第234回 同じお悩み、異なる対応

 このコラムについて 

「担当者は売り上げや組織の変革より、社内での自分の評価を最も気にしている」「夜の世界では、配慮と遠慮の絶妙なバランスが必要」「本音でぶつかる義理と人情の営業スタイルだけでは絶対に通用しない」
設立5年にして大手企業向け研修を多数手がけるたかまり株式会社。中小企業出身者をはじめフリーランスのネットワークで構成される同社は、いかにして大手のフトコロに飛び込み、ココロをつかんでいったのか。代表の高松秀樹が、大手企業とつきあう作法を具体的なエピソードを通して伝授します。

本日のお作法/同じお悩み、異なる対応

 

「お客様窓口センター」で働く方々をインタビューさせていただく機会が続けてありました。

大手A社さん:

「窓口センターとは言いますが、、基本的には、クレーム対応がほとんどですよ。。」

「しかも、勘違いでのお問い合わせ、というのが大多数、、」

「いくら丁寧に接しても、お客様の心理状態が落ち着いていないので、嫌味や暴言を伝えられることもあって、、」

「なかなかにしんどい職場なんです、、」

大手B社さん:

「ウチもお客さんの『勘違いによるクレーム』が多くて困っていたんですよ」

「例えば、商品自体の電源が入っていないのに『動かない!!』というクレームです」

「こういうの、意外と多いんですよ」

「で、丁寧に『商品の電源は入っていらっしゃいますか?』『電源ランプがあるのですが、そちらは点灯されていますでしょうか?』なんて聞いていたのですが、、」

「ゆっくりとしたスピードで丁寧にお伺いすればするほど、『馬鹿にしているのか!』と怒り出すか、『無言でガチャ切り』する方がほとんどだったんですよ、、」

「でも、クレーム電話してきたお客さんが『申し訳なかった、、あなたが聞いてくれて助かりました、、』『ありがとうございます!』なんていう対応を引き出すメンバーもいて」

「特に顧客評価の高いMさん。その人の対応を法則に変えたところ、クレームのほとんどがすぐに解消され、これまでの対応時間を『9割以上削減』できたんですよ」

どうなさったのかな?と問いますと、

「真っ先に『この度はご迷惑をおかけして申し訳ございません』と伝え」

「その後、『一度、商品の電源を切って、もう一度入れ直していただけますか?』というアナウンスに切り替えただけなんですよ」

確かに、この伝え方をすれば、顧客側が商品自体のスイッチを入れていなかった場合には、「申し訳ない。こちらの勘違いでした」で終わります。

とてもうまい対応ですよね。

法則に変えたということが素晴らしいのですが、ポイントは以下の2点とのこと。

・顧客の感情を理解する

・顧客を敗者にしない

「ただそれだけですよ」とMさんはおっしゃいます。

「お客さん側には『問題を解決したい』という思いだけでなく『焦りや苛立ちを分かってほしい』という気持ちが存在しているじゃないですか」

「そんな状況で真っ先に『そもそも電源入っています?』と聞けば、入っていなかった場合、お客さんに恥をかかせてしまいますし、『あなた自身の不注意でしょ?』『そんなことでイライラしているの?』と感じられてもおかしくないですし、お客さんを敗者、悪者にしちゃいますよね?」

だから、

「一度、商品の電源を切って、もう一度入れ直していただけますか?」のアナウンスをすることを取り入れたのだそうです。

ちなみに、A社さんでは「職場のモチベーションアップや顧客クレーム対応で良い研修などありますか?」という人事部門からの相談での現場インタビュー。

B社さんでは、「生産性向上、イノベーション創出事例」としてのインタビューでのひとコマでありました。

研修をご要望いただいたA社さんには、B社のMさんを紹介し、事例共有いただくことで、人事部門からも喜んでいただきました。

工夫や改善のヒントは、そこかしこに存在しているのでしょうね!

 

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高松 秀樹(たかまつ ひでき)

たかまり株式会社 代表取締役
株式会社BFI 取締役委託副社長

1973年生まれ。川崎育ち。
1997年より、小さな会社にて中小・ベンチャー企業様の採用・育成支援事業に従事。
2002年よりスポーツバー、スイーツショップを営むも5年で終える。。
2007年以降、大手の作法を嗜み、業界・規模を問わず人材育成、組織開発、教育研修事業に携わり、多くの企業や団体、研修講師のサポートに勤しむ。

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