この記事について
自分の絵を描いてもらう。そう聞くと肖像画しか思い浮かびませんよね。門間由佳は肖像画ではない“私の絵”を描いてくれる人。人はひとりひとり違います。違った長所があり、違った短所があり、違うテーマをもって生きています。でも人は自分のことがよく分かりません。だからせっかくの長所を活かせない。同じ失敗ばかり繰り返してしまう。いつの間にか目的からズレていってしまう。そんな時、私が立ち返る場所。私が私に向き合える時間。それが門間由佳の描く“私の絵”なのです。一体どうやってストーリーを掘り起こすのか。どのようにして絵を紡いでいくのか。そのプロセスをこのコンテンツで紹介していきます。
『【S氏に捧ぐ】|探究心で切り取った絵がS氏の手にわたるまで』
多くの画家は、人手に渡さない【マイコレクション】を持っています。
独自の表現に突き進んだ画家マティスは、迷った時は、若いときの自分の絵を見直せ、そこに、当初の志が刻まれているから道標になる、と言っているように、節目となる作品を、手元に置いて自分の道標にしている作家はたくさんいます。
私にも、【マイコレクション】があります。
でも、大切に手元に置いている一枚を、約20年後に「この人の手に渡るなら喜んで渡したい」と手放すことになります。
美大を出てまもない頃、実験的な絵を1メートルくらいのキャンバスにペンキで描きました。慣れない画材で、大画面を描くにはまだまだ技術が未熟なのもあり、気にいる作品になりませんでした。でも、部分的に光るものがあり、その部分だけ、15✖️20センチくらいに切り取りました。未熟な自分が見出した、キラッと光る部分。
それを、【マイコレクション】として、取っておくことにしました。未熟でもきらりと光る部分は、後々、自分の指針になってくれるからです。
気に入らなかった絵を小さく切り取ってできた作品は、手前に絵の具が滴り、水平線に太陽が浮かぶような、半抽象な不思議な世界になりました。
江戸の浮世絵師として有名な歌川広重の最晩年の作品「名所江戸百景」は、江戸のさまざまな場所を題材として制作された、技術的にも優れ人気のあった揃い物として知られています。また、彫り、摺りに当時の浮世絵の技術の粋を凝らしたものとして知られています。
江戸の風景を様々な視点や対象でとらえた奇抜なものが多く、それまでの広重の作品と一線を画しています。
例えば、地平線が画面の上、中、下とあり、視点が多彩で、まるで現代アートに通じるような、浮世絵の枠にとどまらない広重の強い探究心を感じます。
海と空が題材の場合、地平線が低い位置にあるものは、空が広く視線は上向きとなります。空の部分に特別の表情を持たせない限り、画面のバランスはとりにくいものですが、あえて空を広くとるものは、空の部分に強い理由があるものです。
切り取ってできた私の小さな作品も、横に入った線を水平線と見立てると、水平線が下の方にあり、ぐんぐんと伸びやかに広がる空が、力強く沸き立つようなエネルギーを感じさせました。
オーダーメイド絵画を描き始めてまもない頃、イベント展示にこの絵を飾りました。展示空間にピッタリ合う気がして、自分でそれが見てみたかったのです。
実際、素敵に飾ることができて、満足しました。その時、絵を見に来たSさんが、「この絵は売っている?」と聞きました。「売り物じゃないけれど‥‥」Sさんは、私がまだオーダーメイド絵画を描く前に、知り合った人。絵をどうやってほしい人に届けたらいいかと試行錯誤して、初めて飛び込んだ経営塾で一緒になった縁。画廊でしか絵を売ったことがないのに、画廊以外の場所で絵を売ろうとしている無謀な画家時代の私を知っている人です。
持っているものは、「絵を通じて人が成長する貢献がしたい」志しかない時の私‥‥をよく知っている友人でもあります。
「Sさん、気に入ったの?」と聞くと「なんかカッコいいな、と思って」とニコニコと笑いました。「勉強会以来、本当に、画廊を飛び出して活動しているでしょ?いつの間にか、オーダー絵画も描くようになって、頑張っているな、と思ってみてきた。今の自分は、オーダー絵画を描いてもらうのはぴんとこないんだけど、何か応援できないかな、と考えていたんだ。そこに、この絵と出会ったから、買いたいと思ってね」
「ありがとう。
売り物じゃないけど‥‥、【マイコレクション】だけど、Sさんにならもっていてほしいな。
未熟な時の作品だけど、きらりと光るものがあると思って、大切に手元に置いていたのを、Sさんが目に留めてくれたのが嬉しいから」
「おやおや‥‥、【マイコレクション】なの?それを分けてくれるの?こちらこそすごく嬉しいなぁ。貴重なものをありがとう。ちゃんと売ってね。大切にするから」Sさんは、とっても喜びました。
こうして、若い私が描いた小さな【マイコレクション】の一枚が、Sさんのところに旅立って行きました。私にとっては、このエピソード自体が、貴重な喜びある指針となって人生を照らしてくれています。
それから9年ほど経ってから、Sさんは私に絵をオーダーすることになるのですが、それはまた別の物語です。
著者の自己紹介
ビジョンクリエイター/画家の門間由佳です。
私にはたまたま経営者のお客さんが多くいらっしゃいます。大好きな絵を仕事にしようと思ったら、自然にそうなりました。
今、画廊を通さないで直接お客様と出会い、つながるスタイルで【深層ビジョナリープログラム】というオーダー絵画を届けています。
そして絵を見続けたお客様から「収益が増えた」「支店を出せた」「事業の多角化に成功した」「夫婦仲が良くなった」「ずっと伝えられなかった気持ちを家族に伝えられた」「存在意義を噛み締められた」など声をいただいています。
人はテーマを意識することで強みをより生かせるようになります。でも多くの人は自分のテーマに気がついていません。ふと気づいても、すぐに忘れてしまいます。
人生
の節目には様々なテーマが訪れます。
経営に迷った時、ネガティブになりそうな時、新たなステージに向かう時などは、自分のテーマを意識することが大切です。
また、社会人として旅立つ我が子や、やがて大人になって壁にぶつかる孫に、想いと愛情を伝えると、その後の人生の指針となるでしょう。引退した父や母の今までを振り返ることは、ファミリーヒストリーの貴重な機会となります。そして、最も身近な夫や妻へずっと伝えられなかった感謝を伝えることは、絆を強めます。そしてまた、亡くなった親兄弟を、残された家族や友人と偲び語らうことでみなの気持ちが再生されます。
こういった人生の起点となる重要なテーマほど、大切に心の中にしまいこまれてカタチにしづらいものです。
でも、絵にしてあげることで立ち返る場所を手に入れることができます。