この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第59回 田舎の空き家は、周りの景色も「自分の家」になる
第59回 田舎の空き家は、周りの景色も「自分の家」になる
以前お話しましたが、私が今対談をさせていただいている方の中に「美濃加茂の造園会社」の方がいらっしゃるんですよ。
中島さんでしたっけ。あの後、僕も対談記事をいくつか読ませていただきましたけど、とても素敵なお庭を作られていらっしゃいますよね。
そうなんですよ。で、その中島さんに鈴木さんのことをお伝えしたんです。「『相続不動産テラス』という事業で空き家解消に取り組んでいる方がいる。だから美濃加茂にいい空き家があれば、お庭だけ「リガーデン」することができますか?」って。
ほう。中島さんはなんて?
できますって。しかも、空き家って新築とは違ってある程度の材料が既に揃っているから、リガーデンの費用も安くすむらしいです。
へぇ。ちなみにどれくらいの相場なんでしょうか。
5~60坪くらいの庭でも、100万円あればかなりキレイなリガーデンができるそうです。
そうなんですか! それはすごいですね。
ですよね? よく空き家を少し高く売る方法の1つに「リフォーム済み」物件というのがあるじゃないですか。それと同じように「リガーデン済み」で100万円くらい上乗せして売るのはどうかなと。
なるほどなるほど。確かに中古物件を買う人って、建物のリフォームについては考えていても、庭のことまでは考えが及ばないかもしれない。
まさにそうなんです。でもお庭を手入れすると、建物も相当カッコよく見えるようになるらしいんですね。結果「リガーデンしてあること」が、その空き家の売りになるんじゃないかなと。
空き家販売の新たな戦略、というわけですね。いやぁ~その視点はなかったなぁ。庭屋さんだからこそ思いつく発想、という感じです。
中島さん曰く、日本のハウスメーカーさんって庭に対する意識があまり高くないらしくて。実際、建物にできる限りのお金を使わせるから、外構は残ったお金で最低限の提案しかできないんですって。
ああ…。庭なんて、砂利でも敷いて駐車場にでもしておけばいいでしょ、ってところですか(笑)。
そうそう(笑)。だけど実際のところ、家の中から見える景色が貧相だと嫌じゃないですか。だから中島さんのところには、メーカー側の提案を断って庭造りだけを依頼してくるお客さんも少なくないらしいです。
へぇ、そうなんですね。
で、お庭が素敵になると、建物だけでなく庭全体もひっくるめて「自分の家」という愛着がわくんだそうですよ。
なるほどなるほど。ちなみに庭造りってどういう感じでするんですか?
中島さんの庭づくりで特徴的なのは、敷地内だけじゃなく敷地外の景色まで考慮されているところです。例えば「山の間に夕日が沈んでいくのが見えるところ」には木を植えず、「近所のお店の看板が丸見えなところ」には木を植えて看板を隠す、みたいな配慮がされています。
へぇ〜、そこまで考えてくれるんですか。なかなか素人じゃ気づけない部分でしょうし、ハウスメーカーさんもわざわざ提案してくれないでしょうね(笑)。
そうなんですよ。よく鈴木さんは「田舎の空き家なんて売れない」って仰いますけど(笑)、「田舎の景色」をうまく借景した庭造りをすれば、空き家自体にものすごい付加価値が付くと思いますよ!
なるほど。それで言うと、ここ最近「こんな物件売れないだろう」というような山奥の物件が、カフェなんかにリノベーションされていることがちょこちょこあって。
あ、やっぱりそうなんですね。
僕らにとっては「こんな山しか見えないところで何するの?」って感じですけど(笑)。でもそれが安田さんの仰る「景色に価値がある」ということなんでしょうね。
そうですよ、すごく羨ましいです(笑)。鈴木さんにとっては「何でもない山」かもしれませんが、都心の人にとっては価値のある景色なんですよ(笑)。
笑。つまり中島さん風に言えば、そこから見える景色も含めてカフェなんだ、ということなんですね。
そうそう。だから、完全な山奥とまではいかないにしても、田舎の空き家をリガーデンした上で売り出すことで、価格は上げられると思うんです。
そうですね。実際にリガーデン済みの物件を見せることができたら、その価値も伝わりやすそうです。
まさにそういうことで。あと、これも中島さんからお聞きした話なんですが、先日「6軒分のお庭を街並みごと」作られたらしくて。1軒分だと狭い庭でも、隣近所と「共通の庭」にすることでいろんなアレンジができて素敵な空間にできるんですって。
へぇ、それは面白いなぁ。
で、私は考えたんです。田舎だと100坪とか200坪の畑がついてくるような空き家もありますよね? 私の大好きな納屋付き・畑付き250坪200万円の物件のような(笑)。でもそういう物件って、1人で畑を管理するのは難しいじゃないですか。
そうですね、高齢の方であればなおさら大変だと思います。
だからそれを例えば「3人でシェアできます」って売れば、トータルでもっと高く売れるんじゃないかなと。
ほう。それは土地を3つに分けて、3組に売るということですか?
そうです。でもきっちり3区画に分けるんじゃなくて「共有スペース」も作るんです。みんなでシェアする庭スペース、みたいに。で、そこを専門家に魅力的にリガーデンしてもらうんです。
面白い! というか以前の「空き家に名前をつける」の話に引き続き、安田さんって本当にいろいろ思いつきますね。すごいです(笑)。
ありがとうございます(笑)。鈴木さんと対談している影響なのか、最近の私はなにかにつけて「このアイディアは空き家販売につながらないかな?」ってことばかり考えちゃうんですよね(笑)。
そうだったんですね(笑)。でも今回の「周囲の景色と一体化したリガーデン済みの物件」というアイディアもすごく興味深かったので、いつか実現させてみたいなぁ。
ぜひぜひ! 私が対談させていただいている方の中に、たまたま美濃加茂でご活躍の方がお2人いたのもなにかの縁でしょうから、一緒に新しいことを始められてみるのもいいかもしれないですね!
対談している二人
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。