。コンビニやスーパーで売られているものの裏書きを見てみてください。原材料の中に「ショートニング」と書かれている商品ばかりだと思いますよ。
安田
なるほど〜。ちなみにショートニングとはどういうものなんでしょう?

久保
簡単に言うと、植物系の油を固形にしたものですね。合成の油、人工の油とでも言いましょうか。
安田
うーん、体に良くなさそうですね…。そもそも植物系の油は、自然な状態では固形ではないということですか?

久保
はい。本来、植物油は常温では液体です。一方、ラードなど動物性の油は常温でも固形の状態。つまり分子構造が非常に安定した形になっているわけなんです。
安田
固体だと分子構造が安定するんですね。

久保
ええ。ただ、ラードのような動物性の油はコストが高いんですよ。だから、安く手に入る植物油を無理やり固形にしてしまった。それがショートニングやマーガリンなんです。
安田
へぇ。自然界には存在しないものだから、久保さんの理論だと「体には良くない」というわけですね。

久保
そうなります。そしてショートニングやマーガリンに含まれているのが「トランス脂肪酸」。
安田
ああ、トランス脂肪酸は体に悪いって聞いたことがありますよ。

久保
そうなんです。ちょっと専門的な話になりますが、そもそも脂肪酸の1つである不飽和脂肪酸には「シス型」と「トランス型」の2種類があって。「シス型」は炭素の周りに水素がくっついている状態なんですが、「トランス型」は炭素と水素が互い違いにくっついているんですね。
安田
ふむふむ。

久保
シス型のように炭素と水素が全てバランスよくくっついている「安定した分子構造」だと、固体になる。で、水素が一部欠けていたりすると「不安定な分子構造」になり、それは液体になるんです。
安田
なるほど。それはどちらも自然界で起こり得る状態だと。

久保
仰る通りです。一方の「トランス型」は炭素と水素が互い違いにくっついている分、固体ほどの安定性はないものの、ある程度のバランスが取れるわけです。
安田
液体と固体のいいとこ取りみたいな感じですね。

久保
そうですそうです。その独特な柔らかさを技術的に調整することで、ショートニングになったりマーガリンになったりする。つまりそういったある種「食品の技術」によって作られたのがトランス脂肪酸なわけですが、見方によっては「不自然な状態」だとも言えるわけで。
安田
なるほど。そう言えばトランス脂肪酸って、海外では厳しく規制されていると聞いたことがあります。確かアメリカではマーガリンを食べられない州もありませんでしたっけ?

久保
カリフォルニア州ですね。あとはニューヨーク市でも禁止されていたはず。他にもヨーロッパや韓国など、「トランス脂肪酸が含まれていることを消費者に知らせなくてはいけない」という明確なルールを設けている国も少なくありません。
安田
そうなんですね。ちなみに日本は……

久保
実は日本だけは何の規制もなく使われているんですよ。
安田
やっぱりそうでしたか。というのも、私も自分の子どもにマーガリンやショートニングの入っていないお菓子を食べさせたいのに、全然見つけられないんですよ。もうこれは必須の添加物みたいなものなのでしょうか。

久保
そうですね。先ほども言いましたが、やはりもともとは「美味しさ」を感じられるように作られたものですし、特にショートニングはサクサクした食感を出せるので、お菓子やスイーツなどとの相性も非常にいいので。
安田
なるほどなぁ。

久保
そう言えば昔、某ハンバーガーチェーンのフライドポテトは、ショートニングで揚げていたんですよ。トランス脂肪酸は分子構造が安定しているから、冷めてもシナシナにならずにカラッとしたままだから、美味しさが持続するんです。
安田
なるほど、食べても美味しいし、見た目も良いと。ただその裏には、トランス脂肪酸というカラクリが隠されていたんですね。知らなかったなぁ。

久保
ちなみに最近では砂糖も「果糖ぶどう糖液糖」という、いわば「人工糖」を使っている食品が増えているんですよ。そのほうが安いので。
安田
そうなんですか。ということは我々は「人工油」と「人工糖」がふんだんに入れられた食べ物を「美味しい、美味しい」と言いながら食べているわけですか!

久保
そうなりますね。まあそれはある意味、企業の「コストダウンの努力の賜物」という見方もできるかもしれませんが(笑)。
安田
そうか…私たちはそういう「食ビジネスの裏側」のようなものを全く知らずに、せっせと体に悪いものを食べているのか…。今回はなかなかショックな話になってしまいましたね(笑)。

 


対談している二人

久保 光弘(くぼ みつひろ)
健康人生塾 塾長/ホリスティックニュートリション研究家

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仙台出身、神奈川大学卒。すかいらーくグループ藍屋入社後、ファンケルへ。約20年サプリメントの営業として勤務後、2013年独立し「健康人生塾」立ち上げ。食をテーマにした「健康人生アドバイザー」としての活動を開始。JHNA認定講師・JHNA認定ストレスニュートリショニスト。ら・べるびい予防医学研究所・ミネラル検査パートナー。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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