第46回 変化に不可欠な「思い切り」と「割り切り」

この対談について

“生粋の商売人”倉橋純一。全国18店舗展開中の遊べるリユースショップ『万代』を始め、農機具販売事業『農家さんの味方』、オークション事業『杜の都オークション』など、次々に新しいビジネスを考え出す倉橋さんの“売り方”を探ります。

第46回 変化に不可欠な「思い切り」と「割り切り」

安田

前回は、メルカリという競合の登場によって苦労をされた話をお聞きしました。そして試行錯誤の結果、今の万代さんの「遊べるリユースショップ」というコンセプトに辿り着いたと。


倉橋

ええ、そうでしたね。

安田

とはいえ、ビジネスを変えるといっても、100%全部変えればいいというわけでもないと思うんです。変える中にも変えない部分、もっと言えば「変えてはいけない部分」があるんじゃないかと。


倉橋
ええ、よくわかります。うちの場合は、「店舗ビジネス」であることは変えませんでしたね。メルカリなど完全オンラインのサービスに脅かされつつも、そこからは外れないよう意識してました。
安田

なるほど。実際「万代さん=店舗」というイメージは非常に強いです。とはいえ、オンラインやデジタルが主流になっていく中で、「もう店舗じゃないのかも…」と弱気になったりはしなかったんですか。


倉橋
そこはブレなかったですね。もちろんビジネス的な観点で考えればいろいろあるんですけど、結局僕を支えてくれたのは「店舗ビジネスって楽しい」ということで(笑)。
安田
なるほど。理屈抜きに好きなんだと(笑)。

倉橋

そうなんです(笑)。お客さんにお店に来てもらって、満足してもらえるようなコンテンツを考えて、それを実行して、というプロセスが楽しくて仕方ない。

安田

ははぁ。つまり、「その事業を好きかどうか」が判断軸になったわけですね。


倉橋

そうですね。単純な話ですけど、好きじゃないと楽しくないじゃないですか。逆に言えば、嫌いなことをやってまで稼ぎたいとは思わないですから。

安田
なるほどなぁ。とはいえ、好きだから必ず成功するというものでもないでしょう?「リユース×アミューズメント」という業態で成功するまでにも、なにか挫折したり手放してきたものもあるんじゃないですか?

倉橋

それでいうと、ターゲット層はガラッと変えましたね。以前はM-1層という20~30代前半の男性向けのショップだったんです。でも「アミューズメント性」を取り入れるために、ファミリー層にターゲットを変更しました。

安田

それはすごい変化ですね。以前のお客さんからすると、「俺たちの店がなくなった」という感覚になってしまう気がしますけど。


倉橋
ええ、そこは断腸の思いでしたね。とはいえ中途半端にしてしまったら失敗することはわかっていたので、「もう進むしかない」と覚悟を決めて。
安田
確かに、ターゲットの選定はビジネスで一番大事な部分ですもんね。今までのお客さんも残しながら、別のターゲットも追加して……というやり方では成功しなかったかもしれない。

倉橋
そうですね。とにかく振り切ることにして、商品構成はもちろん、営業時間や店舗の外観、店内の照明、そして広告のイメージも変えました。あとは接客方法も変えましたね。今まではお客様に声かけしないという方針だったんですが、積極的に声かけするようになったんです。
安田

ははぁ、なるほど。新しいビジネスを成功させるため、それだけ多くのものを手放してきたわけですね。逆に手放さずに持ち続けたものもあったりしました?


倉橋
「店舗」もそうですが、「リユース」という軸を変える気はなかったですね。それまでの経験で成功法則がわかっていたこともありますし、リユース=新品で買うより安いというイメージは、ファミリー層にとっても大きなアドバンテージになるので。
安田

なるほど。店舗ビジネス、そしてリユースという軸はブラさず、ファミリー向けの大改革を進めたと。店内の雰囲気もガラッと変わったでしょうね。

倉橋
ええ、そもそもの商品構成がかなり変わりましたから。ファミリー向けのビジネスって、結局奥様に気に入っていただけるかが重要なんですよね。だから奥様が嫌がりそうなアダルトテイストな商品は完全に排除して。
安田

ははぁ、ある意味今までの主力商品だったものを捨てたわけですね。


倉橋
そうなんです。代わりに化粧品などの美容系の商品、あるいはお子さんが欲しがりそうなフィギュアを入れたりして。食品に注力し始めたのもその頃からですね。
安田

なるほどなぁ。徹底して「奥さんが反対するようなものは減らした」わけですね。

倉橋

減らしましたね〜。モデルガンのような趣味の商品も少なくしました。以前は「プロショップか」と言われるくらいマニアックに揃えていたんですけど(笑)。

安田

ふーむ。モデルガンなどは実物を見たいというニーズがありそうなものですが、そこには注力しないんですか?


倉橋
そこまで手を広げてしまうと、どっちつかずになってしまうので。そこはプロショップにお任せすることにしてます。
安田

ははぁ、なるほど。そこに力を入れようとすると中途半端になってしまうと。決めた後の思い切りが大事だということですね。


対談している二人

倉橋 純一(くらはし じゅんいち)
株式会社万代 代表

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株式会社万代 代表|25歳に起業→北海道・東北エリア中心に20店舗 地域密着型で展開中|日本のサブカルチャーを世界に届けるため取り組み中|Reuse × Amusement リユースとアミューズの融合が強み|変わり続ける売り場やサービスを日々改善中|「私たちの仕事、それはお客様働く人に感動を創ること」をモットーに活動中

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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