大阪・兵庫を中心に展開する、高価買取・激安販売がモットーの『電材買取センター』。創業者である株式会社フジデン代表・藤村泰宏さんの経営に対する想いや人生観に安田佳生が迫ります。
第6回 赤字なのに、新卒採用と店舗拡大をした理由
前回の対談では、半ば苦肉の策として『電材買取センター』を始められたいう話をお聞きしました。ちなみに1店舗目はどこに出店したんですか?
大阪の枚方市ですね。もともと回転寿司のチェーン店が入っていた場所の居抜き物件で。
回転寿司ですか! 全然業態が違うから、改装工事とか大変だったんじゃないですか?
いえ、全部撤去されて何も残っていない状態だったので、問題なかったですね。元が回転寿司屋さんだったなんて全然わからなかったです(笑)。
なるほど。つまり『電材買取センター』の看板を掲げるだけで良かったわけですね(笑)。ちなみに当時、「電材のリユース業」をやっているようなお店って他になかったんですか?
なかったですね。最近でこそ「リユース」という考え方も浸透してきていますが、当時は中古のものを売ったり買ったり…というのはまだまだメジャーじゃない時代で。
ふーむ、確かに昔って「中古」に少しネガティブな印象ありましたもんね。でもそうだとすると、お客さんの入りは…?
いや〜、全然ダメでしたね(笑)。1日5人くらいしか来店してくれないし、しかもそのうち半分は間違って入ってきてしまった人だったりして(笑)。
間違って入ってきた? それは家電量販店みたいなものと、ってことですか?
そうですそうです。「電材」って書いてあるもんだから家電と勘違いされることが多くて。中古のテレビとか汚れた電子レンジとか持ってきて「これ買い取ってくれや!」なんてことがしょっちゅうでしたね。「いやすんません、うちは電材専門店で…」なんて謝ったりして。
ははぁ、それは大変でしたね。でも確かに素人からすると、「電材買取」と言われてもいったい何屋さんなのかさっぱりです(笑)。そもそもメインの顧客層はどのあたりを想定されていたんです?
電気工事関係の業者さんですね。エアコンを取り付ける時に使う配管とか電線、コンセントなどを取り扱う店なので。
なるほどなるほど。業者さんから不要になった電材を買い取り、別の業者さんにリユース品として売る、ということですね。…うーん、仕組みわかるんですけど、それで商売が成り立つイメージがわかないな(笑)。でも藤村さんとしては「これはイケるぞ」と思ったわけですよね?
いや、うーん、実をいうとあんまり思ってなかったです(笑)。だって1000円で仕入れた商品を800円で売ったりしていたんですから。ああ、こりゃ儲かるわけないわと。
え、それ損しちゃってるじゃないですか(笑)。なんでそんな意味不明な値付けを?
前回コッソリお伝えしましたけど、僕はこの事業、「さっさと2000万円を使い切って閉めよう」と思っていたんですよ。だから売るほど損をしていくビジネスモデルにして(笑)。
ああ、そうでしたね! 社員に「クビ」って言えないがために作ったお店で、儲ける必要もなかったと(笑)。…あれ? でも確か新卒採用もされてませんでしたっけ?
そうなんですよ(笑)。フジデンの幹部に、「社長!これからは人材育成にも力を入れていかないといけないんじゃないですか?」なんて言われて。
でも、全然儲かってなかったわけでしょう? いやむしろ近い将来閉めようと思っているわけで、新卒なんて雇っちゃだめじゃないですか(笑)。
そうなんですけど、でも彼の言うことにも一理あるなぁと思っちゃって(笑)。じゃあまぁ、いっちょやってみるかと。
藤村さん、相変わらず思い切りがいいですね(笑)。ちなみに何の職種で募集をかけたんですか? 総合職ですか?
いえいえ、『電材買取センター』の店舗スタッフです。
え、いつ閉めるかわからない店舗で新卒を受け入れようとしたんですか?
そうですそうです。とは言え、絶対誰も来ないだろうと思っていたんですよね(笑)。ところがふたを開けてみたら意外としっかり応募がありまして。結局、2年間高卒採用をやって、各6名ずつ採用しましたよ。
すごいですね! でも当時はお店を開けているだけでどんどん赤字が膨らむし、そもそも2000万円を使い切ったらお店も閉めて、社員を解雇するつもりだったわけですよね? その状態で12名の新卒採用…ちょっと理解が追いつかないです(笑)。
普通に考えたらおかしいですよねぇ(笑)。さらに言うと、お店も増やしたんですよ、2店舗。だって店舗スタッフが増えたから、働ける場所がないと困るじゃないですか。
ははぁ…ますます赤字が膨らんでいきますよ、それ(笑)。ちなみにその時点で当初予定していた2000万円はまだ残っていたんですか?
いや、とっくにすっからかんでした(笑)。
うわぁ(笑)。それでさすがにこれ以上増やすわけにはいかんと、高卒採用は2年で終わりにしたということですね。
いや、やっぱり高校を出たばかりの子たちはまだ若いし、接客業はちょっと難しいなと思ったんですよね。なのでそこから大卒採用にシフトして、採用してました。
なんと!(笑)。でもちょっと待ってください。人が増えたってことはもしかして店舗も…。
さらに2店舗増やしました(笑)。
…藤村さん、ちょっと私、怖くなってきました(笑)。この先どんな話が続くんでしょう。続きは次回、お楽しみに。
対談している二人
藤村 泰宏(ふじむら やすひろ)
株式会社フジデンホールディングス 代表取締役
1966(昭和41)年、東京都生まれ。高校卒業後、友禅職人で経験を積み、1993(平成5)年に京都府八幡市にて「藤村電機設備」を個人創業。1999(平成11)年に株式会社へ組織変更し、社名も「株式会社フジデン」に変更。代表取締役に就任し、現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。