第35回 フリーランスは「マイ商品」を作るところから

この対談について

人は何のために働くのか。仕事を通じてどんな満足を求めるのか。時代の流れとともに変化する働き方、そして経営手法。その中で「従業員満足度」に着目し様々な活動を続ける従業員満足度研究所株式会社 代表の藤原 清道(ふじわら・せいどう)さんに、従業員満足度を上げるためのノウハウをお聞きします。

第35回 フリーランスは「マイ商品」を作るところから

安田

フリーランスの人には「自分の商品を持つ」ことを勧めてまして。「こういう仕事できませんか?」と言われて引き受ける仕事はどうしても報酬が安くなりがちなので。


藤原

依頼される時点でだいたいの価格が決まってますもんね。「この仕事をこのくらいの金額でやってもらいたい」というイメージができあがっているというか。

安田

そうなんです。一方で、「私はこういうことができて、あなたのこういう悩みを解決できますよ」と提案する場合、報酬は自分で決められる。仕事って「誰かの悩みを解決すること」だと思うんですけど、その解決方法という「答え」を持っているのが相手か自分かで報酬が変わるわけです。


藤原

確かにそうですね。要は価格をコントロールするのが自分なのか相手なのか、ということですね。

安田

そうそう。そういうことを考えていて出した結論が、「答えが決まっていない仕事の報酬は高い」というもので。


藤原

ははぁ、なるほど。確かに明確な答えのあることは今後全部AIがやってくれるようになりそうですし、自分だけの答えを見つけられる人が強いんでしょうね。「この人に頼んだらどんな結果が出てくるんだろう?」という期待感を持ってもらえるかどうかというか。

安田

仰るとおりですね。例えば「部屋が暑いからエアコンを買おう」と調べる人は、だいたい値段で決める。でもそこで「エアコンなんか買わなくても、めちゃくちゃ涼しくなる方法を知ってますよ」と言えたら、価格も自由に設定できるわけです。


藤原

ああ、それは多少高くてもお願いしてしまいそうです(笑)。

安田

ですよね(笑)。そういった自分だけの視点を大事に、オリジナルな商品を作っていけると強いなと。


藤原

オリジナルな、というところが重要ですよね。商品を作るといっても、「何でもできます!」とか「デザイン全般できます!」とかだと弱いので。どこにでもある商品だと、価格も高く設定しにくいでしょうし。

安田

そうですね。あとは「コピーライターです」とかだけでもダメで、「お悩みを解決する」という視点で商品を作ることが重要ですね。


藤原

同感です。安田さんの先ほどの結論のように、パッケージ化された商品よりも、答えのない仕事の方が高額になっていく気がしますね。例えば注文住宅とかでもパッケージ化されてパーツを選ぶだけのようなものだとどんどん低価格になっていくでしょうし。

安田

それはそうですね。とはいえある程度のパッケージ化は必要だと思います。完全にフルオーダーにしてしまうと、それはそれで割に合わないというか。


藤原

ああ、なるほど。価格は高くできるかもしれないけど、それだけ工数や経費もかさんでしまいますもんね。

安田

そうなんですよ。しかもそこまでの商品となると、発注する側にもそれなりに力量が必要ですし、任せるにも信頼感がないといけない。結果、例えば注文住宅なら著名な建築家とか有名デザイナーに依頼が集中してしまうんです。


藤原

ふーむ、なるほど。いくらセンスがよくても、名もないぽっと出のデザイナーにはなかなか依頼しませんもんね。どんな家を作ってもらえるのかイメージができないですし。

安田

ええ。だからブランディングなんかについても、佐藤可士和さんみたいな実績のある人のところに仕事が集まってしまう。


藤原

確かにそうですね。「答えのない仕事」と一口に言っても、なかなか難しいんですね。

安田

そうですね。「ある程度パッケージ化した方がいい」というのもそういうことで。ただパッケージ化するといっても、既に世の中にあるパッケージを使うのではなく、「私が作ったパッケージはこれです」という「マイパッケージ」を作ればいいんだと思います。


藤原

ははぁ、つまりそれこそが自分の商品、すなわち「マイ商品」であると。

安田

仰る通りです。パッケージ化された商品ではあるけど、一般には出回っていない、あくまでオリジナルの商品です。


藤原

なるほどなるほど。皆が自分の商品を開発して売っていければ、おもしろい商品がどんどん出てきそうですよね。

安田

そうなんです。しかもね、何から何まで自分でやる必要はないんですよ。例えば自分が住宅のデザイナーだったとして、お庭を作るスペシャリストがいたら、そういう人と組んで「新しい家のスタイル」を作って提案することもできる。


藤原

おお〜いいですね。販売も絶対に自分がやった方がいいでしょうね。そこは手放してはいけない気がします。フリーランスって販売が苦手な方が多い印象ですけど。

安田

実際多いですね。「販売=相手が欲しがっていないものを売りつける」と捉えてしまってるんだと思います。でも仰るとおり、「商品開発」と「顧客への直接販売」はセットで考えるべきで。


藤原

そうですよね。多くの人が「販売の定義」を間違えてしまっているのかもしれない。

安田

相手から「お願いだから売ってください」と言われることが販売ですからね。でも待っているだけではそんな状況にはならない。


藤原

なるほどなぁ。そこが難しくておもしろいポイントですよね。

 


対談している二人

藤原 清道(ふじわら せいどう)
従業員満足度研究所株式会社 代表

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1973年京都府生まれ。旅行会社、ベンチャー企業を経て24歳で起業。2007年、自社のクレド経営を個人版にアレンジした「マイクレド」を開発、講演活動などを開始。2013年、「従業員満足度研究所」設立。「従業員満足度実践塾」や会員制メールマガジン等のサービスを展開し、企業のES(従業員満足度)向上支援を行っている。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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